数千年の歴史を誇るメキシコの食文化は、その奥深さゆえ世界遺産に登録されている。「テピート」の滝沢久美さんは、数ある豚料理の中から、南部ユカタン半島の郷土料理、コチニータ・ピビルを饗してくれた。現地では、祭りなどハレの日のごちそうとしても振る舞われるひと品だ。
伝統的な調理法では、バナナの葉に包んだ豚肉の塊を地中に埋めて蒸し上げるが、「テピート」では大きな鍋にバナナの葉を敷き、そこへ豚を入れて煮込む。使用するスパイス&ハーブは13種。アチョーテはベニノキ科の植物で、赤色の食用色素としても知られる。扁桃腺、皮膚炎などに使う薬用植物でもあり、独特の風味が付加される。メキシコのトウガラシ、グアヒージョは辛味がマイルドで香り豊か。どちらも、滝沢さんが中南米から調達している。
4時間煮込んだ肉は崩れるほどやわらかい。「何の肉ですか、と聞かれることもありますよ」と滝沢さん。メキシコの個性的なスパイスが新たな豚の旨さに出会わせてくれる。
材料
豚モモ肉…6㎏
アチョーテ…100ℊ
ニンニク…150ℊ
紫タマネギ…100ℊ
オレンジジュース…1/4カップ
バナナの葉、グァヒージョ、クローブ、ローレル、黒コショウ、タイム、オレガノ、クミン、カネラ(シナモン)、オレンジ、ソル(塩)…各適量
作り方
1.バナナの葉を敷きつめる。その中に炭酸水(分量外)とオレンジジュースを入れて熱する。
2.種をとったグァヒージョと、クローブ、水(分量外)をミキサーにかける。
3.1に、2と、ざく切りした豚モモ肉を入れる。さらに、薄切りした紫タマネギ、ニンニク、ローレル、黒コショウ、タイム、オレガノ、クミン、カネラ、皮ごと刻んだオレンジ、溶けやすいように切ったアチョーテを入れる。
4.3の鍋の中身をバナナの葉で覆って、さらに鍋に蓋をし、しばらく弱火で煮込んでからソルを入れる。
5.4時間程度煮込み、1日ねかせてから提供する。好みで、豆の塩煮、チキンスープで煮たライス、トルティージャなどを付け合わせにする。
滝沢久美さん
Kumi Takizawa
広島県出身。メキシコ人の音楽家と結婚後、メキシコ料理のコーディネーターとして活躍。2006年、週末限定でメキシコの音楽と料理を楽しむ店「テピート」を東北沢にオープンし、08年に現在地に移転した。今秋移転予定。
テピート/Tepito
東京都世田谷区北沢2-34-8 KMビル3階
TEL 03-3460-1077
● 18:00~23:00(22:30LO)
●月火休
●コース2500円~ アラカルト700円~
●24席
www.tepito.jp
料理王国=取材・文 依田佳子=撮影
本記事は雑誌料理王国2015年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2015年7月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。