巻頭の写真は先日、クリスマスのお菓子、パネットーネと一緒にプーリア州から編集部に送られてきた高さ3cmほどの小さな小さな家の置物。この写真を見て、すぐにプーリア州アルベロベッロのトゥルッリとわかる人はかなりのイタリア好きでしょう。この地方には、16世紀から17世紀にかけて作られた独特なとんがり形の屋根が特徴的な家屋が今でも1500件ほど残っていて、世界遺産に登録されています。同じく住居集落が世界遺産に登録されている白川郷・五箇山の合掌造り集落のある白川村と姉妹都市になっていることまで知っていたら、かなりのアルベロベッロ通ですね。
プーリア州はブーツの形のかかとの部分に当たる場所にあって、アドリア海とイオニア海に面しています。土地の高低差が少ないのでオリーブやトマト、小麦栽培が盛んで、イタリアの穀倉地帯とも呼ばれているとのこと。実はプーリア州は、イタリアで初めてワインが造られたところだと今回のイベントで伺いました。確かに地図で見るとギリシアがすぐ近く。ここからワインの造り方が伝わったと想像できます。
今回のイベントの主役、ALBEAワインは、1900年初頭に世界遺産のアルベロベッロに設立されたワイナリー「カンティーナ ムゼオ アルベア」で造られたもの。現在年間38万本を生産するワイナリーはすべて石造りで、ワインは岩に掘られたセラーに保管されています。ワインセラーの上にはワイン博物館が併設されているという立派なワイナリーです。イベントには、世界的に知られるワイン年鑑(ANNUARIO DEI MIGLIORI VINI ITALIANI)の創刊者で、イタリアワイン評論家のLuca Maroni(ルカ・マローニ)氏と、著名醸造家Mourad Ouada(ムラッド・オウアダ)氏が来日。大変興味深いアルベアワインの話を伺いました。ルカ氏は、ローマ生まれで、1988年から2021年にかけて約40万本のワインをテイスティングしたという人。「この人はイタリアワイン界ではとても有名な人」と彼の来日前に、アルポルトの片岡シェフから伺いました。
Lei biancoは、「彼女」という意味の名前がついた白ワイン。黒葡萄を入れる珍しいプロセスで造る。柔らかくて美味しい。高貴なワインのような味で、樽の香りがあってバランスの良いワイン。PETRANERAは、「黒い石」という意味の赤ワイン。口当たりの良さが特徴でしっかりした味。Solは、地中海から吹く風をメロディに例えて音符をデザインしたラベルがいい。果実味と酸のバランスが良く、どっしり感のある味。LUIは、「彼」という意味。プーリア州は南北に細長いので土地ごとに味に特性があって面白い。スパイシーでフル―ティ。バランスのとれたまろやかな味わいのワイン。そして最後に供されたCOMELUNAは、「月のような」という意味のワインで、栽培や刈り取り、熟成など、すべての工程が月齢に沿って造られているとのこと。古い味も酢のような酸の味もしない。タンニンで味が守られていて、アロマのバラエティが素晴らしい、究極の有機栽培のワイン。農薬や化学肥料を使わず、月の動きに合わせて収穫のスケジュールが組まれていて、伝統的なぶどう園を復活させて造っているそうです。僕はこのワインの味が一番印象に残りました。味わいが他のワインとだいぶ違います。ふくよかで複雑。まろやかで柔らかく奥深い。美味しかったです。
ルカ・マローニ氏の説明は、明快に次々に進められて、あっという間にデザートの時間に。料理はアルポルトの片岡護シェフ。片岡シェフの手書きのレシピとともに料理をみてみましょう。
片岡シェフの手描きのメニュー。ALBEAワインとのペアリングを十分楽しめました。
人参のムース、コンソメゼリー。
ポルチーニ茸とホタテ貝のソテー。
きのこのラグーソース、スパゲッティ秋トリュフ。
この段階でワイングラスがずらりと並び、壮観な眺め。
ルカ・マローニ氏の説明もだんだんとアルコールが入って熱を帯びてきました。
いのししと栗の煮込みパスタ。しっかり味のLUIにぴったりの濃厚な味。
黒毛和牛もも肉のタリアータ。有機栽培で、月齢に沿って栽培、収穫されたぶどうから造られたCOMELUNAの奥深い味わいにハマりました。
デザートの盛り合わせで終了です。
左が醸造家ムラッド氏、中央に批評家ルカ氏、右がワイナリー「カンティーナ ムゼオ アルベア」のディレクター、クラウディオ・シスト氏。最後まで終始賑やかに、美味しくいただきました。今度は、アルベロベッロのとんがり屋根を見ながら、地中海の風に吹かれて、現地でALBEAワインを味わいたいと思います。
カンティーナ ムゼオ アルベア、ALBEAのお問い合わせ
Orbis novus Corp.
電話 03-6432-6698