東京・千石で12年営業を続ける「ヴォーロ・コズィ」の西口大輔さんは言う。「新しいパスタはなかなか生まれないもの。そのため、時代に則した多少の変化は必要でも、伝統的な技法、素材の組み立ての軸を守り、作り続けることが大切です」。
「ポレンタとタレッジョチーズのラヴィオリ」も、西口さんが21年間作り続けてきたメニュー。元はミラノの「サドレル」で学んだレシピだ。
「華やかな料理が多い前菜やメインに対し、パスタは前菜やメインで使う素材をうまく活用する料理です」たとえば、前菜やメインの調理過程で出る生ハムや魚、肉などの端材は捨てず、パスタの詰め物にする。ラヴィオリに詰めるポレンタも同様。一度に大量生産する必要があるポレンタだが、メイン食材にはならないため、詰め物として活用することが多いという。
「華やかな料理が多い前菜やメインに対し、パスタは前菜やメインで使う素材をうまく活用する料理です」たとえば、前菜やメインの調理過程で出る生ハムや魚、肉などの端材は捨てず、パスタの詰め物にする。ラヴィオリに詰めるポレンタも同様。一度に大量生産する必要があるポレンタだが、メイン食材にはならないため、詰め物として活用することが多いという。
また「プリモ・ピアットは粉を食すカテゴリー」と言うように、パスタの素材にも気を遣う。西口さんが使用するのは、カプート社のパスタフレスカ・エ・ニョッキとセモラ・リマチナータ(二度挽きセモリナ粉)、そして青森・田子町産の卵。粉は食感をなめらかにし、喉越しのよい仕上がりになるものを、卵は旨味とコクが強いものをそれぞれ選ぶ。さらに全卵にプラスして卵黄を多く使うことで、旨味やコク、甘味を増幅させ、コシがしっかりと出るように配合する。
一方で昨今の健康ブームの流れから、仕上がりが軽くなるよう生地は手のひらが透けるほど薄く伸ばす。バターの分量も以前より減らすなど、時代に合わせ進化させている。
北イタリアの伝統的な料理を発信していくうえで大切にしているのは、イタリアとのつながりを絶やさないこと。今でも年に一度はイタリアを訪れ、修業時代の師匠や同僚とも頻繁にテレビ電話で連絡を取り合っているのだという。
ポレンタとタレッジョチーズのラヴィオリ
乾燥ポレンタを牛乳で炊き、塩で調味。薄く伸ばした生地の上にポレンタとタレッジョチーズを乗せ、ラヴィオリの型で抜く。バターはゆで汁で溶かすイメージでゆっくりと加熱し、ラヴィオリと絡める。
「皿としてのまとまり、統一感が大切」なため、パスタはすべて西口さんが作る。プリモ・ピアットは粉を食べさせるカテゴリーとの考えから、小麦粉、セモリナ粉は厳選。基本のソースはシンプルだが、季節でトリュフやポルチーニなどを飾り、都会的なひと皿に仕上げることも。
卵はコクと旨味の強い青森・田子町産を使用。粉はカプート社のパスタフレスカ・エ・ニョッキと二度挽きセモリナ粉を配合し、つるりとした食感、なめらかな舌触り、そして喉越しのよさを表現する。
生地は仕込んでから真空保存する。生地を薄く伸ばすのは、昨今の健康志向の流れを受け、軽めに仕上げるため。生地の半分に詰め物を並べ、もう半分をかぶせるようにたたみ、型で抜く。ゆでムラが生じないよう、詰め物の外側の厚さをひとつひとつ手で押さえ、厚さを均一にする。
粉の旨味が溶け出したパスタのゆで汁は調味料として活用。バターは沸騰しないようゆっくりと加熱させ、ゆで汁で溶かしながら乳化させる。
1969年東京都生まれ。フランス料理から始まり、東京・西麻布の「カピトリーノ」でイタリア料理に転向。イタリアではヴェネツィアなどのリストランテを経て、ミラノ「サドレル」でパスタ・シェフに就任。1996年東京・代々木上原「ヴォナヴィータ」でシェフを務め、2000年に再度渡伊。ロンバルディアで経験を積み、2006年に白山で「ヴォーロ・コズィ」を開業。
ヴォーロ・コズィ
Volo Cosi
東京都文京区白山4-37-22
☎03-5319-3351
● 12:00~15:30(13:00LO)
18:00~23:00(20:00LO)
● 月休(ランチタイムは火休)
● コース 昼3800円~、夜7000円~( サービス料別)
● 20席
http://volocosi.com
本記事は雑誌料理王国288号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は288号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。