世界基準のレストランへ挑戦し続けていきたい「アビス」


ミシュラン1つ星レストランのシェフとして活躍する卒業生

東急東横線の代官山駅から歩いて3分ほどのところにある「アビス」は、魚介フレンチで知られるレストラン。そのオーナーシェフを務めるのが目黒浩太郎さんだ。

1985年生まれの36歳。「30歳までに独立する」という目標をみごとクリアし、29歳で東京・南青山に魚介を強みにした自らのレストラン「アビス」を開いた。その後、1年足らずでミシュラン1ツ星を獲得。「世界基準のレストラン」を目指すためには、レストランのキャパシティをもう少し大きくする必要があると考え、2019年に今の場所に移転した。

「新しいこの店は、魚介だけでなく、山や森のものも取り入れていこうと考え、その象徴として『蒼い森』をテーマに掲げました。お店に入った瞬間に『蒼い森』というテーマを感じていただけるよう、木目調とブルーを組み合わせた内観にして、照明も暗めにしました。料理はもちろん、お店全体の雰囲気も自分の考えを表現したものにしないと、自分が目指すレストランにはならないと思ったんです」

旬の素材を一皿に盛り込んだ、彩りも鮮やかな「アカハタ、ドライトマト、ネマガリタケ、ウコギ」

新たな店の滑り出しは順調そのものだった。「外国人シェフとのコラボレーションやイベントのお話をいろいろいただいていて……。でも、新型コロナウイルス感染症の影響で、すべて中止になりました」と目黒さんは苦笑交じりに語る。

ただ、突然訪れた〝休み〞は、目黒さんにとって悪いことばかりではなかったらしい。「時間ができて、料理と向き合う時間が格段に増えました。それは、僕にとってすごくよかったと思っています。この1年間で技量もレベルアップすることができたし、料理もよくなってきたと感じています」

また、2019年に依頼された自身初の単行本『日本の海と森が育む 魚介フレンチの深淵』の制作にも、じっくり取り組むことができた。「魚の知識を文章化することで理解が深まることもあったし、新しく調べてみたりすることも多くて、勉強になりました」

旬の夏魚、アカハタの料理の盛り付けを行う目黒さん。ビネガーがベースのソースが酸味とコクを加える。

そんな目黒さんだが、服部栄養専門学校時代は、あまり真面目な学生ではなかったらしい。「アルバイトばかりしている学生でしたね。アルバイト先にいるほうが、料理の知識や技術が身につくと、勝手に思い込んでいたんです」

しかし、卒業から15年余。考え方は少しだけ変化した。
「服部栄養専門学校では、西洋料理だけでなく、中華料理、日本料理、製菓製パンとさまざまなジャンルの料理を勉強します。今は、料理のジャンルはあってないようなもの。さまざまなジャンルの料理を知っているということは、クリエイティビティの幅を広げてくれると思います。学生の皆さんに、このことだけは伝えたいですね」と、少しだけ自戒の念も込めて後輩たちにエールを送る。

また、魚介フレンチを標榜する料理人としては、環境問題にもつながる、正しい海との向き合い方なども発信していきたいと言う。

そして、「東京を代表する世界基準のレストランを目指します」と言い切る目黒さん。その爽やかな笑顔の奥に、料理人としての「覚悟」が見え隠れした。

目黒浩太郎さんは、2005年に服部栄養専門学校調理ハイテクニカル経営学科を卒業。ソムリエの谷口達彦さんは、服部栄養専門学校時代の同級生。2015年に「アビス」をオープンさせたときからの付き合いだ。

目黒さんの著書「日本の海と森が育む魚介フレンチの深淵」(旭屋出版)。

abysse(アビス)
東京都渋谷区恵比寿西1-30-12
ebisu hills 1F
TEL 03-6804-3846
ランチ 12:00~13:00L.O(. 土・日・祝日のみ)
ディナー 18:00~20:30L.O. 水休
https://abysse.jp

text: Shoko Yamauchi  photo: Narikazu Takagi

本記事は雑誌料理王国317号(2021年8月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は317号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする