食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

シェフ50人に聞きました!パン屋さんとどんなお付き合いをされていますか?


料理とパンは切っても切れない関係――。だからこそ、レストランとパン屋さんの付き合いは深く、濃く、むずかしいのです。電話アンケートから見えてきた両者の密なる関係と課題について「料理王国」がレポートします。

パン屋さん選びの3つのポイント

今回、「料理王国」では、レストランとパン屋さんとの関係を探るべく、レストラン50店のシェフにパン屋さんとのお付き合いについて電話アンケートを行った。するとパン屋さんの選び方、付き合い方、自家製パンとの兼ね合いなど、その使い方と苦労が見えてきた。

パン屋さん選びとパン選びのポイントには3つある。ひとつ目は味、ふたつ目は配送、3つ目は対応力である。日々のメニューに欠かせないパンだからこそ、コンスタントな提供力も必要になってくる。

シェフたちが求めるパンは人により微妙に違うが、共通していえることは、「料理に寄り添うパン」であることだ。前に出すぎず、しかし、おいしいパンを探すことの、なんとむずかしいことか!その苦労は「とにかく食べ歩いた」「人からよいと紹介されたパンは必ず試した」などという多くのシェフたちの言葉からもうかがえる。「品川の『アロマクラシコ』オープン時には味で選んだ10件ほどのパン屋さんを当たったが、すべて配送の問題でNGだった」と語るのは「アロマフレスカ」の原田慎次さん。「ラ・トック」の川村文嘉さんは「オープン前、パン屋さんを電話帳でくまなく探し、各店に足を運んだ」そうだ。

購入パンの中心はバゲット。そして求める味には、シェフの個性が出る。金属性の音が出るような、皮の硬い、いわゆる「フランス的なバゲット」を求めるシェフは、40代から50代の、フランス修業時代が長かったシェフに比較的多く見られた。「もちはもち屋」と、パン屋さんからの購入にこだわるのも、この世代だ。いっぽうで比較的日本らしい、やわらかめのパンを選ぶシェフもいる。「南部亭」の行森次郎さんは「顧客の求めに応じて」、中がやわらかな「峰屋」のバゲットを使用している。同じく峰屋のバゲットを使う日仏学院内にあるフランス人客も多い「ラ・ブラスリー」のように、「確かにやわらかめだが、塩気があり、スタンダードな味がフランス人からも好評だ」(金子雄二郎さん)という意外な意見を聞くこともできた。

チーズ用は「高いけれど、やはりおいしいので」とパリの「ポワラーヌ」のパン・ド・カンパーニュを購入している、「レディタン・ザ・トトキ」の十時亨さんや「ル・シャポン」の岡田達夫さんのような例もある。

また冷凍パンを上手に活用している例も。「ル・ヴェルデュリエ」の小林浩一さんは「急な大人数のお客さまの時などに利用している」という。

いっぽうで、自家製パンを提供しているレストランも多い。理由は「焼き立てを提供したい」「コストが安い」「種類を多く置きたい」など、さまざま。30代から40代前半のシェフが多い席数が少ないレストランは、自家製パンのみ、というところもかなり多かった。ランチ用やバゲットはパン屋さんから購入し、ディナー用やチーズ用は自家製というように、上手に使い分けているレストランが多かったのも特徴的だ。

しかしパン屋さんに愛ある苦言を呈するシェフもいる。「発酵が足りない、焼きが甘いなど、日々、波がある」と「ヴァンサン」の城悦男さんは辛口だ。パン屋さん側も「パンは野菜のようなものだからなぁ」とその苦労を語る。

シェフたちが一度は通る配送問題

シェフたちが頭を抱えるのが、配送だ。営業時間に間に合わなければ死活問題。買いに行ける店が近くにあればいいが、そう上手くいくとは限らない。購入そのものに苦労していると語るシェフは少なくなかった。立地条件や発注量の問題から、そもそも配送してくれるパン屋さんに出会えず苦労したシェフも多い。「銀座は実は料理に合うパン屋さんが意外に少なく、選択の余地が少ない。配送してもらうのも大変」とは、「マルディグラ」の和知徹さん。パン屋さん側も「配送業者と契約し、効率的な配送を心がけている。地方には冷凍パンを届ける場合もある」(パンテコの松岡徹さん)など、きめ細かな対応を心がけている。しかし配送が遅れがちになり、やむなくパン屋さんを変えた、という声もあり、難しい問題であることには変わりない。

3つ目の対応力は、いわばオーダーメイドにどこまで応えてくれるか、ということである。既製品を使うシェフも多いが、できることなら自分の料理に合うパンを求めたいのがシェフの偽らざる気持ちかもしれない。「ル・シャポン」は、「パンバーニャ(サンドイッチの一種)用のパンや丸いバターロールがほしいなど、細かな要望にも応えてくれた『ミミ』を信頼している」という。「自分の料理に合うパンをオリジナルに作ってくれる『メゾンカイザー』とお付き合いしている」という、「レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ」の成澤由浩さんのようなシェフも多い。レストラン側の高く細かな要望に応えるべく、勉強と苦労をいとわないパン屋さんは、やはり高い評価を得ていた。

アンケートでは、「注目店」も尋ねてみた。そのなかで数多く聞かれたのが、「シニフィアンシニフィエ」への高い期待だ。配送問題などまだまだクリアすべき問題は多いと聞くが、味への評価は高い。今後、ファンが増える兆しだ。

補足として、「将来、パン屋さんを開業したいというご希望はありますか?」とも問うてみた。パン屋さんの大変さを深く知るシェフたちは「無理、無理」と笑う人も多かったが、「いつかはね、という夢はあるよ」と語る「アラジン」の川闢誠也さんのようなシェフもいる。実際、パン屋さんを持つシェフやベーカリーカフェを開業準備中のシェフもおられるし、今後も、夢を実現するシェフが新たに登場するかもしれない。

パン屋さんの需要は、レストランに限らない。今回のアンケート以外に本誌での取材を通して、ビストロやカフェへの卸の多さにも目を見張った。特にカフェ需要は急増しているそうだ。パン屋さん、これからもますます活躍の場が広がりそうである。

どんなパン屋さんとお付き合いがありますか?

アリエッタ
ヴィロン
紀伊国屋
木村屋
金麦
神戸屋
シニフィアン シニフィエ
ジョアン
スタイルブレッド
東洋製パン
ぱん工房あらまあの
パンテコ
ビゴの店
ブロートハイム
ポンパドール
峰屋
ミミ
メゾンカイザー
など(50音順・不定期購入含む)

どんなパンを購入されていますか?

バゲット
パン・オ・レ、プチパン
フロマージュ用ドライフルーツ入りパンパン・コンプレ
パン・ド・カンパーニュ
グリッシーニ
バタール 
など(順不同)

自家製パンは何をお作りですか?

フォカッチャ
プチパン
ブリオッシュ
パンドミー
ライ麦パン
リュスティック
ベーグル 

シェフ・オーナーのパン屋さんとパンに対する提言

パ・マル 高橋徳男さん
日本のレストランは自分でパンを焼かなくてもいいと思うなぁ。もちはもち屋だよ!

オーベルジーヌ 小滝晃さん
パンはバゲットに限る。ひたち店ではシャンピニオン入り全粒粉パンが売れ筋だが、食事とは合わないと思うんだけど……。

ペリニィョン 明永正範さん
湿度が高い日本ではバゲットは正直むずかしい。パンをあたため直して提供する店が多いがあれは邪道。焼き立てならいいんだけどね。

ヴァンサン 城悦男さん
毎日11時に六本木の交差点に配達に来てくれるうまいパン屋があれば、繁盛するぞ!絶対!

ラ・ブランシュ 田代和久さん
パンは口の中に入れたときの粉のうまさを感じるものがいい。塩味や微妙な甘さとか……。

レディタン・ザ・トトキ 十時亨さん
和食のごはんが大事なように、フレンチはパンが大切。だからパンがだめな店はダメ。

カンテサンス 岸田周三さん
以前、パン屋さんで修業したこともあります。だからこそ、プロに任せたい気持ちが強い。フランスの味がするパンであることが大事です。

カピトリーノ 𠮷川敏明さん
日本の若いシェフの店では自分でパンを焼くのが流行っているようだが、イタリアではそんなことは稀。食事代100ユーロを超える店ぐらいだ。

本記事は雑誌料理王国2007年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2007年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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