母の自慢のハンバーグは、実はあの名シェフの……


トップ料理人にとって思い出のひと皿を語る きっかけのひと皿 

隅田川のほとりに店を構えて10年。今年の末、看板を下ろす渡辺雄一郎さん。自身の原点である、母の思い出が詰まったハンバーグは太陽のように輝き、ラストサマーを飾る新作料理は炎のようにゆらめき、熱い思いを秘める。

ナベノ-イズム
渡辺 雄一郎  わたなべ ゆういちろう

1967年、千葉県生まれ。辻調理師学校卒業後、フランス校に進学。リヨンの「ラ・テラス」、東京「ル・マエストロ・ポール・ボキューズ・トーキョー」、「タイユヴァン・ロブション」、「カフェ・フランセ」などを経験。2004年より11年間、「ガストロノミー”ジョエル・ロブション”」のエグゼクティブシェフを務める。16年、浅草で独立開業。26年12月に閉業予定。

「母が作ったハンバーグのソースが、フランス料理人としての原点に」

皿の上で煌々と輝くハンバーグは、まるで太陽のよう。「ナベノ-イズム」のシェフCEO、渡辺雄一郎さんが料理人をめざすことになった、きっかけのひと皿である。
「母が料理好きで、小さいころから本やテレビを観て、見よう見まねで、いろんな料理を作ってくれました。クリームコロッケもベシャメルから作ったり、洋食が得意でした」

なかでも渡辺少年が衝撃を受けたのは、煮込みハンバーグだった。
「初めて食べたとき、子供ながらに濃厚なソースのおいしさに驚いた。ソースにブイヨンやケチャップ、ブランデーまで加えて、蒸し煮にして作っていて。いまから思えばフランス料理のブレゼのようでした。『お母さん、これすごいね!』て言ったら、『私のオリジナルレシピよ』って得意げに話していましたね」

ハンバーグ「ソレイユ」
パテは氷で締めておくことで煮崩れを防いだ。ソースはケチャップやブランデー以外に純米酒やみりんなどを加えて重厚な味わいに。肉の焼き汁とともに、何度もデグラッセすることでフランス料理の真骨頂である旨味を引き出し、生クリームでまろやかさ与える。魚醤のドレッシングであえたサラダが箸休めとなる。

母の自慢のハンバーグは、実はあの名シェフの……

小学生でフランス料理の象徴とも言える「ソース」の魅力に出合った渡辺さん。この体験こそが、後にフランス料理人の原点となった。そして小学校の卒業文集に「将来はプリンスホテルの料理長になる!」と記し、早くも頭角を現していた。
あれから50年余り ── 懐かしのハンバーグに自身の経験と技法を重ね、ガストロノミーレストランのひと皿に昇華させた渡辺さん。この話には続きが……。


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2016年、浅草・駒形の隅田川沿いに開業。江戸の文化が香る独自のフランス料理を編みだし、多くのファンを獲得してきた。開業当初より「10年間」を期限に歩み続け、今年12月末、惜しまれつつも竈の火を閉じる。

Nabeno-Ism

東京都台東区駒形2-1-17
TEL 03-5246-4056
12:00-15:00
18:00-22:00
月・不定休

text : Kanami Okimura photo : Hiroyuki Takeda

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