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中国料理の新世代 気鋭の若手料理人に学ぶ「技ありのひと皿」【ジャスミン 憶江南】山口さん


中国料理というジャンルに対して、固定観念を持っていないだろうか?
画一的なイメージを持っていないだろうか?歴史が古く、奥深い世界である一方、ここ数年、個性ある料理人が自由な発想で営む中国料理店が登場している。そんな中国料理の"新世代"ともいえる若手料理人たちに話を聞いた。

幼い頃から中国料理に夢中
惚れ込んだ江南料理で勝負

ジャスミン 憶江南 山口祐介さん

中目黒駅から徒歩10分の閑静な住宅街に、昨年3月、広尾「中華香彩ジャスミン」の姉妹店「ジャスミン憶江南」がオープンした。馴染みの中国料理を提供する広尾店とは趣が異なる、中国江南地方の料理を標榜する店だ。

奥様との出会いがきっかけで江南料理に傾倒

江南地方とは揚子江下流域の南側一帯で蘇州、杭州を擁する。日本に似た四季もあり、揚子江の支流が網の目のように流れる水郷地帯。その豊かな土壌から「魚米の郷」とも呼ばれる。国際都市・上海もこの地域にあり、北京、広東、上海、四川の4つに大別される中国料理の上海料理は、この江南料理に属する。
「江南料理と聞いて、ピンと来る日本人はたぶんいないと思うんです。でも、思い切ってやりました」とは、総料理長の山口祐介さん。

幼い頃から中国料理に興味があった山口さんは、16歳で調理師専門学校に入学。卒業後は都内の中国料理店やホテルで修業し、香港、上海、杭州、北京など中国各地のホテルで知識を深めた。そんな山口さんが江南料理に傾倒するきっかけが、上海出身の奥様との出会いだった。
「上海で家庭料理や地元の素朴な料理を食べたときに、しみじみおいしいと感じたんです。ちょっと油っぽくて、甘辛い醤油味。肉ジャガを甘くこってりしたような味です」

中目黒の店は、「僕のやりたい料理」を打ち出した。広尾店では実現できなかった江南料理をメインに据えたのだ。しかし、名物は四川料理の「よだれ鶏」だ。
「20歳の時、北京の四川料理屋さんで食べて感動し、これを日本でやったら流行る、と10年かけて試作を続け、やっと納得できたものです」
17種類の香辛料を油に移した自家製ラー油と黒酢ベースのタレが鶏に絡み、まさに「よだれが出るほどおいしい」ひと皿になっている。


修業時代、中国語学校に通って中国語を習得した。中国語で書かれた辞書のような分厚い料理本を参考にすることも多い。

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