二大シェフが食の王国・福岡の魅力を発信!山海の幸と人が育む福岡ガストロノミー 26年4月号


多彩な山海の幸に恵まれる福岡県。気候風土や歴史に育まれた豊かな食文化を背景に、ガストロノミーツーリズムを推進している。フレンチの三國清三さんと和食の笹岡隆次さんを招き、食材の産地視察を実施。2月のセミナーでは福岡の食材をガストロノミーに生かす発想法が披露された。

去る2月2日、福岡市中心部で「食の王国・福岡」ガストロノミーセミナーが開催された。現在福岡県が推進しているガストロノミーツーリズム商品造成に向けた取り組みの一環。国内外の旅行者や観光客から「選ばれる目的地」となるために、福岡県の食の豊かさをより魅力ある形で発信し、地元の生産者や飲食・観光産業を盛り上げるためのプロジェクトである。

セミナー会場の「THE KEGO CLUB by HAPPO-EN」は、福岡市の中心部に位置するイベント会場。当日は福岡県内の生産者や飲食・観光業界の関係者約90人が来場した。

産地で触れた食材の魅力を一皿に表現

ガストロノミーツーリズムに関する講演に続き、福岡県産の食材を用いた調理実演の講師を務めたのは、三國清三氏との笹岡隆次氏の二大シェフだ。

テーマ食材は、「特鮮本鰆」「福岡有明のり」「鐘崎天然ふく」「はかた地どり」「博多和牛」の5つ。両氏は、セミナーに先立って、昨年11月には食材の産地も訪問した。食材の生産の過程や特徴を現地で視察して知った上で、食材ごとに各氏1品、計10品のメニューを考案した。また、福岡県は日本有数の酒処。当日は実演と並行して次々に料理と各メニューにペアリングされた日本酒が提供された。

福岡有明のりバタートースト
博多和牛のフォレスティエール きの子3種(博多ぶなしめじ、博多えのき、博多すぎたけ)
鐘崎天然ふくの厚切りカルパッチョ赤酢味
はかた地どり炊き込みご飯 宗像のアカモク添え
特鮮本鰆の塩蒸し お酒の餡かけ

セミナーでは、「博多和牛」「鐘崎天然ふく」に加えて「特鮮本鰆」「福岡有明のり」「はかた地どり」の全5食材をテーマに、三國・笹岡両氏が1品ずつ料理を披露した。写真はその一部(上の3品が三國氏、下の2品が笹岡氏の料理)。1品ごとの構成や味、同じ食材から各人が全く異なるおいしさを引き出す発想力に、参加者たちは大いに刺激を受けていた。また、料理には、テーマ食材以外の福岡県産調味料や野菜なども採用したほか、事前にシェフたちが選んだ福岡県産日本酒を各品にペアリング。福岡県の食の魅力を幅広く発信・発見する機会となった。

九州・沖縄サミット晩餐会や東京オリンピック選手村の組織委員会顧問など数々の世界的な行事に携わってきた三國氏と、全国各地の食事業に関わる笹岡氏。

福岡県産食材を使ってガストロノミーメニューを考案するヒントを問われた三國氏は、「これからの料理
に必要なのは『アニマルウェルフェア』※」と断言。「オリンピックの選手村では、お肉の家畜も愛情をもって健やかに育てられていることが前提です。ぜひ福岡でもその観点を料理に取り入れて」と話した。

※ 直訳すると「動物福祉」。「家畜を快適な環境下で飼養することにより、家畜のストレスや疾病を減らすことが重要であり、結果として、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながる」( 農林水産省ホームページより抜粋)

生産者×料理人の連携で地元発のガストロノミーを

笹岡氏は、生産者と料理人との連携を深めるための方策について「料理人は日々の仕事で忙しいですが、生産者の方に会いに行くことも重要です。現地を見て初めてわかり、料理に生かせるものがあります」とコメント。豊富な経験と知見をもつ両氏ならではの、新たな視点も提示する機会となった。

ガストロノミーツーリズムの推進には、福岡県内の料理人や食のプロによる実践が不可欠だ。これを機に、地元のさらなる気運の高まりが期待される。

堀内牧場
2005年に福岡県のブランド牛となった「博多和牛」。その生産者の一人・堀内牧場の堀内幸浩さんは、和牛界では珍しく自社牧場で牛の繁殖から手がける。現在、牧場で過ごす約200頭のうち3割が自社繁殖の黒毛和牛だ。「いかに牛たちのストレスを減らし、愛情を注ぐか」を常に考えているという堀内氏。約20年間牛と向き合って得たという同氏の信念に、三國、笹岡両氏も感銘。「産地を実際に訪ねると、自ずと謙虚になる。食材に対する気持ちも変わります」と、産地訪問の意義を改めて実感していた。
鐘崎漁港
「鐘崎天然ふく」の視察で訪れた鐘崎漁港は、福岡県最大の天然トラフグ水揚げ港だ。JF宗像漁業協同組合・鐘の岬活魚センターでは、竹浦誠さんの案内でトラフグなど活魚水揚げ後の蓄養水槽を見学した。また、同センターでは-30℃の液体瞬間凍結機を導入。水揚げ状況に関わらず、常に活け締めに近い風味のトラフグを楽しめるようになったという。

text : Ryoko Sakane photo : Tomoka Anegawa

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