レクサスオーナーにお送りしている「LEXUS DINING JOURNEY」の2号店は白山の麓、石川県小松市の山間に2022年オープンした「オーベルジュオーフ」。
わずか3年で世界各国の食通から注目されるようになった、ここに来なければ味わえない、極上の食体験をご案内しよう。


北陸自動車道小松インターチェンジから車で30分。桜の名所「十二ケ滝」がある郷谷川に沿う里山のゆるやかなワインディングロードを進むと、右手に小さな学校が見えてくる。2018年に46年の歴史を閉じた西尾小学校だ。ここが、オーベルジュオーフに生まれ変わったのは、2022年7月のこと。
「観音下(かながそ)」と呼ばれるこの場所は、白山に抱かれた名水の地「観音山」の麓に位置する。山の息吹をすぐ近くに感じる一方で、世代を超えて守られてきた田畑が広がり、今は役目を終えた日華石の石切り場跡が日本遺産に認定されている、土着文化の息づくエリアでもある。
オーフ(eaufeu)という名は、水(eau)と、エネルギーを生み出す火(feu)から。「地域のシンボルとも言える水に、外からの火を灯すことで、新たな価値とイノベーションを巻き起こしたい」という思いが込められているそうだ。


シェフは、京都出身の糸井章太さん。フランス・アルザスの三つ星レストラン「オーベルジュ・ド・リル」、ブルゴーニュ一つ星レストラン「レストラン・グルーズ」を経て、「メゾン・ド・タカ芦屋」に入店。35歳以下の若手料理人のコンペティション「RED U-35」で、史上最年少26歳でグランプリを受賞した。その後アメリカに渡り、「マンレサ」「フレンチ・ランドリー」で研修したのち、オーフのシェフとして、30歳で観音下にやってきたのだ。
「都会の店で、五島列島や鳥取の魚を出すことに少し違和感のようなものを感じていました。フランスの地方で修業したとき、食材やワインなどすべてがその地域のもので、それを目当てに外国から人が訪れるのを見て、こんなふうに土地の料理で楽しませたいと考えるようになりました。だから、東京や大阪よりも、地方で何を見いだせるのか、地方にはまだまだお宝が眠っているに違いない、と」
縁もゆかりも土地勘もない場所に、シェフとして移り住んだ理由を語る糸井さんは、少しためらいながら言葉を続けた。
「ここ、観音下まで人を呼ばなければならない、料理を食べに来てもらえるかどうかは、正直、プレッシャーでしたけれど」
まずは周辺の食文化や食材について知ることから始め、どんな生産者が何を作っているのか、収穫はいつなのか、山ではいつ、何が採れるのか…足を運び、目で見て話を聞きながら、観音下への理解を深めていった糸井さん。その理解が深まるほどに、この土地に魅了されるようになったという。今まで積み上げてきたフランス料理の知識や技が、里山に受け継がれていた食文化や知恵、ここで育った季節の食材を取り入れることで、オーフの料理が形作られてきたのだ。


スタッフと一緒に日々山に入り、生産者を訪ね歩く糸井さん。雪の量によって山菜の時季が毎年変わること、自然に近い状態で育つ野菜やくだものが気候変動に左右されることを、感覚で受け入れられるようになったという。
「使いたい食材が近くにないから遠くの産地から手に入れるというのは、料理人の作りたい料理を起点とする考え方ですが、ここでは真逆です」。糸井さんの口から発せられると、決して気負った感じを受けない。観音下と共に歩んできた3年の月日が、自然にこの信条を育んだのだろう。
だから、オーフの料理に海の魚は出てこない。使うのは、川の魚。なかでも近隣の名水で育てられているどじょうは、定番だ。肉料理も、山の恵み・ジビエを駆使する。いずれも地元の生産者や猟師との信頼関係の上に成り立つ、極上の食材だ。
その食材たちを、あますところなく使い切る。端材やローストしたときに出る蜜なども二次利用し、発酵をはじめとする保存の知恵を活用して風味に昇華させる。しかし、糸井さんは「サステナブルであること」を行動より先に意識したことはないという。若い頃から食材を隅々まで使うことは当たり前のようにやっており、ここで手に入る食材をどうすればおいしく食べられるかをさらに突き詰めていったら、結果的にそうなっているだけだ、と。
「ここで料理を作る意味をいつも考えている僕たちにとっては、いたって普通のことです。サステナブルを考えて料理を作るのは、順番が逆ですよね」。
オープンして3年。糸井さんの料理は、少しずつシンプルになってきた。
「このハーブはいらないな、とか、スパイスは減らそうとか。同じ料理でも常にアップデートしています。とはいえ、食材そのものの味や香りを活かせるのは、材料が素晴らしいからです」


観音下という土地でシェフをするにあたり、地方で料理を作る意味を見いだすことのほかに、糸井さんが志していたものが、もうひとつある。
「廃校は社会問題のひとつです。歴史を閉じた小学校をオーベルジュにして、日本はもちろん、世界中から人を呼ぶことができれば、その問題を解決する第一歩になるかもしれないと考えました」。今やその志は概ね実現されている。
山の匂い、田畑の営みや風が渡る風景、しんとした夜の気配や満天の星空、朝のひんやりした空気…。食事を楽しむだけではなく、宿泊することで、よりこの場所の魅力を体感できる。

また、隣には日本酒界のレジェンドが醸す蔵「農口尚彦研究所」があり、ここにも多くの人が訪れている。茶室を思わせる飲食スペースがあり、ここでの試飲体験とオーフでの食事をセットで体験する人も少なくない。
その一方で、地元の小学生たちの食育活動にも糸井さんは力を入れている。畑に出向いての収穫や味覚の授業、ディナーやキャンプファイヤーなどを体験する「オーフスクール」もそのひとつ。
「将来シェフになってほしいとか、未来の食べ手を育成するとか、そんな大それたことではなく、食べることを好きになってほしい、地元にこんなおいしいものがたくさんあることを知ってほしいと思って。料理人にできることは、食べる楽しさを伝えることですから」
ここでしか食べられないもの、この場所でしか感じられないこと。子どもたちを含めた、この場所で生きる人たちへのリスペクト。ここで料理を作る意味を日々突き詰めることで、糸井さんは、観音下を「自然と人が循環する場所」として活性化しているのだ。大上段に構えず、自然に循環しているオーベルジュオーフと糸井さんを見ていると、本来のサステナブルは、そういうものなのだと思うのだ。

オーベルジュオーフ
石川県小松市観音下町ロ48
0761-41-7080

LEXUS ELECTRIFIED PROGRAM
https://lexus.jp/models/bev/lep/
LEXUS BEV(電気自動車)オーナー様専用サービス。様々な共創パートナーと共に、LEXUSならではのサービスや体験を提供し、オーナー様がBEVとともに過ごす時間を新しく、そして豊かにしていくものです。
その一環としてLEXUS DINING JOURNEYでは、サステナブルな活動を行う全国選りすぐりのレストランに特別なお席をご用意してお待ちしております。
LEXUS DINING JOURNEY
https://lexus.jp/brand/experience/lexus_dining_journey/
text: Takako Tsuguma, photo: Tetsuo Ogino
