「居酒屋のつもりでやってます」と、オーナーシェフの渋谷聡さん。フレンチ主体のカフェを経て、バル激戦区福島を代表するイタリアンバル「ポルチーニ」へ。立ち上げから7年半勤務した経験を生かして、2011年7月に独立開業した。オープンして1年半。福島でも有数の、予約の取れない繁盛店となっている。
メニューの核は、店名どおりのイワシ料理と国産ワイン、日本酒。開業にあたって何か軸になるものを、と探し出した素材たちだ。生産者に会いに行き、「自分が納得したものを出したい。だったら国産しかない」と考えた。ワイナリーや酒蔵にも足を運び「、これなら」と思える酒を選択。それらの酒に合わせる食材は、調理の幅が広く、身近で、年中手に入るイワシと決めた。
前職の頃から、ムール貝を見ては「酢味噌と合うだろうな」と思い、サザエは「ガーリックバターでエスカルゴのように焼けないか」などといつも考えていた。今はフレンチやイタリアンなどという料理の縛りを取り払って、醤油も味噌も使う。旨いイワシ料理になるなら「縛り」は不要。それが見せかけの創作料理に終わらないのは、ひとえに渋谷さんの実力と手間のかけ方による。
フードメニューはおよそ80種。毎朝市場に仕入れに出かけ、昼から仕込み、オープンキッチンで膨大な皿数をさばききる。わずか11坪の店舗で扱うには多すぎるメニューは、そのまま、この店にわざわざ足を運ぶ理由の数となっている。
「食べている人の反応が見たいから」とフルオープンキッチンに。接客はスタッフに任せ、あくまでも自身は料理人のスタンスを崩さない。
イワシ…2匹/ディル…少々/オリーブオイル、パン粉、バルサミコ酢、イタリアンパセリ、オレンジ…各適量
ファルス(作りやすい分量)
タマネギ…1個/ニンニク…1/2片/セミドライトマト…30個/ケイパー…小さじ3/ブラックオリーブ…85g/バゲット…180g/干しぶどう、松の実…各1つかみ/ 湯…100cc/塩…適量
早い日は12時から出勤し、大量の仕込みを行う。「これだけ働いてあかんかったら諦めつきます(笑)」と渋谷 聡さん。
長瀬広子=文 星野泰孝=撮影
本記事は雑誌料理王国2013年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2013年2月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。