今回は、そんなジラルデ氏のスペシャリテ、「クロワゼ種の鴨のコンフィ」の作り方を教えていただいた。
クロワゼ種は、マガモの雌とアヒル(採卵用のカーキーキャンベル種)の雄の交配種で、マガモのしっかりとした赤身の旨味と香りに柔らかさが加わっている。北村シェフは、ジラルデで使っていたのと同じ、このクロワゼ種を使用。
クーリ・ド・アンディーブ(アンディーブをペイザンヌに切ってライムジュースと塩胡椒、少量の砂糖を加えてソテー、最後にバターを加えたもの)を敷き、その上に鴨をのせる。上には、ライムの果肉と湯通しして苦味をとったライムの皮のジュリエンヌ(細切り)を添える。サイドにはセルクルで形作ったグリーンサラダと、グランターブルキタムラのシグネチャーでもある、薔薇の形に切った色とりどりのじゃがいもを飾る。
古典ではオレンジのソース、最近では赤い色素を持つベリー類やビーツなどと合わせることも多い鴨だが、ライムの軽快でありつつフルーティーなバランスが心地よい仕上がり。
「タイユヴァンでは、骨は焼かずに、ブランシールして使う。ロブションさんはフォンに仔牛の脚を入れるとか、それぞれに特徴があるんですが、ジラルデさんのソースの味の決め手は、デグラッセの際に贅沢に使う白ポルト。常に『ソースをもっと丸めなさい』と。ジラルデさんの味覚は抜群で、意表をつく組み合わせも美味しく仕上げる。ソワニエがきた時には、鍋にあるソースを2つ3つパッと調合して、新しくソースを作る。そんなところも、すごいなと思っていました」。
シャープで尖った味ではなく、やや甘めの優しい味で、雑味が全くない。「ジャマン」「ジラルデ」での先輩にあたる、「モナリザ」の河野透シェフも「飲めるソース」と絶賛したという。
「雑味を出さないために、短時間でパッセする。食材の綺麗な味のところを使うイメージです。冷やして取り除いた表面の脂を別の器にとっておいて、ソースの風味が足りない時に足したり、野菜のブイヨンを使ったりして味を調整します。オマールを調理する際のムイエですとか、野菜のブイヨンは、とにかくよく使いました。もちろん、うちもそうしています」