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おいしさと美のパスタ#2 冷製パスタは和食の八寸


皿が運ばれた瞬間、リストランテのテーブルが和食店に変わった。散らした柚子皮、炭火で焼いた松茸とカマス、そして焦げた杉板の匂いが混在する。赤黒い器の上に黒い板というビジュアルにも、目を奪われる。

昼夜ともにコースのみで、パスタは冷製1皿、温製1皿。和食からイタリアンへ転向したシェフの山口正さん。前菜の後の冷製パスタは、和食の八寸にあたると考えている。季節感と遊び心で楽しませ、続く料理への期待感を高める八寸。皿目のパスタはつねに趣向を凝らすという。

冷製パスタは和食の八寸。
遊び心と季節感でゲストを引き込む

カマスと松茸の杉板焼き
フルーツトマトの冷製カッペッリーニと黄柚子の香り

オーブンから出したばかりの温かい杉板焼きをのせて。口の中で冷たい麺と混ざり、香ばしさと秋の香りが広がる。赤いガラスに金メッキを施した特注の皿に、あえて黒い杉板をのせるのが、「渋くて野暮ったいものが好き」と話す、山口さんならではの美意識だ。

写真の料理は本来、カッペッリーニの真上に具を挟んだ杉板をのせる。ゲストが板を外し、具を取り出し、崩しながらパスタと一緒に食べるようすすめる。口の中で一体化し完成するパスタ。一連のプレゼンで食べ手をコースに引き込むのが目的だ。

日ごろ親交の深い、京都の和食の料理人に教わり、日本料理の古典書も紐解くという山口さん。「絵も写真もない、文字だけの料理書を見ていると、イメージが膨らむんです」。現代の日本料理店でも出合えないような古い料理の記述を見て、味わいを想像し、ヒントを得ることも多い。

実際にこのパスタも、割烹で焼き物を食べていて思いついた。焼いた魚の横に山桃のシロップ煮が添えてあったのだ。「甘くてみずみずしい山桃で口の中を洗う感覚を、フルーツトマトに置き換えれば、冷製パスタになるのでは」と。考えるうち、自身が割烹時代に作っていた杉板焼きを思い出した。杉の香りが間に挟む食材に移る。その香りも楽しんでもらう、渋い趣向の一品が生まれた。

【レシピ】カマスと松茸の杉板焼き
フルーツトマトの冷製カッペッリーニと黄柚子の香り

材料(1人分)

カマス 30g/松茸 30g/日本酒 適量/フルーツトマト 2個/塩 適量/粒マスタード 適量/オリーブオイル 適量/カッペッリーニ 30g/黄柚子(皮) 適量/ルイユ 適量
ルイユ…サフラン風味のニンニクマヨネーズ

作り方

1.カマスを三枚におろし、重量の0.8%の塩をして、脱水シートに包んで冷蔵庫で半日間マリネする。ひと口大に切り、炭火で皮目に軽く焦げ目がつく程度に炙る。
2.松茸を刷毛で掃除して、かさの部分をひと口大に切る。ボウルに入れて日本酒で軽くマリネし、炭火で軽く炙る。
3.フルーツトマトを湯むきして、ミキサーにかけ、ボウルに移す。塩、粒マスタード、オリーブオイルで味をととのえる。
4.杉板(5×10cm)にカマスと松茸を交互に並べ、オリーブオイルを軽くかけて、もう一枚の杉板で挟む。耐熱皿にのせ、300℃のオーブンで3~4分間焼く。
5.塩湯でゆでたカッペッリーニを氷水で締め、3のボウルに入れて絡める。
6.パスタを皿に盛り付け、4をのせる。ルイユをあしらい、おろし金で黄柚子の皮をすり、散らす。

山口 正さん Tadashi Yamaguchi
1975年岐阜県生まれ。東京の割烹で5年間勤めたあと、イタリアンに転身。99年から「カノビアーノ」「カノビアーノ京都」を経て、2007年1月現店開店。今月2店舗目となる「ヴィネリアt.v.b」を開店。

Ristorante t.v.b [リストランテ ティ・ヴォリオ・ベーネ]
京都市東山区祇園町南側570-155
075-525-7070
● 12:00~14:00 LO、18:00~21:30 LO
● 日曜、第3または第4月曜休


text by Ayako Miyoshi photographs by Daisuke Okamori

本記事は雑誌料理王国第183号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第183号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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