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知られざるサメの世界。「ふかひれ」の真実


こんにちは。羊齧協会の菊池です。今回も羊に関係ないのですが、ふかひれについてです。私の実家の近くに気仙沼という港があり、ふかひれの生産を行っています。子供のころからふかひれラーメンを食べに行ったりと、ふかひれと触れ合う機会が一般よりあるまま大きくなりました。サメの肉や心臓などもスーパーで売られており、食卓に出る事もあり、サメ文化圏で育ったと言っても過言ではありません。

そんな感じで育ったのですが、最近になってよく聞くのが「ふかひれ漁は残酷だから禁止にすべき!」「鮫は絶滅危惧種。乱獲で地球環境が破壊される」などの情報。しかし、その根拠になるデータがあまりないとも感じていました。

鮫やふかひれは門外漢ですしよくわかりません。それなら、ふかひれを扱っている業者さんの話をまずは聞いてみよう!と思いつきまして、中華食材の会社で、ふかひれの工場も持つ株式会社中華・高橋の髙橋社長にふかひれについて伺ってきました。

非常に深いテーマであるし、世界的な関心事項ではありますが、あくまで「素人が疑問に思ったことを聞いてみた」というスタンスの取材になります。基本的な事を知りたい人向けの情報があまり見つかりませんでしたので、ふかひれ入門編的な資料を作ろうと思いました。

できるだけ元データとなるリンクも載せておりますので、興味がある場合はリンクをたどり元データで判断していただくことが出来るように致しました。

お話を伺った中華・髙橋の髙橋滉社長

フカヒレの需要拡大とともに広がった鮫資源保護の動き

「サメを保護しようという動きが活発化したのはまだここ20年ほどで最近のことです。昔は資源として考えられていませんでしたが、中国の経済発展でフカヒレの需要が急激に高まり、サメが激減しているのでは?となり、調査して管理しようと言う流れなりました」と、お話しするのは、株式会社 中華・高橋の代表取締役社長 髙橋 滉さん。あふれるサメの知識に圧倒されるほどサメ愛が強い方です。ふかひれは日本では主にサメの水揚げ量が多い宮城県気仙沼市で生産されており、同社も気仙沼に加工場を持っているとの事。

中華・高橋HPより。気仙沼のふかひれ工場の様子。

鮫は基本マグロ漁と同じ「はえ縄」で捕獲しており、気仙沼がふかひれで有名な理由は、マグロ漁船が多く所属するからだそうです。私が、気仙沼の近くの岩手県の沿岸部出身なのですが、これは知りませんでした。

500種類もいるサメが一緒に理解されている。

髙橋社長「サメは500種類以上います。全てのサメがフカヒレにはなるのですが、実際に活用されているのは50種類程度。中でも気仙沼で水揚げされフカヒレに加工されているサメはヨシキリザメ、モウカザメ、アオザメの3種です。」サメの種類がそんなにあるのも驚きですが、その中で気仙沼で使われるサメは3種類だけだという事も驚きでした。

サメと一口に言っても増えているサメもいれば、絶滅寸前のサメもいます。気仙沼で使われる3種類のサメは、太平洋地域での漁獲規制もなく日本付近では資源として豊富な魚種だそうで、WEB上でよく見るふかひれへの批判「サメは数が減っている!」は500種類のサメを一緒くたにしまっているからだそう。

鳥の中に、鶏もトキも鷹もカラスもいるのに、全部鳥でくくって話すとおかしなことになると思いますが、サメ漁に対する批判も、サメという種類名と、個別の種の区別をつけてない所にも問題があると感じました。

資源管理がすごいサメの世界

サメだけではないらしいのですが、漁業はお話を聞いて資源保護の枠組みが色々とあり、私の頭では多すぎて理解できませんでした・・・・わかりやすい例を挙げますと、フィニングというヒレだけをとる行為を防止するため、スペイン(ふかひれの産地だそうです)などをはじめ、世界の管理機関ではサメの水揚げ時にヒレの割合を全体の5%以内にすること等決められていたり、調査に基づいて資源保護のための禁漁が課せられたりしています。その規制が結構厳しく違反者には漁業権のはく奪など、罰則も整備されているそうです。

