食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

参考にすべき、アフターコロナを見据えたバンコク飲食業界の取り組み。


バンコクの非常事態宣言発表から、5月15日現在で1ヶ月半が経過。段階的に制限解除が行なわれているものの、引き続き夜間外出禁止など厳しい措置が継続中だ。

そんな中、食へのプライオリティが高いタイの人々にとって心躍るプロジェクト「#keeprolling」が3月末から実施された。

このプロジェクトは、タイで30店舗以上を展開するロールケーキで有名な和スイーツカフェ「Kyo Roll En」のオーナーパティシエであるDej Kewkacha氏の発案によるもの。彼と親交の深い4人のトップシェフが集まり、週替わりで1日50本限定のコラボロールケーキを販売するというものだ。閉鎖中のレストランの雇用や、卸先を失った生産者の支援のために立ち上げられた。

生産者からシェフ、消費者へと続く食の循環を願った「#keeprolling project」。

● 第1週:Gaggan Anand氏とのコラボによる“PICK IT UP”ロールケーキ。「Gaggan」のシグネチャー“Lick it Up”から着想した柚子とマンゴーのチーズケーキ。
● 第2週:「LE DU」のTonシェフとのコラボによる“Chocky Jack”ミルクレープロールケーキ。チェンマイのチョコレートとジャックフルーツを使用。
● 第3週:「Suhring」のズーリング兄弟とのコラボによる“Black Forest”ロールケーキ。ドイツの伝統的なシュバルツヴェルダーキルシュトルテをアレンジ。
● 第4週:「SORN」のSupaksornシェフとのコラボによる“Cocorice”ロールケーキ。タイ南部のココナッツと米を使用。

最終週の「SORN」とのコラボ “CocoRice” ロールケーキ。レストランが縮小営業を余儀なくされ、卸先を失った生産者支援のために100%ローカル食材で作られた。

 このように、ミシュランやAsia’s BEST50にも選出されたトップシェフの錚々たる顔ぶれ。どのコラボレーションも個性的で興味深いものになっている。 その全てをまとめ上げているのがDej氏。彼はセントラルエンバシーにタイで初めての“Omakase”デザートバー「Kyo Bar」をオープン。繊細でアーティスティックなデザートが評判だ。

「僕らは飲食業の経営者として、残されたスタッフたちの雇用を守るためにも意義のある企画を考えたいと思った。各シェフたちとはWeb会議やLINEなどを通じてレシピを組み立てていったんだ」(Dej氏)。

 リリースまでわずか10日という驚きのスピードで実現した「#keeprolling」。毎日SNSと電話での受付開始後、即完売。デリバリーのみの形態にも関わらず、ファインダイニングで味わう高揚感を与えてくれる素晴らしいプロジェクトだった。

 さらに、アフターコロナの世界を見据えてシェフたちによる生産者の支援プロジェクトも続々と登場している。前述「#keeprolling」にも参加していた「SORN」のSupaksornシェフが、ローカル農家の支援「#savethaifarmers」に乗り出した。

 彼が経営するレストランのスタッフが、直接農場に出向いて農作物をバンコクまで運び、店舗で直売を行なっている。「タイの農民は私たちの食物循環において重要でありながら忘れられている存在だ。今年の売上からの資金がなければ、彼らは来年の生産ができない。彼らの作る食材がなければ、僕たちシェフは料理をすることさえできない。生産者、料理人、消費者の全員が協力し、この食物循環を止めないために自分ができることを続けていくべき。そのために自分の役割を果たしたいと思っているんだ」(Supaksorn氏)。

Supaksornシェフがインスタグラムで呼びかけた「#savethaifarmers」のビジュアル。彼が経営する「Baan Ice」店頭で農産物の直売をする他、デリバリーの利用客には無料配布も行なっている

宮崎麻実
2019年よりバンコク在住のエディター兼ビデオグラファー。写真と動画でバンコクの最新トレンドを伝えるビジュアルシティガイド「dii bangkok」をスタート。


本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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