食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

地方スターシェフに聞いた!人を呼ぶために必要な条件#2


地方で『人を呼ぶレストラン』を作るために必要な条件をテーマに、「料理王国」が注目する地方の料理人50人にアンケートを行った(2016年9月上旬実施)。北海道から沖縄まで、地方スターシェフ50人の生の声を紹介する。

前回の記事はこちら

凡例
(1) お店がある地域の魅力をお教えください。
(2)(1)でお答えいただいた地域の魅力を、お料理やお店の空間でどのように表現されていらっしゃいますか? 具体的な例を交えてお答えください。
(3)地方で「人を呼ぶレストラン」をつくる上で、いま何がもっとも大切だと思われますか?

北海道札幌市 フランス料理

レストランモリエール 中道博さん 今智行さん

(1)北海道の経済的中心地でもある札幌に位置。広大な自然と都会が融合する地。

(2) 豊富な食材の供給地である北海道の素材を各地から取り寄せ、素材の持ち味を最大限に活かす努力をしている。カスベのムニエルなどは、目指すところの「上質な素朴」を表現する料理です。

(3) そこでしか出会えないもの。具体的には、素材の探求とサービスのあり方を、永く続いている食文化を探求する中で見出すこと。

© Chikara Hichiya
レストランモリエール 中道博さん

レストランモリエール
restaurant Moliere
北海道札幌市中央区宮ヶ丘2-1-1 ラファイエット宮ヶ丘1F
011-631-3155

北海道函館市 スペイン料理

レストランバスク 深谷宏治さん

(1) 日本海、太平洋、津軽海峡に囲まれているので、魚種が多く鮮度がよい。渡島半島なので、山が近くにあり、山菜、キノコが多く採れる。

(2) 春の山菜、秋のキノコ、冬の越冬野菜、夏の自家菜園の野菜で料理を作っている。魚の鮮度の良さを活かし、魚の内臓を使った料理を出している。鱈の肝の冷製、胃袋のトマト煮など。

(3) 素材の出所を表示する。地方の伝統食に含まれる良さを、自分の料理に取り入れる。都会ではできない、土地の安さを利用した(自家菜園、庭、景観など)良さをアピールする。

レストランバスク 深谷宏治

レストランバスク
RESTAURANTE VASCU
北海道函館市松陰町1-4
0138-56-1570

青森県弘前市 イタリア料理

オステリア・ダ・サスィーノ 笹森通彰さん

(1) 城下町であり、観光が盛んで、白神山地と太平洋、津軽海峡、日本海に囲まれており、農産物海産物が非常に豊富です。

(2) 生産者の方から直接仕入れしており、一般では手に入らない食材を使い提供しております。例えば馬肉を1頭買いして自分で捌き、普通は購入出来ないTボーンをビステッカにする。朝、搾り立てのミルクで自家製チーズを作る、などです。

(3) 大都市ではできない料理で人を呼ぶのはもちろんですが、自分は料理だけではなく、自分で食材から作り加工し提供する、というスタイルをもっとも重視しております。他のシェフの方々が出来ない、唯一無二のレストランのスタイルを表現することで、弘前に遠方からでも来ていただいていると思っております。

© Yasutaka Hoshino
オステリア・ダ・サスィーノ 笹森通彰さん

オステリア・ダ・サスィーノ
OSTERIA ENOTECA DA SASINO

青森県弘前市本町56-8 グレイス本町2F
0172-33-8299

岩手県田野畑村 フランス料理

ロレオール田野畑村 伊藤勝康さん

(1) 東西17㎞、南北14㎞、三陸に面した小さな村です。海岸線から一気に駆け上がる断崖が広がる地形は食文化や生活に多様性をもたらしています。現代の生活様式が入りつつも独自の文化が残っている地域です。海岸沿いはかつてのアイヌ料理に通ずる食文化があり、山間部は縄文文化を引き継ぐ食文化が残っています。気象的には冷涼で「ヤマセ」と呼ばれる海霧が発生する地域です。これは一般的な作物を栽培するのには大変な気候です。それが、前記した文化が残ってきた理由だと思います。その地方独自の食材や調理器具、器、工芸品などを文化と共に料理に反映させることが出来るのが最大の魅力であり、武器になると思います。

(2) 店の空間については自然美を満喫できる立地条件にあるため、店内は岩手県産の木材を使用したテーブルと椅子でシンプルにしています。オープンカウンターを配置して地域の食材を使い、岩手県の伝統である南部鉄器を使用して調理しています。引き継がれてきた浜の文化と山の文化にフレンチの技法や表現を加えアレンジしています。

(3) 東京や大阪などの都市圏で活躍されているシェフたちは、その世界をリードするような料理や店作りが求められていると思います。一方で地方のシェフの役割は、料理においてはもちろん、地域の方々と共に様々な活動をする事や意識共有することで興味をもっていただくこと、地域の生活に密着した経験をし、それを体現した料理を提供、表現していくことで、そこに何があるのか、何ができるのかを再認識してもらうという大きな課題があります。近年、地球規模の気象条件の大きな変化が心配されますが、それによって影響される資源(食材)の変化も考えなければならないと思います。本来、地域の資源、自然条件や四季折々の行事に基づいて成り立ってきた地方の料理を無視することはできません。前浜で捕れる魚介や野山の恵みと引き継がれてきたものを最大限に活かしていく事が大切だと思います。また、経済重視に偏っていた食材の価値観や流通、フードロスなども含め、考え直す必要があり、生産地である地方からの発信が必要と考えます。

