料理王国8月号の特集、「オーベルジュ進化系」。石川県小松市のオーベルジュ オーフの編集こぼれ話。


取材先で出会った誌面で紹介しきれなかった様々な事柄をお伝えする野々山の編集長日記。料理王国8月号の特集「オーベルジュ進化系」の6件の取材先から、スタッフが届けてくれた編集こぼれ話。まずは石川県小松市の「オーベルジュ オーフ」の取材から。ライターのつぐまたかこさんの便りが届きました! 金沢から車で1時間弱の里山の廃校をオーベルジュに。地方創生の未来を担う素敵な実例をご覧ください。

左から坂口さん、糸井シェフ、山本さん、小泉さん。食材探しに出ると1日に連絡がつかなくなる(電波が届かない)時間があるというスタッフたち。

里山の食材を使うオーベルジュのなかでも、糸井シェフの料理はなんだかちょっと違う。山菜や川魚を使っているのに、軽やかで瑞々しくて、フレッシュで。糸井シェフの頭の中を覗いてみたい!と思いながら取材をしていました。

厨房の入口に、3枚のワイルドな張り紙を見つけました。

「バカポジティブ Positive」「爆裂成長 Progress」「楽せず楽しめ!!enjoy 」。

まるで運動部の部室。かわいいじゃないですか。

その厨房には、大音量で音楽が流れています。JPOPだったり、HIPHOPだったり、ジャズだったりと、その日の気分によって違うそうなのですが、キッチンスタッフたちは、リズムに乗るようにキビキビと動き回っていました。会話の声も明るいし、笑顔もこぼれます。緊張感がある一方で、とても楽しそう。広報担当の赤地さん曰く「しっとりした音楽のときは、あぁそんな気分なんだな、と思っています。その日はきっと、何かあったんでしょう(笑)」。

この雰囲気だから、スタッフとのディスカッションも盛ん。新たな食材の組み合わせや味のバリエーション、盛り付けのイメージがどんどん湧いてくるのでしょう。

糸井シェフは、1日のうち何時間かは連絡がつかなくなるそうです。

スタッフと一緒に、食材探しに山に入るからだとか。山といっても、オーフから5分ほどの距離なのに、もう電波は届かないそうです。かと思えば、「そらへんに生えている」という小さな野草や校庭(オーフは廃校をコンバージョンしたオーベルジュ)のバックネット裏で大きく育っていたローリエをフレッシュ極まりない状態で使います。花壇…これも元は児童たちが花でも育てていたに違いない…で、ハーブを伸び伸びと育て、香りを嗅いでは満足そう。

そういえば、糸井シェフの料理はどれも、香りが印象的。メイン食材そのものの香りはもちろんですが、ハーブや野草、スパイスや柑橘…さまざまな香りがひと皿にけんかすることなく存在するのです。
もしかしたら、この場所、里山と同じなのかもしれません。森林や草や花、畑、土、水、焚き火に、ときに集落に漂うごはんの匂い…いろいろなものが共存しながら、どれも強く主張しない里山の香り。

そんなことを考えながら、シェフの料理に向き合ってみたけれど、それでも思いもよらない組み合わせで驚かされました。頭の中を、やっぱり覗いてみたいです。

厨房の入口にある、3枚のワイルドな張り紙。
食材探しは、オーフの近隣から。

text&photo: Takako Tsuguma, photo: Naoki Mizuno(外観&スタッフ)

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