名著『荒田西洋料理』を著したフランス料理界の巨匠、荒田勇作。東シェフはその「最後の弟子」だ。「師から継承した伝統的な味わいを大切にしたい」と語る言葉通り、東シェフのひと皿は、ロゼ色に火を入れた野ガモ(コルヴェール)を定番のサルミソースでいただく王道の絶品だ。
「エゾシカは地元の北海道から送られます。ジビエの一番の留意点は、仕入れ先との信頼関係の構築です」
他の食材は、信頼のおける株式会社ノーザンエクスプレスから仕入れる。そして、手にいれた食材を愛情込めて扱う。この心構えと技が皿に〝命〞を吹き込むのだ。野ガモは骨付きのまま焼き色をつけ、香ばしい香りを引き立たせる。野鳥のガラからとるサルミソースは、血でつなぐ場合が多いが、東さんは血を使わずにレバーと心臓を細かく砕いて入れた。これならば、血の風味に慣れていない人にも、ジビエならではの旨さが受け入れられる。この2月に目黒にオープンした東シェフの新店のジビエシーズンは、風格あるこのひと皿で幕開けした。
皮目は香ばしく、中はロゼ色も美しいア・ポワン(ミディアム)に焼いた野ガモのムネ肉は、野ガモのレバーと心臓が入った野性味香るサルミソースでいただく。付け合せのフライドポテトもよく合う。キノコは、銀座店のキノコに詳しいシェフが山に入り採ってきた天然もの。ジビエの王道が味わえるひと皿だ。
材料(1人分)
野カモ…1/2羽/ミルポワ…少々/サラダオイル…20㏄程度/フォン・ド・ヴォー…50㏄/フォンブラン…150㏄/赤ポルトワイン…50㏄/赤ワイン…150㏄/バター…20g
◦付け合せ(適宜)
サラダ、ジャガイモ、天然キノコ…各適量/シシトウ…2本
作り方
1.カモは羽を取り除き、うぶ毛をガスで軽く焼く。
2.カモは2つ割りにして内臓も2つに分ける。
3.カモ1/2を骨付きのまま焼き色を付ける。骨をはずしてこまかく砕く。
4.手鍋にサラダオイルをひき、骨を色がつくまで炒める。ミルポワを入れてしんなりしたら、赤ポルトワイン、赤ワインを入れて煮つめる。さらにフォン・ド・ヴォーとフォンブランを加えて煮つめる。
5.適量になったら漉しておく。
6.焼き色を付けたムネ肉とモモ肉、砂肝はオーブンで火を入れる。ムネ肉はミディアムレア、モモ肉と砂肝は完全に火を入れる。
7.5の漉したソースは火にかけ、濃度、味をととのえてバターでモンテし、最後にレバーと心臓を細かく砕いてリエする。このとき、絶対に沸騰させないこと。
8.モモ肉はサラダと一緒に盛り付け、ムネ肉と砂肝はアシィエット(皿)に付け合わせの野菜(ここではジャガイモ、天然キノコ、シシトウ)とともに盛り付け、7のソースを添える。
野鴨は下処理して2つ割りにする。骨(写真:左)は、こまかく砕き、サラダオイルをひいた手鍋で色づくまでしっかりと炒める。ミルボワ(写真:右)を入れてしんなりするまで炒める。
骨とミルボワを炒めた手鍋に赤ワインを入れて煮詰める。ここで赤ワインの3分の1の割合の赤ポルトワインを入れる。これで甘さとコクが増す。さらにフォン・ド・ヴォーとフォン・ブランを加え、味に深みを加える。
適量に煮詰めたサルミソース。このあと濾して、ローストした胸肉を皿に盛るときにソースを温め、バターでモンテしたら、最後にレバーと心臓を細かく砕いて入れる。このとき、絶対に沸騰させないことが肝心だそうだ。
1954年、北海道中富良野生まれ。東京・内幸町の「キャッスル」で荒田勇作氏の教えを受け、その後渡欧。バーゼルの「ホテル・インターナショナル」やパリの三ツ星レストランで研鑽を積む。2004年、「シェ・アズマ」をオープン。14年に「ブジョン・プロヴァンサル」を開く。銀座でも「ブション・ドール・リヨン」を開いている。
ブション・プロヴァンサル
Bouchon Provencal
東京都目黒区中目黒3-12-19 幸來路ビル2F
☎03-6452-4709
● 11:30~13:30LO、17:30~23:00LO(日祝21:00LO)
●月休
●コ ース、アラカルトあり。
コース 昼900円~、夜3900円~
●42席
www.chezazuma.com/bouchon.provencal/
長瀬広子=取材、文 富貴塚悠太=撮影
本記事は雑誌料理王国244号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は244号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。