食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

温故知新の甘味処ガイド


昔ながらの味を守り続ける老舗から、先人の知恵を生かしつつ、独自の味を追求する気鋭店まで、今、訪ねたい新旧の甘味処7軒を、その代表的な甘味とともに紹介する。

【東京・神田】竹むら

風情あふれる戦前の日本家屋で80年前から変わらない汁粉を

こしあんを用いるこちらの「御ぜんしるこ」のほか、つぶしあんを用いる「田舎しるこ」もある

神田須田町に、戦災を免れて昭和初期の面影をいまだ残すレトロな一角がある。昭和5年創業の汁粉屋「竹むら」は、このエリアで「かんだやぶそば」などとともに、古い建築と昔ながらの味を大切に守り続けてきた老舗であり、作家・池波正太郎にこよなく愛されたことでも知られる。「揚まんじゅう」や「あわぜんざい」など、根強い人気を誇るメニューはいろいろあるが、やはりまずは定番中の定番「御ぜんしるこ」を。こしあんのなんときめ細かいこと。あんこは小豆を煮るところからすべて自家製造。小豆に対する砂糖の割合など、レシピは創業時から一切変わっていないという。脈々と受け継がれてきた味を求めて、今日も暖簾をくぐるお客は引きも切らない。

竹むら
東京都千代田区神田須田町1-19
03-3251-2328

【神奈川・鵠沼海岸】埜庵(のあん)

天下一品の天然かき氷を求めて全国から一年中人々が訪れる

一番人気の「いちごミルク」。完熟イチゴをミキサーにかけて作る天然シロップには、イチゴのツブツブが残っており、祭りの屋台でよく見るピンクの人工シロップとはまったくの別物。

一度口にすれば、かき氷の既成概念を覆されること必至。山の湧き水を自然に凍らせた天然氷と、フレッシュな果実味たっぷりの自家製シロップが織りなすかき氷の完成度の高さは、2005年のオープン後ほどなく評判を呼び、夏ともなると、毎年全国から押し寄せる人々で店の前には連日大行列ができる。「でも僕が一番こだわっているのは、夏だけでなく一年中営業しているかき氷専門店であるということ。夏と冬では氷の温度も削り方も変えるし、シロップの濃度や粘度も変えます」とは店主の石附浩太郎さん。夏はさっぱり爽やかさを、冬はふんわりまろやかさを出すという変幻自在の職人技には驚くばかり。季節ごとのシロップと氷の食感を楽しみに通い詰めたい店である。

埜庵
神奈川県藤沢市鵠沼海岸3-5-11
0466-33-2500

【神奈川・鎌倉】由比ガ浜 こ寿々

ぷるぷるの弾力は特筆もの。稀少な本わらび粉使用のわらび餅

なんともみずみずしく涼やかな「わらび餅」。独特の弾力ととろけるような食感には、誰もが驚くはず。

鎌倉・鶴岡八幡宮近くの手打ちそば店「段葛 こ寿々」で、ちょっと食後の口直しにと提供していたわらび餅が大評判になり、分店である甘味処ができたのは1998年のこと。看板メニューの「わらび餅」は、今やすっかり鎌倉名物となっている。昨今のわらび餅のほとんどには、生産加工に膨大な手間がかかる本わらび粉ではなく、イモのでんぷん粉が代用されているが、こちらではあくまで本わらび粉を原料としているのが特徴だ。しっかりした弾力と歯応えは、本わらび粉ならではのもの。波照間島産の黒糖を使った黒蜜も手作り。きな粉は国産大豆使用。ひんやりぷるぷるのわらび餅に、黒蜜ときな粉をたっぷりかけていただけば、口の中に至福が広がる。

由比ガ浜 こ寿々
神奈川県鎌倉市由比ガ浜1-1-9
0467-23-1192

【東京・向島】言問団子

隅田川のほとりに佇む老舗団子店の変わらぬ味

〝小豆〟は十勝産ふじむらさき小豆、〝白〟は十勝産手亡豆、〝青梅〟は白あんに京都産の白味噌、新潟産の赤味噌をブレンドしたあんを使用。

丹念に煮上げたエンドウ豆がおいしさの決め手。至福の豆かん法への探究心は人一倍。宇治シロップの抹茶も、軽食として人気のきしめんのだしも、築地の決まった店で購入する。頑固なこだわりの反面、お客の注文には柔軟に応える。求肥や白玉など追加トッピングができるのも、そんな心づかいの表れだ。夏は30種類近くのかき氷、水羊かん、くず桜など、涼をとれる限定メニューも豊富だ。

