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加藤順一さんのフォアグラフィンガーフード6選


前菜で驚きとおいしさを演出するためのトーション仕立てのフォワグラ6案

加藤順一さん

加藤順一さんは、伝統的なフランス料理からイノベーティブまで幅広く学んできた。フィンガーフードも実にスタイリッシュで、北欧のクリスマスのパンケーキをモチーフにしたり、液体窒素を使ったり、オブジェのように見えるものもある。

「すべてはこれまでに学んだことや、体験したものから生まれたアイディア。ベースはフランス料理の基本的なテクニックです」

今回のポイントは、「トーション仕立てのフォワグラ」をすべてのフィンガーフードに用いることだ。トーション仕立てのフォワグラは、フォワグラ料理としてそのまま提供することもできる。加藤さんは、これをタルトやキャンディーにしのばせたり、ホイップクリームやゼラチンと合わせてムースに仕立てるなど、調味料のように使っている。

トーション仕立てのフォワグラ作りには、しっかりしたテクニックが必要。「布に巻いたフォワグラを、濃い目のチキンブイヨンの中で加熱して作ります。テリーヌ型は使わないため、フォワグラがスープに浸かった状態になるので、塩加減や火加減に気をつけてほしいです」。

長くスープに入れておくと、フォワグラには味がしみ込むが、そのぶん脂は抜けてしまう。また、フォワグラの状態によって、塩加減も調節しなければならない。

「一応レシピはありますが、なかなかその通りにはいかないと思います。コンベクションオーブンでも試してみたのですが、やっぱり〝手動〞でやるしかないですね」

ただし、布を使うので少量でも作れ、好きな形に成型できる点は便利。

加藤さんが修業したのは、フランス料理が「イノベーティブ」へと移り変わる時期。北欧はもちろん、フランスでも、フォワグラはほとんど使われていなかった。高級食材に触らせてもらえるまでには2年かかったが「、日本でフォワグラ使いを習っておいてよかった」と振り返る。「フォワグラ料理を『古い』と捉える人もいるでしょうが、僕は、工夫次第でいくらでも新しさを表現できると思います」

たとえば、今回作った「カシスレザー」のもとになっているのは、ジャム作りのテクニック。カシスに甘味をつけて煮詰めればジャムになるが、それをシート状に伸ばせば、まるで薄いグミを噛んだ時のような新食感が生まれる。このシートでフォワグラを包んだフィンガーフードを誰も「古い」とは言わないだろう。

食事のプロローグとして登場するフィンガーフードは、ゲストにインパクトを与える絶好のアイテム。加藤さんたちのアイディアを参考に、フォワグラで「自分を表現」するのは、楽しいに違いない。

6つのフィンガーフードのベース
トーション仕立てのフォワグラ

材料 (作りやすい分量)

フォワグラ(フレッシュ)…500g /塩…6g/喜界島黒糖…5g /粗挽き白コショウ …2g /コニャック…50g/白ポルト…50g/ルビーポルト…25g /濃いめのチキンブイヨン…1ℓ/タイム…5枝

作り方

  1. フォワグラをそうじして、コニャック、白ポルト、ルビーポルトを馴染ませたら、塩、喜界島黒糖、粗挽き白コショウをふって、ラップをしてひと晩置く。
  2. 1を布で巻いて、タコ糸で縛る
  3. チキンブイヨンにタイムを入れ、その中に2を。60~62℃で10~15分加熱する。 ラップで巻いて(キャンディー状にして)、冷蔵庫に吊るして冷やす。

カシスレザー

材料 (作りやすい分量)

カシスのピューレ…100g/グラニュー糖…20g
トーション仕立てのフォワグラ…6~ 10g(フィンガーフード2個分)

作り方

  1. カシスの ピューレとグラニュー糖を鍋で沸かす。
  2. 1を布のように薄くのばして、ひと晩常温で乾燥させる。
  3. 2を適当な大きさに切って、トーション仕立てのフォワグラを包み込む。

カシスレザーを短時間で乾燥させたい時は扇風機などを利用して。

モルトチュイル

材料(作りやすい分量)

生地の材料=焙煎した麦芽の粉(あるいはブラックココアパウダ―)…50g/アーモンドパウダー…150g/溶かしバター…30g/卵白…50g/粗挽きコショウ…少々
トーション仕立てのフォワグラ…6~10g(フィンガーフード2個分)/マデラ酒を煮詰めたシロップ…適量

