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日本の食材を知るということの大切さを学んだ。「ブルガリ イル リストランテ」ルカ・ファンティンさん


 2009年に「ブルガリイル・リストランテルカ・ファンティン」のエグゼクティブシェフに就任し、今年で10周年を迎えるルカ・ファンティンさん。かつて「龍吟」で修業した経験もあり、日本でのシェフ就任はルカさんにとってもうれしいことだったという。

しかし、日本でシェフを務めるのは初めてのこと。来日前にはローマの三ツ星レストランでスーシェフも務めたルカさんだが、日本で料理を作るのは、ゼロからのスタートに等しかったそうだ。「最初はイタリアで作っていた自分の料理を、日本で再現することをめざしていました。しかしあるとき、自分が作る料理には何かが欠けていると感じるようになったんです」

そこで、ルカさんは「日本の食材マスター」と讃える「龍吟」の山本征治さんに相談したという。香港に出店している山本さんに、現地では食材の仕入れや鮮度の管理はどうしているのかと訊いたところ、山本さんは日本の食材を無理に揃えるのではなく、香港の食材をいかに自分の料理に取り入れるかということにチャレンジしていると答えたそうだ。「香港の鶏などは日本のものよりずっとおいしい。どの国でも、探し求めればきっと素晴らしい食材を見つけることができる」と教えてくれた山本さん。その言葉に、ルカさんの考えは変わったという。

「イタリアではスズキが最もおいしい魚ですが、日本ではイタリアほどではない。しかしその代わりに、日本にはキンキやキンメダイ、ブリなど、素晴らしい魚がたくさんある。肉や野菜も同じです。日本に来た外国人シェフは、日本には豊かな食材があると言っても、最初はそれは日本料理のためのもので、自分の料理には関係ないと思ってしまいがちです。それは間違いで、日本の食材を知り、自分の料理に取り入れるチャレンジをしなければ、よい料理は作れない。そこに気づいたことが、日本に来てからの大きな変化でしたね」

誰かが教えてくれるわけではなく、自ら日本各地に足を運び、学んで、自分の料理に取り入れる。そのチャレンジには2年かかったけれど、2年かけてやっと自分の理想の料理が作れるようになったと話すルカさん。その後ミシュランの星を獲得し、本も出版し、たくさんの素晴らしい出会いもあって、充実した10年だったという。

「これからもつねに前を見て、どんどん新しい挑戦をしたいと思っています。頭の中に湧いてくるイメージの数々を、これからも形にし続けていきたいですね」

本記事は雑誌料理王国2019年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2019年8月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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