「クラシックなフランス料理が好きなんです」
花澤龍さんは自身の夢を実現して、12年前に東京・目黒の五本木に、特別な気持ちになれる「近所のフランス料理店」ボンシュマンをオープンした。
とはいえ今、世の中は「軽さ」を求めているのかもしれない。しかしーー。「時代遅れなのかもしれませんが、守っていきたいものがあります」と花澤シェフは言う。
オープン以来、フランス料理の王道を守る星付きのシェフは、どんな牛肉が旨いと思っているのかーー。「大きな塊を大胆に炭で焼いて、塩、
コショウだけで食らいつく」。牛の「そんな食べ方に憧れる」と笑う。
シェフは、A5を「高級」とする和牛のランク付けにも、ブランド肉にも拘らない。以前は佐賀県の伊万里牛を使っていたが、今のお気に入りは北海道産の和牛。等級はA3だ。そのランプ肉を、ステーキにする。
「和牛ランプ肉のステーキ、にんにく風味のジュ」は、「シェフのおまかせコース」に組み込まれるひと皿だ。
仕入れ業者からは5~6キロの塊が届く。熟成はしない。「料理人によって、いろいろだと思いますが、旨い肉は、そのままで旨い」と言う。
150~160グラムがひと皿分だ。サシの入った脂身の多い和牛だと、「ディナーで食べるには重い」と感じる人もいるが、この赤身のランプ肉ならばその心配はない。
常温に戻したランプ肉は、塩、コショウをしてから焼く。中火から強火へと火を調整しながら、全ての面に焼き色をつけていく。そして10分ほど休ませる。これで「肉汁の旨味が落ち着く」のだ。
中がロゼ色のベリーレアに仕上がったステーキを休ませている間に、付け合せやソースを作る。
ソースにはニンニク風味を効かせる。ここでランプ肉のステーキをもう一度、温めるように焼く。この時に出る肉汁をソースに入れる。バター風味が効いた肉汁で、ソースのコクと深みが増し、ステーキの味をより引き立てるのだ。
付け合せのジャガイモのニョッキ、ニンジンのグラッセ、エシャロットのコンフィも素晴らしい。
とくに皮付きのまま、鴨の油でモンテしたエシャロットのコンフィは、絶品のステーキの"箸休め"になっている。野菜使いの達人と言われる花澤さんならではの付け合せだ。
この牛肉のひと皿でフレンチの本流を味わいたい。
ボンシュマン
BON CHEMIN
東京都目黒区五本木2-40-5 Beat101
03-3791-3900
● 11:30~14:00LO、 18:00~21:30LO
● 水休
● 22席
www.bonchemin.com
長瀬広子=取材、文 新山貴一=撮影