水産庁の下部機関が毎年更新している「国際漁業資源の現況」がコチラ
http://kokushi.fra.go.jp/index-2.html

その中の、34 サメ類の漁業と資源調査(総説)がこちら
こちらにRFMOの規制が明確に書かれています。
http://kokushi.fra.go.jp/R02/R02_34_sharks-R.pdf

しかし、問題がないわけではありません。サメにとどまりませんが、発展途上国などはこのような規制をすり抜ける場合があり、その部分が今後の課題になるそう。中華・高橋さんでは、そのような国から購入しないなど、対策をとっているそうです。この問題はサメだけにとどまらず様々な漁業資源でも発生している問題です。

ワシントン条約についてのみんなの勘違い

IUCNのRED LISTで「準絶滅危惧種」に指定されている!と聞くとドキリとします。私もそうでした。日本でふかひれに使われるサメは「ヨシキリザメ、モウカザメ、アオザメ」ですが、その中でヨシキリサメが9割を占めるそうです。そのヨシキリサメは「準絶滅危惧種」に指定されています。「絶滅しそうなサメをなんでとるのだ!」となるかと思いますが、この「準絶滅危惧種」のニュアンスは、「個体数に問題はないけど、科学的な調査を続けて気を付けていきましょう」でして、捕獲、販売、輸出や輸入なども一切規制されていません。

わかりやすい例で行くと、「鯵(あじ)」も準絶滅危惧種です。シーチキンの原料となっているキハダもです。このような一般的に流通している魚も準絶滅危惧種に指定されています。この、レッドリストにつきましては下記を参考にしてください。

<上記の図の根拠のリンク>
以下、IUCNのRED LISTです

キハダ
https://www.iucnredlist.org/species/21857/9327139

マアジ
https://www.iucnredlist.org/species/20437783/67871570

マカジキ
https://www.iucnredlist.org/species/170309/6738801

トラフグ
https://www.iucnredlist.org/species/193612/2247747

ヨシキリザメ
https://www.iucnredlist.org/species/39381/2915850

また、以下WWFのページで、「絶滅の恐れのある野生生物とされているのは」に関する記載があります。(上から2/5あたりの場所です)
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3559.html

この用語、素人ながらもっと適切に実態に合わせた物にした方がいいのではと。字面で誤解している人が多そうです。

なぜ、ヨシキリザメが9割なのか??

まず、サメは生まれながらの捕食者で天敵がほとんどいません。敢えて言うなら大昔より天敵は人間です。そして、サメは種類により成熟年齢(出産できる年齢)と、産仔数(生まれる子の数)が違います。なかには成熟に20年かかる種類もいますが、ヨシキリザメは4-6年と早く成熟し、一度に30〜50尾くらい出産します。(サメの7割は胎生)。妊娠期間も9-12ヶ月。つまり、非常に頭数が増えやすいサメなのです。

そして、外洋を回遊するサメなので、網でとるのではなく、主に延縄(はえなわ)でとります。長い綱に数千本の針がつながる、大掛かりな釣りでして、マグロなどと一緒に水揚げされます。日本ではサメ専門にとる漁船はなく、マグロやカジキをとる時に一緒に釣りあげられます。この漁法は針が大きく、成長したサメしか捕まえません。

延縄とは?
http://www.kesennuma-gyokyou.or.jp/html/gyogyou.html

まとめますと

・延縄以外天敵のいない捕食者である。
・外洋に住むので近海漁業の漁網などで幼い個体などが捕獲されることはない。
・成熟が早く、出産数が多く、妊娠期間が短いので個体が増えやすい。

上記の理由から資源管理の元、メインの素材として捕獲しているのがわかりました。

中華・高橋さんでは、メインとなる気仙沼産の物のほか、きちんと管理されているスペイン産のサメも仕入れているそうです。

▲2017年ヨシキリザメ資源評価「乱獲でもなく過剰漁獲でもない(PDFの緑の部分)」
引用元:http://kokushi.fra.go.jp/R02/R02_35S_BSH-PO.pdf

■ 消費はほぼすべて日本国内。そして他の魚種と同じく様々に使用される

さて、ヒレだけ注目されるサメですが、肉も鮮度を間違えなければ非常に美味しく、中華料理の火鍋や、四川料理の「水煮魚」などは、サメ肉が非常にあいます。鮮度良く処理されれば上品な白身のような食感です。

それでは、サメ肉はどのように使われるのでしょうか??