言問団子
東京都墨田区向島5-5-22
03-3622-0081

【東京・門前仲町】甘味処 いり江

選び抜いた材料と惜しまぬ手間。その名のとおり贅沢なあんみつ

皮がはじけないように、朝から昼過ぎまでとろ火でゆ っくり煮上げたエンドウ豆が黒く輝く「白玉クリーム豆かん」

池上本門寺を中心にした寺町に2003年オープン。主人の荒井重臣さんは、食べ歩きと独学を重ね、オープン後の数年はお客の声を聞きながら、試行錯誤で自分なりの味に行き着いた。いいと聞いた小豆を次々と使い、理想のあん作りに努め、そうしてでき上がったのが、渋切りしなくても澄んだ味わいに炊き上がる「とよみ大納言」の粒あん、しっとりと柔らかな「えりも小豆」のこしあんだ。どちらも糖度は同じだというが、味わいはまるで違う。注文を受けてからゆでるまん丸の白玉、毎朝炊く十勝産エンドウ豆、八重山産黒糖とハチミツで作る黒蜜、水羊かんに使われるクセのない寒天。丁寧な仕事ででき上がる品々を、丁寧に味わいたくなる店だ。

甘味処 いり江
東京都江東区門前仲町2-6-6
03-3643-1760

【東京・池上】甘味あらい

選び抜いた材料と惜しまぬ手間。その名のとおり贅沢なあんみつ

お客の「粒あん、こしあんどちらも入れてほしい」との声から生まれた「贅沢あんみつ」

東京にいながら、京風の甘味が食べられるのが同店だ。京都の和菓子職人のもとで修業したオーナーが、一番食べてもらいたいのが「あんこ」。手に入りにくい丹波大納言“春日”を、半分以上は煮くずれないようにふっくら炊き上げている。あんみつ、パフェ、手作り最中。あんこを存分に味わえるメニューが豊富な一方、この店の隠れた逸品と言えるのは「本葛きり」だ。注文が入ってから、葛切り鍋で1人前ずつ作り、氷を浮かべた葛切り椀で供する。添えられた黒蜜は、沖縄産よりアクが少ない徳之島産の黒糖を煮詰めた、さらっとあっさりタイプ。さくらパフェ、冬あんみつなど四季限定のメニューや、約20種類の釜飯も人気が高い。

甘味あらい
東京都大田区池上1-35-24
03-5875-7273

【東京・錦糸町】北斎茶房

江戸で味わう、京の涼。喉越しを楽しむ葛切り

本葛を葛切り鍋に入れて、熱湯で湯煎し、頃合いを見計らって湯に通し、水にさらす。でき立ての葛切りの歯ざわり、喉越しは最高だ。

東京にいながら、京風の甘味が食べられるのが同店だ。京都の和菓子職人のもとで修業したオーナーが、一番食べてもらいたいのが「あんこ」。手に入りにくい丹波大納言“春日”を、半分以上は煮くずれないようにふっくら炊き上げている。あんみつ、パフェ、手作り最中。あんこを存分に味わえるメニューが豊富な一方、この店の隠れた逸品と言えるのは「本葛きり」だ。注文が入ってから、葛切り鍋で1人前ずつ作り、氷を浮かべた葛切り椀で供する。添えられた黒蜜は、沖縄産よりアクが少ない徳之島産の黒糖を煮詰めた、さらっとあっさりタイプ。さくらパフェ、冬あんみつなど四季限定のメニューや、約20種類の釜飯も人気が高い。

北斎茶房
東京都墨田区亀沢4-8-5
03-5610-5331

松田亜希子・文/構成 松野玲子・文 山家 学・写真

本記事は雑誌料理王国2011年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2011年8月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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