© Yuta Fukitsuka
ロレオール田野畑村 伊藤勝康さん

ロレオール田野畑
L’aureole
岩手県下閉伊郡田野畑村 明戸309-5
080-9014-9000

宮城県塩竈市 フランス料理

シェヌー 赤間善久さん

(1) 塩竈は、仙台という大都市に近く、松島という観光地のそば、港町という立地に恵まれ、奥州一之宮の塩竈神社の元です。

(2) 料理は、魚介類のサラダとして新鮮さを表現している。また、アナゴとフォワグラ、リゾットを組み合わせて〝三味一体〞としてフレンチのエスプリを出している。店は海に近く、海に直結している生活河川もそばを通っており、フランスの運河をイメージして花や緑をいっぱいに感じてもらえる店作りをしている。

(3) 人口の多い都市に近い。観光のルート状にある。交通の便が良い。食材に恵まれている︵ブランド力のある食材を使ったスペシャリテをつくる)。近所の人たちにも来てもらえる価格であること(お祝いなど、特別な日に使っていただく)など。地域に喜ばれる店作りであること。わかりやすい料理名であること。

シェヌー 赤間善久さん

シェヌー
cheznous
宮城県塩竈市海岸通7-2
022-365-9312

山形県鶴岡市 イタリア料理

アル・ケッチァーノ 奥田政行さん

(1) 鶴岡市は、食材の種類が多い。とくに在来作物、そして国宝と重要文化財が東北で一番多い町。ユネスコの食文化創造都市に日本で唯一選ばれており、食で観光を打ち出している市です。

(2) 庄内の自然や生産者の顔が見える素材感たっぷりのイタリア料理に歴史を入れることも。

(3) ひと目見た時にこの人の料理だとわかること。看板料理、スペシャリテがあること。考え方にオリジナリティがあること。

© 料理マスターズ倶楽部
アル・ケッチァーノ 奥田政行さん

アル・ケッチァーノ
Al-che-cciano

山形県鶴岡市下山添一里塚83
0235-78-7230

福島県いわき市 フランス料理

HAGIフランス料理店 萩春朋さん

(1) 福島県は浜通り、中通り、会津、3つの地域で気候が違い、同じ時期にとれる食材も多種多様で、ブランド作物がしっかり確立されています。さらに、生産者と料理人との連携が濃密であり、そのネットワークを活かすことができます。何より、福島県の食材のレベルは全国的にもとても高いものだと認識しております。

(2)コース料理のひと皿ひと皿に食材と生産者の方の紹介のシートを作り、そちらを読んでいただいて、その畑の景色や生産者の方の顔を見ていただいてから料理を食べていただいております。

(3) お土産というキーワードにつきると思います。その土地(土)から産まれたものをご提供することが本当のお土産であると考えております。遠方からいらした方がその食べ物をたべて、その記憶を持ち帰ってもらうことが、地方のレストランの重要な役割なのではないかと思っております。

© 料理マスターズ倶楽部
HAGIフランス料理店 萩春朋さん

HAGIフランス料理店
HAGI Furansuryoriten

福島県いわき市内郷御台境町鬼越171-10
0246-26-5174

栃木県宇都宮市 フランス料理

オトワレストラン 音羽和紀さん

(1) 宇都宮は都市でありながらも自然が近い。車を少し走らせればダイナミックな景観に出会える。寒暖差がある地域性のためか四季の移り変わりを日常のなかで感じることができる。世界遺産の日光、大谷、益子、那須など観光地にも行きやすい。文化と自然のどちらにもふれることができるのが住んでいる者も観光客にも魅力ではないかと思う。生産地の近さは強み。何気ない野菜のおいしさ、鮮度の高さは何より魅力。一大産地の苺をはじめ、果物の質も高い。那須の牛乳、チーズ、日光のヤシオマス、那珂川の鮎など知ってもらいたい良い食材がたくさんある。

(2)「オトワレストラン」は、建物全体で地域の魅力を感じとっていただけるように設計している。宇都宮の大谷石、葛生のフレスコ画、益子焼などの縁のあるアーティストの作品を配するなど、随所に地域の魅力を取り入れている。料理の食材は栃木の旬により四季折々で移り変わり、益子焼作家と共同で作った器も取り入れている。地元のお客様も多いので地域のものに偏るのではなく、フランス、スペインなどヨーロッパのものも融合させ、正餐をたのしんでいただくための食材、器、設えを意識している。

(3)来店したときに栃木らしさを感じていただけるオリジナリティ、料理もサービスもお客様を迎えられる体制を作っておくこと。一過性で人を呼ぶ仕掛けではなく、ベーシックだけれども続いていく店を作っていくこと。

© Yoshiko Yoda
オトワレストラン 音羽和紀さん

オトワレストラン
Otowa restaurant
栃木県宇都宮市西原町3554-7
028-651-0108

本記事は雑誌料理王国2016年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2016年11月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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