鮮度抜群:切り身や冷凍加工食品などで食材として出荷されます。
東日本大震災の被災地でもある気仙沼の産業育成と、付加価値を付けるために中華・高橋さんでは、工場を建設しサメ肉の加工も行っています。

中程度の鮮度:すり身としてはんぺんの材料
こちら、皆さん必ず食べているはず。新鮮すぎると固くなりすぎるので、中程度の鮮度が歓迎されるそうです。

鮮度があまりよくないところ:養殖魚などの飼料や野菜の肥料

サメ肉の調理例。中華料理にとてもよく合います。

と、水揚げされたサメはこのように、余すところなく使われています。新しい例だとサメ軟骨のようにサプリの原料になる場合もあるそうですし、サメ皮も食用のほか化粧品原料や皮革製品の資源としても使用されています。

普通の魚種と同じなはずなのに、なんでこんなに騒がれるのか??

と、ここまで聞いて「あれ?普通の魚と同じなのではないか??ヒレと皮も使えるので、普通の魚より歩留(使用できる部分・魚で使うかは不明)が良くないか??」と率直に思いました。一部、発展途上国の漁法に問題があり、それは解決すべきですが、それはどの魚種でも言える事であり、サメだけの問題ではありません。

限りある魚種を管理して保護していくのは大事ですし、サメにかかる規制や、外からの監視の目は大事だと感じます。そして、今後ますます大事になって来るでしょう。

しかし、かなり違和感を感じた事も事実。国際機関の科学的調査や実際のデータに基づかないイメージなどが先行しすぎてはいないか??と。都合のいいデータを引っ張った、感情論がメインになり、きちんとしたデータや研究はあまり広がってない気がします。

確かに環境保全や自然保護などは人類の命題ですが、なにか、攻撃目標作って、誰かが音頭をとり、その音頭に「なんか、地球環境によさそう」と、思う善意の人たちが動かされているような、よく見る構図が透けて見える気がするのです。

このあたりは、羊好きの素人の手に余るので、本職の記者さんなどに取材はお任せしたいところです。

知る事の良さを改めて教えてくれた「サメ」取材でした。

私も、お話をお聞きするまで「なんか、サメって捕獲するのいけないのか?」的イメージで考えていましたが、お話を伺ううちに、ああ、イメージだけで思い込んでいたのだ・・・と勉強不足を痛感しました。やはり、イメージではなく、きちんとデータをみたり、調べたり、お話し伺う事大事ですね。

被災地でもある気仙沼の産業でもあるサメ漁が、適切に今後も続けばいいな!と思ったところで、今回の取材は終了とさせていただきます。長い時間お付き合いいただき、素人質問にもわかりやすく真摯にお答えくださいました株式会社中華・高橋の髙橋社長。今回はありがとうございました!

写真提供:株式会社中華・高橋

株式会社 中華・高橋
中華・高橋とは、フカヒレを強みとする中華に特化したメーカー卸。最近では自社開発の冷凍総菜や調味料が人気を呼び、外食・小売を問わず活躍の範囲を広げている。運営するオウンドメディア「80C」も幅広い層から注目されている。
公式サイト:https://www.chutaka.co.jp/

取材・文・撮影=菊池一弘

菊池一弘
株式会社場創総合研究所代表取締役。羊好きの消費 者団体齧協会主席。羊を常食とする地域で育ち、中国留学時にイスラム系民族の居住区に住んでいたことなどから、20代前半まで羊は世界の常識と思ってそだつ。本業は「人を集める事」企画から集客、交渉や紹介など。公的団体の仕事から、個人までできる事なら何でもやるスタンス。最近は四川フェスの運営団体麻辣連盟の幹事長も兼務。監修書籍に「東京ラムストーリー(実業之日本社)」「家庭で作るおいしい羊肉料理(講談社)」がある。


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