銀座・小十に聞く!日本食に合う国産ワイン5選


日本のワインと日本料理にはDNAに共通項がある

銀座小十 奥田透さん

「日本料理には、日本酒がいちばん合うと思っています。ただ私は、日本料理をそんなふうに幅の狭い料理にしたくなかった。だから、この店を開いたときから、日本料理に合うワインを置くようにしています」
 銀座小十の料理長、奥田透さんは言う。年連続でミシュランの三ツ星を獲得している銀座の名店には、海外からのゲストも少なくない。国籍を問わず、多くの人に自分の料理を楽しんでもらいたい、という思いは強く、だからこそ、奥田さんはワインの勉強をした。

料理の構成成分がワインと一致すれば相性はいい

 そんな奥田さんが選んだ5本は、すべて日本産だ。
「ワインは、料理の構成のなかに油か酸があれば、ひっかかるものだと思うんです。でも、豆腐の白和えや炊き合わせのように、日本料理には酸も油も使わない料理が多い。だから、本来ワインとは合わせにくい。ただ、日本産のワインだと、不思議と相性がいいんです」

 日本という、同じ土壌と太陽と水で育てられたブドウと野菜は、どこかDNAでひっかかる。 「それが理由だと、私は勝手に解釈しているんです」
 今日の料理は、「車エビと夏野菜のすだち和え」。奥田さんは、「キュヴェ三澤明野甲州」を合わせた。「ワインを合わせる場合は、料理の構成成分が大事になると考えています。今日の料理なら、車エビには海のミネラル、青野菜には青っぽさ、焼きナスには香ばしさ、ベビーコーンには甘さ、わさびには苦みやえぐみがあります。山梨県固有の品種、甲州には、それらすべてが入っている。だからから相性がいいんです」

車エビと夏野菜のすだち和え
オクラ、スナップエンドウ、ベビーコーン、ソラマメ、インゲン、アスパラ、焼きナスのおひたしに車エビを乗せ、最後にわさびとすだち、少量のしょう油で味付けをしている。

 とくに甲州は、青野菜によく合う。これがソーヴィニヨンブランなら、すだちやわさびの味を引き立ててくれるし、シャルドネなら焼きナスの香ばしさやベビーコーンの甘みにひっかかる。

「そうやって料理の構成成分で考えると、赤ワインにも相性のいいものはあります。メルシャンは、日本が誇る1本だと思い、選びました」
 今、銀座小十では、白15種、赤17種の日本産ワインを揃えている。

食材の構成成分を知ればワインとの相性は分かります。

奥田シェフが薦める 今、飲みたい旨いワイン5本

キュヴェ三澤 明野甲州2012
CUVEE MISAWA AKENO KOSHU

生産地 山梨県明野町三澤農場
生産者 中央葡萄酒
ブドウ品種 甲州種 100%

【味わい・香り】
辛口。果実香が豊か。爽快さとやわらかさのあとに、成熟度の高い上質なフルーツの印象が口中に広がる。
【合う料理】
野菜との相性がいいので、野菜料理全般に合う。

シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー 2007
Chateau Mercian KIKYOGAHARA MEELOT 2007

生産地 山梨県甲州市
生産者 シャトー ・メルシャン
ブドウ品種 メルロー100%

【味わい・香り】
フルボディ。明るめのきれいなルビー色で、熟した果実にスパイシーな香りも。ジューシーな味わいで、タンニンも細やか。
【合う料理】
うなぎの蒲焼きやすきやきなどと相性がいい。

井筒ワインNACカベルネ・ ソーヴィニヨン[樽熟]2009
2009 Cabrnet Sauvignon BARREL AGEING

生産地 長野県塩尻市
生産者 井筒ワイン
ブドウ品種 カベルネ・ソーヴィニヨン90%、カベルネ・フラン10%

【味わい・香り】
フルボディ。透き通らない赤紫色で、華やかな香り。しっかりとした味わいの骨格に樽熟成の深みと厚みが付加されている。
【合う料理】
和牛のステーキやローストビーフ。しょう油や味噌、みりんとも相性がいい。

ドメイヌソガ ソーヴィニヨンブラン2012
Domaine Sogga Sauvignon Blanc 2012

生産地 長野県小布施
生産者 小布施ワイナリー
ブドウ品種 ソーヴィニヨンブラン100%

【味わい・香り】
ミディアムボディ。柑橘系の香りが高く、口当たりはなめらかで、クリーンな味わいながら、ベースには苦みも感じられる。
【合う料理】
柑橘系のゆずやすだちなどを使った合えものやおさしみなどと相性がいい。

ボー・ペイサージュ・ツガネ・ シャルドネ2010
BEAU PAYSAGE TSUGANE Chardonnay 2010

生産地 山梨県北杜市
生産者 ボー ・ ペイサージュ
ブドウ品種 シャルドネ100%

【味わい・香り】
ミディアムボディ。柑橘系の香りに、厚みのある口当たりとなめらかさのベースには、しっかりとした酸味や渋みも感じられる。
【合う料理】
香ばしさや甘みとのひっかかりがいいので、焼きものなどとは相性がいい。

Toru Okuda
1969年、静岡県生まれ。静岡や京都、徳島などで10年間修業。1999年に静岡で独立。2003年、「銀座小十」を開店。2011年、「銀座奥田」を開店。 2008年より6年連続でミシュランの三ツ星を獲得。著書に『焼く:日本料理 素材別炭火焼きの技法』(柴田書店刊)、『世界で一番小さな三つ星料理店』(ポプラ社刊)などがある。

銀座 小十
東京都中央区銀座5-4-8 カリオカビル4F
03-6215-9544
● 12:00~13:00LO 18:00~21:30LO 要予約
● 日・祝休
● 22席


本記事は雑誌料理王国第230号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第230号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

山内章子=取材、文星野泰孝=撮影


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