食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

「あるがままの色」に季節を感じる『チェンチ』坂本健さん


京都の色、ペルーの色、チェンチの色

京都に生まれて、ずっと京都で料理人として仕事をしてきました。そんな僕にとって、京都の色といえば鴨川です。鴨川沿いの道を通って店に来ているので、毎日見ています。

11月になると、紅葉も始まって川岸は赤っぽく染まっています。空気が澄んでくるので、遠くの山の色合いも視界に入ってくる。春には桜。それが過ぎると新緑の葉が生い茂って道幅が狭くなったように感じます。そして夏になると、川の水かさが減って、川底の苔が見えるので緑っぽくなる一方で、空は青く明るい。苔は台風がくると流されてしまうので、秋には川の水がきれいに映るんです。

食材も、自然の色を大切にしたいと思っています。たとえば、春のタケノコや山菜の時期は鮮やかな緑のイメージだと思いますが、灰汁をとると淡い緑になる。僕は、それでいいと思っています。それが季節の色。過度な色止めもしません。だから、派手な色合いの盛り付けは得意ではありません(笑)。料理全体のトーンは抑えた色合いだと思います。
 

10月に料理人仲間と南米ペルーに10日間ほど行ってきました。現地で食べた料理で印象的だったのは、水と肉や魚、塩だけで炊いたスープでした。そこには、ポツンとピクルスが浮かんでいます。この酸味がものすごい味の変化を生んでいました。ガストロノミー的に旨味を重ねたスープの中では感じられない、単一の旨味の中だからこその化け方。山本先生のお話を聞いて、まず思い浮かんだのがこの体験でした。多色の世界では気づかない、小さな味の力を表現したい。それが豚とカブラの煮込みに浮かべた七味です。

チェンチのキッチン。

一方で、最後の皿は、豚肉とカブ、スパイスという構成は同じにしながら、より複雑に手を入れて色の要素も多くしました。それでも、皿の上ではそれを感じさせないように盛り付けました。食べてみると、一つひとつが味として意味合いを成している。普段、僕がチェンチでやっていることを表現できたと思います。

坂本 健さん

「京都の色は、茶や木目のような落ち着いた色。もちろん流行の色も取り入れて学ぶことはありますが、本質的には変わらない。カメレオンのように変わっていては『いつまでもふわふわしたものを追いかけて』と周りから認めてもらえないですね」と坂本さん

チェンチ
cenci

京都市左京区聖護院円頓美町44-7
44-7 Shogoin entomi-cho,
Sakyo-ku, Kyoto
☎075-708-5307
● 12:00~15:00(13:00LO)
18:00~23:00(20:00LO)
●月休、日曜に不定休あり
●コース 昼6000円~、夜12000円
●26席
http://cenci-kyoto.com/

本記事は雑誌料理王国293号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は293号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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