シェフ自らゲストをもてなし、目の前で料理を披露して、会話で店の雰囲気を作りだす。カウンターというステージで、一人三役も四役もこなすシェフは、最高のエンタテイナーといえるだろう。
グランメゾンにはないライブ感、家に招かれたような親密感、ワクワク感とある種の緊張感。非日常と日常の垣根を巧みに飛び越えるシェフに、その秘密を聞いた。
ーなぜカウンターなのか?
福島は昔からよく飲みに来ていた町。人の空気感が合うというか、割烹みたいにお客さまを感じながら料理ができる町だと思って開業しました。だからコースでもかなり融通を利かせてますよ。深夜帯は2軒目使いの方も増えますし、量を減らしたり酒に合うものを即興で提案したり。ボトルワインを「これ、あちらにも一杯」って隣に勧めてくれる方がいるような、まぁ福島らしい酒場ですよね。
そんな気楽な店で旨いアテが出てきたら最高でしょ。「適当に」なんてオーダーも全然OK。好みを相談して、味の加減もしています。時代に逆行したスタイルなのは承知ですが、だからこそ廃れずに続けていられるんじゃないかな。いずれ移転をと考えているんですが、次も絶対カウンター中心ですね。
大阪市福島区福島6-9-17
☎06-6458-0199
● 12:00〜13:30、18:00〜24:00
昼・夜ともに要予約
●不定休
www.lucciola.net
ーなぜカウンターなのか?
以前は厨房に籠って料理をしていましたが、今は料理人もお客さんと接するべき時代。前店の「レストラン VITRA」でシェフズカウンターを設けたところ、テーブル席よりもカウンターを指定される方が結構いらっしゃいました。目の前に素材を積んでいるんですが、野菜の話になったらそのまま少し切って食べていただいたりと、個々に対応できるのがいいですね。
やはり特別感がある。それも皆さんそれぞれに合った、ちょっとしたおまけを提供できるのはカウンターの醍醐味だと思います。うちの基本的なテーマは"非日常"。ですからプラスチックのタッパーやラップなど、生活感のある道具は絶対にお客さまには見せません。盛り付け用の野菜もホーローのバットに並べて運びます。
京都市東山区祗園末吉町82-7
☎075-532-0701
●17:30〜要予約
●日、祝休
www.vitra.jp
ーなぜカウンターなのか?
よく独創的だと言われる構成要素の多い皿が10 皿も続くので、やりとりする回数が多いんです。でも信頼して説明を任せられるスタッフに巡り合うのは難しい。じゃあ自分で全部説明しよう、と思ったのがカウンターを選んだ理由。やりたい料理が決まっていたからカウンターになった、という順番ですね。それと温度変化が少ないまま提供できる距離なのもポイント。運んでいるうちに構成が崩れては台無しですから。
お客さま側からいえば、例えばカップルで会話に困ったとき、調理風景が見えれば間が持つというのも実は大きいと思います。あれ何かな、どうなるのかなって暇潰しになるし、共通の体験が生まれるでしょう。あ、もちろん僕との会話も楽
しんでもらいますよ(笑)。
京都市東山区新門前通花見小路東入ル
中之町245-1
☎075-533-8245
●12:00〜14:00LO、18:00〜21:00LO
●火休
www.gion-245.com
ーなぜカウンターなのか?
一番の理由は、お客さまの顔が見たいという思い。感想が欲しいというよりは、長年裏方に徹してきて、料理の味だけではなく所作も見ていただきたいと思うようになったんです。所作を意識することも修業のひとつでしたので。個室でも目の前に立ちたいという思いから、メインカウンターと別にカウンター個室も設けました。
空間作りで気をつけているのは、自然ではないもの、例えばステンレスなどの材質をお客さまの目に入れないこと。唯一蛇口が出ていますが、これは井戸水なのであえてお見せしています。カウンターの内部も手元が目隠しになっていて、器具や材料は一切お客さまの目に触れません。こうしてほどよい緊張感の中でお客さまと対峙していると、自分と毎日向き合えている感じがするんですよ。
京都市中京区堺町竹屋町通下ル西側
ヴェルドール御所1F
☎075-256-4460
●12:00〜、18:00〜(要予約)
●不定休
●24席
藤田アキ=取材、文
畑中勝如(祗園びとら、、祗園245、アカ)、三國賢一(木山)=撮影
本記事は雑誌料理王国第289号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第289号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。