ジラルデ氏から受継いだスペシャリテ「鴨のコンフィ」


スペシャリテ「クロワゼ種の鴨のコンフィ」の作り方

今回は、そんなジラルデ氏のスペシャリテ、「クロワゼ種の鴨のコンフィ」の作り方を教えていただいた。

「クロワゼ種の鴨のコンフィ」の食材
「クロワゼ種の鴨のコンフィ」の食材

クロワゼ種は、マガモの雌とアヒル(採卵用のカーキーキャンベル種)の雄の交配種で、マガモのしっかりとした赤身の旨味と香りに柔らかさが加わっている。北村シェフは、ジラルデで使っていたのと同じ、このクロワゼ種を使用。

油を敷いたフライパンに鴨を入れ、中火で15分ほど焼く。

同じフライパンに、鴨の首ツルと玉ねぎや人参、セロリなどのミルポワとライムの皮を加え、焦がさないように焼く。

余分な脂を取り除き、野菜のブイヨンと鴨フォン(鴨の骨を焼いてミルポワを入れ、煮出したものに少量のフォンドボーを加えたもの)を加える。

時々キュイソン を表面にかけながら焼いていく。

照りが出てきたらオーブンへ。焦がさないように気をつけ、途中で15分に一度位、キュイソンをかけながら、合計40分程ほどじっくりと火を通してゆく。オーブンの最後の5分10分は乾燥させて、膜を張るようなイメージで皮目をパリッと焼き上げる。煮詰まってきたら、野菜のブイヨンを加えて濃度を調節する。

フライパンでバターを溶かし、刻んだニンニク、パセリ、タイムを加える。焼き上がった鴨の表面にかける。

ジラルデさんからもらったサイン入りのオリジナルの皿に盛り付ける。

ジラルデさんからもらったサイン入りのオリジナルの皿への盛り付け。

クーリ・ド・アンディーブ(アンディーブをペイザンヌに切ってライムジュースと塩胡椒、少量の砂糖を加えてソテー、最後にバターを加えたもの)を敷き、その上に鴨をのせる。上には、ライムの果肉と湯通しして苦味をとったライムの皮のジュリエンヌ(細切り)を添える。サイドにはセルクルで形作ったグリーンサラダと、グランターブルキタムラのシグネチャーでもある、薔薇の形に切った色とりどりのじゃがいもを飾る。

「クロワゼ種の鴨のコンフィ」の一皿。
「クロワゼ種の鴨のコンフィ」の一皿

古典ではオレンジのソース、最近では赤い色素を持つベリー類やビーツなどと合わせることも多い鴨だが、ライムの軽快でありつつフルーティーなバランスが心地よい仕上がり。

ジラルデ氏のソース、味の決め手

「タイユヴァンでは、骨は焼かずに、ブランシールして使う。ロブションさんはフォンに仔牛の脚を入れるとか、それぞれに特徴があるんですが、ジラルデさんのソースの味の決め手は、デグラッセの際に贅沢に使う白ポルト。常に『ソースをもっと丸めなさい』と。ジラルデさんの味覚は抜群で、意表をつく組み合わせも美味しく仕上げる。ソワニエがきた時には、鍋にあるソースを2つ3つパッと調合して、新しくソースを作る。そんなところも、すごいなと思っていました」。

シャープで尖った味ではなく、やや甘めの優しい味で、雑味が全くない。「ジャマン」「ジラルデ」での先輩にあたる、「モナリザ」の河野透シェフも「飲めるソース」と絶賛したという。

「雑味を出さないために、短時間でパッセする。食材の綺麗な味のところを使うイメージです。冷やして取り除いた表面の脂を別の器にとっておいて、ソースの風味が足りない時に足したり、野菜のブイヨンを使ったりして味を調整します。オマールを調理する際のムイエですとか、野菜のブイヨンは、とにかくよく使いました。もちろん、うちもそうしています」

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