Profile
1965年生まれ。マルケージ、アラン・デュカスの下で経験を積み、アルベレータのシェフに就任。 2007年「クラッコ」をオープン。ミシュラン1ツ星。
Ristorante Cracco
(リストランテ・クラッコ )
Galleria Vittorio Emanuele II, 20121 Milano
+39 02 876774 https://www.ristorantecracco.it
営業時間:月~金 12:30 ~ 14:00
19:15 ~ 22:00
土 19:30 ~ 22:00
休:日
20歳で出合った次元を超えた料理。
しかしそれは伝統に敬意を評し、確かな技術があるからこそ生まれた必然的な表現だった
1930年にミラノに生まれ87歳でこの世を去るまで、グアルティエロ・マルケージはシェフであり文化人であった。母国語のイタリア語以外にフランス語とドイツ語の3ヶ国語を操り、読書家で芸術と音楽をこよなく愛した天才だった。家庭料理の延長であったイタリア料理を、芸術性と技術面において世界中のメインダイニングへと進化させたイタリア料理界の真のマエストロである。間違いなく、20世紀を代表する偉大な料理人である。
「シェフは調理器具から皿、カトラリー、グラス、テーブルクロス、サービスまでトータルケアできなければならない」という信念を持ち、好奇心と探究心は年齢を重ねても、孫ほどの年齢差のシェフたちよりはるかに旺盛であった。
1993年から一時期ミラノを離れ、ベッラヴィスタ社がフランチャコルタにオープンした「アルベレータ」のダイニングディレクターを20年間務めた。この間に筆者は何度か訪問した。マルケージの合図で壁面のロールカーテンの幕が上がると全面ガラス張りのオープンキッチンが登場し、客たちは舞台のような演出に拍手した。自らデザインした皿に盛りつけられた料理は美味であることはもちろん、絵画のような気品が感じられ、館内にはクラシック音楽が流れていた。ミラノのスカラ座脇にあったレストラン「マルケジーノ」も、スカラ座の舞台の延長のような内装だった。
“芸術家としての父”も見ていたのだろう。2人の娘たちは音楽の道を選んだ。マルケージはイタリア版魯山人のような存在かもしれない。
text 山田美知世(Michiyo Yamada)
ミラノ在住38年。ファッションや料理に関する情報を発信し続ける。 マルケージとの交流も深い。
本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。