そんな松本シェフが今回、オマールブルーの調理法に組み入れたのは、なんと中華料理の技法だ。
「オマールブルーのプルプルの身を、なんとかプルプルのままお客さまに提供したいと思ったときに、頭に浮かんだのが中華料理のエビチリでした。そこで、東京會舘にある『東苑』の調理長に聞いて、『漿(チャン)』というこの技法を教えてもらったんです。エビのほか、タコやイカ系の食材も、この方法で調理するとおいしくなりますよ」
方法は、さほど難しくはない。オマールブルーは真空パックのまま水で解凍し、塩と酒で下味をつけたあと、よくかき混ぜた卵白をまとわせたら、全体に片栗粉をまぶして少し寝かせておくだけだ。
「ウチでは、朝イチでこの作業をして、ランチで使うイメージですね」
あとは130〜140℃くらいの油でサッと揚げて、アメリケーヌソースを合わせれば完成だ。
今回は、アスパラガスのリゾットを添えて、オマールブルーの赤とリゾットの緑のコントラストが美しいひと皿に仕立てた。また、オマールブルーの周りには、辛みのあるラーと、パセリオイルを飾り、これらをオマールブルーにつけるだけで、味わいに変化を持たせる〝仕掛け〞も施した。
「若い頃は、フランス料理の技法にこだわっていたのですが、今は技法よりも、目の前の食材をいかにおいしく調理できるかということを、考えるようになりましたね。だから、気になれば他のジャンルの料理人にも相談します。今は、自分が食べたいものをつくろうと思っていますね。もちろん、フランス料理の枠からは外れないようにしていますけれど……」と松本シェフは笑顔を見せる。
松本浩之さんは1995年に渡仏し、5年間修業。2006年に『Restaurant FEU(フウ)』の料理長になり、2012年にはミシュランで1ツ星を獲得。2019年、東京會舘「レストラン プルニエ」の調理長に就任した。
また、オマールブルーに合うワインとして、2本のブルゴーニュワインを用意。ソムリエの木崎正人さんは、「白はバランスがよくて果実味がある上品なワイン。赤はふくよかさを感じるワインで、オマールブルーに合うと思います」と話す。
極上のオマールブルーは、きっと料理人の感性を刺激してくれるはずだ。
2つのワインを製造するドメーヌ・シャンソンは、フランス東部に位置するボーヌで、18世紀から続くもっとも古い歴史を持つワイナリーのひとつ。ブルゴーニュのテロワールを表現したワインづくりを行っている。
ハイプレッシャー冷凍オマールブルー
テール、むき身(サンク・デー・オー)
約90g 2,800円
ご購入はこちらから。
松本シェフによる調理動画もお楽しみください。
レストラン プルニエ
東京都千代田区丸の内3-2-1
東京會舘 本館2F
TEL 050-3134-4890(予約専用)
11:30~14:00、17:00~20:00
text: Shoko Yamauchi photo: Toichi Miura
本記事は雑誌料理王国317号(2021年8月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は317号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは、現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。