フランス料理と批評の歴史
八木尚子 著 中央公論新社 2310円
本書は美食批評家たちの目線で見た、フランス料理の歴史書だ。歴史解説や料理人の伝記とはまったく異なる視点から、フランス料理の歩みを読み解く、めずらしい一冊である。
著者は辻静雄料理教育研究所の研究主幹。批評家たちを「ペンを片手に食を多角的、分析的に考察した」ガストロノーム(美食家)と位置づけ、フランスの「美食文化、すなわちガストロノミーの発展に寄与した」と評価する。
アントナン・カレームからブリア・サヴァラン、『ミシュラン』の現在まで、時に批評家たちの人生に迫りながら丹念に追いかける。とくに、料理人の巨匠カレームを、ガストロノームの先駆けとして再検証する章は秀逸。彼が執筆した数々の料理書と生き様にふれ、その功績を繙くくだりはスリリングでさえある。彼と同時代のグリモ・ド・ラ・レニエールの章ではまた違ったフランス料理の姿が現れ、さらに深い知見を得られるだろう。
料理人も批評家も、フランス料理を愛するすべての人にすすめたい。
ピエール・リエナール、フランソワ・デュトゥ、クレール・オーゲル 共著
大森由紀子 監修
塩谷祐人 訳 白水社 2310円
パリの老舗パティスリー「ストレール」の創業者ニコラ・ストレールは、ルイ15世専属の“王のパティシエ”として名を馳せた。本書はその店に残る膨大な史料を、創業者ニコラの日記体でまとめたもの。激動の18世紀パリの息吹や、ニコラの箴言、当時のレシピの数々が鮮やかに蘇る。
重金敦之 著
左右社 1890円
「週刊朝日」編集部時代、松本清張ら多くの作家を担当した文芸ジャーナリストの重金敦之氏が、作家と食の思い出を回顧する。懐かしきよき思い出の中にも、作家の生い立ちや癖を見抜く筆勢は氏ならでは。食にも造詣が深く、料理業界への温かなまなざしと澄んだ批評精神が清々しい。
飯沢耕太郎 編著
港の人 2730円
写真評論家であり無類のキノコ愛好家である飯沢耕太郎氏のキノコ文学選集。いしいしんじや宮沢賢治ら、作家や詩人の描く魅惑のキノコ作品がひしめき合う。装丁は、キノコ好きの祖父江慎氏が手がけた限定特装版。明日からキノコを見る目が変わる、めくるめくキノコの世界へいざ。
池田 弘 著
ウイネット出版 1260円
教育機関の運営や起業支援などを行うNSGグループの代表で、サッカーチームのアルビレックス新潟会長による起業指南書。自身が支援する若手起業家6人の例と、彼の人生経験が養った起業家精神を力強く伝える。地方都市再生や幸福実現といった起業家必見のキーワード満載の一冊。
西三荘ノリこ・文/選
本記事は雑誌料理王国200号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は200号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。