作り方

  1. 生地の材料を混ぜ合わせて、2ミリの厚さに伸ばし、150℃のオーブンで15分焼く。
  2. 冷めたら、適当な大きさに割り、マデラ酒を煮詰めたシロップを接着剤のようにしてトーション仕立てのフォワグラをはさむ。

フルードボラー

材料 (作りやすい分量)

タルト生地の材料(9個分)=春巻きの皮…2枚タルト生地の接着ソース(作りやすい分量)=バター…15g/メープルシロップ…50g
フルードボラー1個分の分量=トーション仕立てのフォワグラ…3~5g/白ビールのクリーム(白ビール、卵、バター、レモンの皮で作ったカードクリーム)…5g/水あめで作ったイタリアンメレンゲ…10g

作り方

  1. タルト生地の接着ソースを作る。バターとメープルシロップを混ぜ合わせて加熱する。
  2. 春巻きの皮を円形にくり抜き、1をぬって2枚重ねにして型に入れて、150℃のオーブンで20分焼く。
  3. 2のタルトに白ビールのクリーム、トーション仕立てのフォワグラ、水あめで作ったイタリアンメレンゲをのせる。
  4. メレンゲ部分にバーナーでこげ目をつける。

タルト生地に春巻きの皮を使うと、さっくりとして軽い仕上がりになります。

エブルスキーバー

材料 (作りやすい分量)

生地の材料=強力粉…156g/生クリーム…156g/卵黄…120g/バター…76g/卵白…210g/レモンゼスト…レモン1個分/塩…8g
トーション仕立てのフォワグラ…9~15g(フィンガーフード3個分)/発酵マッシュルームのパウダー(マッシュルームを発酵させてパウダー状にしたもの)…適量

作り方

  1. 生地を作る。卵白はメレンゲにしておく。卵白以外の材料を混ぜて、そこにメレンゲをさっくりと混ぜる。
  2. タコ焼き器を熱して、中を空洞にして生地を焼く。
  3. 表面がこんがり焼けてきたら、トーション仕立てのフォワグラを入れて、生地でふたをして焼く。
  4. 全体が焼き上がったら、器に盛り、発酵マッシュルームのパウダーをふる。

デンマークのストリートフードからヒントを得ました。デンマークではクリスマスになると、中にラズベリージャムを入れてシナモンシュガーをふって販売。大きさはテニスボールくらい。

フォワグラストーン

材料 (作りやすい分量)

フォワグラのムースの材料=トーション仕立てのフォワグラ100g/ホイップクリーム…100g/ゼラチン…2g
灰を加えたミルクティー、ゼラチン…適量

作り方

  1. ムースの材料を合わせて、フォワグラのムースを作る。
  2. 1を型に流し込んで冷蔵庫で冷やし固める。
  3. 2につまようじをさして、液体窒素で5秒間、表面を凍らせる。
  4. 灰を混ぜたミルクティーにゼラチンを混ぜておく。
  5. 3を4に5秒間つけて、表面をコーティングしたら冷蔵庫で冷やし固める。

灰のメレンゲを作り置きしておいて、その上にフォワグラストーンを盛るとインパクト大。

ニンジンのビー玉

材料 (作りやすい分量)

ニンジンジュース(生のニンジンを搾ったもの)…300㏄/トレハロース…30g/キサンタンガム…1g/ニンジンジュースを煮詰めたソース…適量
トーション仕立てのフォワグラ…6~10g(フィンガーフード2個分)

作り方

  1. ニンジンジュース、トレハロース、キサンタンガムをミキサーで5分間撹拌する。
  2. 1を半円形の型に流して、70℃で12時間加熱する。
  3. 2の空洞部分にトーション仕立てのフォワグラを入れて、ニンジンジュースを煮詰めたソースをかける。

食事のスターターとなるフィンガーフードは、見た目の印象も大切。ゲストに「何だろう」と思わせるような演出も効果的。

Junichi Kato
1982年、静岡県生まれ。芝パークホテル「タテル・ヨシノ」、和歌山「オテル・ド・ヨシノ」を経て、2009年 に渡仏。パリ「アストランス」から12年にはコペンハーゲンへ。「AOC」「レストランマーシャル」で研鑽を積み、15年、現店のシェフに就任。「ミシュラン東京2017」より一ツ星。

上村久留美=取材、文 星野泰孝=撮影

本記事は雑誌料理王国2019年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2019年9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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