DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)はどちらも「n-3系脂肪酸」という脂肪酸の一種だが、いずれも人間の体内では合成できず、他の脂肪酸からも合成できない。要は食べることでしが摂取できないというわけだ。そして、欠乏すれば皮膚炎などを発症することから必須脂肪酸とされている。
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によれば、日本人のn-3 系脂肪酸の1日あたりの摂取目安量は、18〜49歳の男性が2.0g、同年代の女性が1.6g。これを摂取しようとすると、いったい何をどれだけ食べればよいのだろう?
▼日本人の食事摂取基準(2020年版)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」の脂肪酸成分表を調べてみると「アジの干物(まあじ 開き干し 焼き)100g」に含まれるn-3系脂肪酸が2.21g(そのうちDHA
=1.3g、EPA=0.56g)だ。アジの干物は個体によって大小あるが、全長25cm程度の個体の重量が概ね100g強という目安で選べばいいだろう。刺身系だと「ブリ・ハマチ(ぶり・はまち 養殖 皮なし 刺身)100g」にはn-3系脂肪酸が1.66g(そのうちDHA=0.83g、EPA=0.39g)含まれている。ちなみに「本マグロのトロ(くろまぐろ 脂身 生)100g」に含まれるn-3系脂肪酸は5.81g(そのうちDHA=3.20g、EPA=1.40g)もあるので、食事の際にはブリ・ハマチ・トロなどの刺身と焼魚をともに食べるというような工夫が必要かもしれない。
また、調理法によってもn-3系脂肪酸の含有量は異なる。DHA・EPAはいずれも脂肪なので、加熱すれば溶けて流れ落ちてしまうからだ。一般的には加熱調理したものより刺身で食べたほうがDHA・EPAを効率的に摂取できるといわれているが、青魚の中でDHA・EPAを多く含む魚種・加工方法を挙げてみた。
サンマやサバはDHA・EPAともに含有量が多いことがわかるが、注目したいのは缶詰。イワシのかば焼きの缶詰は内容量が100gという商品が多いため、半量だけで1日に必要な摂取量を食べられることになる。缶詰は常備も携帯もできるし、何より開封するだけで食べられるので手軽だ。かば焼きや味噌煮なら卵焼きの具としても使えるし、水煮缶を鍋の出汁として使うという手もある。
アジの干物の開きなら1枚、イワシの缶詰なら半量、ブリ・ハマチの刺身なら100g。そんな具合に毎日DHA・EPAを摂取し続けたあかつきに、体感として変化を感じられたらしめたものだ。
text 水 享一