地下鉄神谷町駅からすぐ、桜田通りを折れたゆるやかな坂の途中に、イタリアンレストラン「ダ オルモ」はオープンした。オーナーの北村征博さんと原品真一さんは、新宿のうまい熟成肉の名店と評判をとった「ブリッコラ」の看板だった。
「オルモ」とは「ケヤキ」の意。ケヤキのように力強く根を張り、四季を映しながら人々が集う店でありたいとの願いが込められた。
「ダ オルモ」のメニューは、北イタリアの郷土料理を軸として、日本の旬の食材を生かす構成。シェフの北村さんは、熟成肉を用いたパンチのある料理で肉好きを魅了した人だ。サービスを担当する原品さんは、無休で深夜営業をする70席以上の店内を仕切ってきた。ふたりの中で「ブリッコラ」が完成形となるのを待って、〝卒業〞を決めた。
「ホッとするイタリアの家庭の味にこだわる点は、今までと同じ」と北村さん。自慢のひと皿に選んだのが、パン団子のような「カネーデルリ プレサーティ」。しっとり感とモチモチ感がほどよいバランスで、初めて口にした時の印象は、「お好み焼きのチーズ玉に似て懐かしい味だった」。仕上げにこがしバターをかけると、バルミジャーノに火が入って泡立つ。この熱々の感じもお好み焼きを連想させる楽しい料理だ。
これまでのスタイルを踏襲するいっぽう、今まで以上に力を入れたいこともある。より多くの生産者と関わりながら、料理に季節感を出していくことだ。優れた食材と食材が出会うと、旨みを何倍にもする相乗効果が出る。北村さんが熱心に生産者を訪ねるのは、食の原点に触れ、創作のヒントを得るためでもある。
「お客様の要望を素早く察して、それに応えること」をモットーとする原品さん。そのこだわりは、ウォークインのワインセラーに象徴される。オープン前から200種400本のワインを用意。600本はストックできる広さだ。「誰もが気軽に通える店にしたい」と、4000〜5000円のワインを多く揃えるが、シェフの料理を最高の状態で味わってもらうために、ボトル売りよりもグラス売りを中心に考えている。
「ワインの予算が決まっていたら、声をかけていただきたいです」
かりに2人で4000円だとして、ボトルでは1種類のワインしか飲めないが、グラスなら料理の流れに沿って、軽めのものから重いものまで、いろいろと案内してもらえる。
食材の出会いによる相乗効果を狙う北村さんに対し、原品さんは料理とワインのコラボに重きをおく。
この「相乗効果」はふたりが共有するテーマで、開店に伴って興した株式会社名「シネルジーア」は、イタリア語で「相乗効果」を意味する。この日、北村さんがメインに選んだのは、「中勢以の熟成肉の炭火焼きと川田農園の野菜のソテー」。2カ月以上熟成させた牛肉にはほどよい弾力があり、噛めば噛むほど旨みが広がる。香り豊かな野菜と一緒だと、たしかに旨さに「相乗効果」が出る。しかし、もっとも大きな効果が期待できるは、北村さんと原品さん、一流の仕事人が力を合わせて生み出す相乗効果に違いない。
半日ほど乾燥させた自家製パンに数種類のチーズとポロネギ、玉ネギ、キャベツやタマゴなどを混ぜたものを整形し、焼き上げた後に蒸して完成した「カネーデルリ プレサーティ」。付け合せにはビネガーの酸味が利いた「キャベツとクルミのサラダ」がよく合う。
材料
ポロネギ…2g /タマネギ…2g /イタリアンパセリ…0.5g /キャベツ…1g /卵(溶いたもの)…5g /自家製パン…30g /ゴルゴンゾーラピカンテ…5g /ゴルゴンゾーラドルチェ…15g /ブラウケーゼ…10g /セモリナ粉、サラダ油、パセリ、パルミジャーノ・レッジャーノ、こがしバター、塩、コショウ…各適量
付け合わせ
キャベツ、クミン、白ワインビネガー、サラダ油、塩…各適量
作り方
ダ オルモ
DA OLMO
東京都港区虎ノ門5-3-9 ZELKOVA5 101
03-6432-4073
● 日祝休
● 24席
http://www.da-olmo.com/
星野泰孝=写真
本記事は雑誌料理王国第219号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第219号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。