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【プロが認めた日本の食材(3)】村公一さんの鳴門の魚


村さん直送の鳴門海峡の魚が、コースを再構築するきっかけをくれた

高橋隼人さん ペレグリーノ

 東京・麻布の「ペレグリーノ」は、ミシュランガイド2014で新たに"星付きレストラン"の仲間入りを果たしたイタリアンだ。 

 そのオーナーシェフ高橋隼人さんが、2年ほど前から使っているのが、徳島県鳴門市里浦の漁師、村公一さんの魚である。現在、ペレグリーノで使われる魚の9割以上が、村さんから直送される四季折々の鳴門の魚だという。

新鮮なことはもちろん熟成後の風味も抜群

「ウチのコースに魚料理を再登場させるきっかけをつくってくれたのが村さんの魚でした」と高橋さんは笑顔を見せる。

 2009年3月にオープンした当初は、まだ料理に迷いがあった。20代の頃修業したイタリアの食都パルマは、"海なし県"。名物は、生ハムに代表される肉料理だ。帰国してペレグリーノを開いたときも、「パルマの郷土料理」を店の特徴に掲げた。「最初は魚料理も作っていたんですが、やはり人気は肉料理。魚を余らせることも多くて、それならいっそ肉料理一本で行こうと決め、魚は一切使わなくなりました」

 そういうなかで、村さんの魚と出会う幸運に恵まれた。

「村さんの魚は新鮮で、熟成させても変なニオイがなく、むしろ風味が増します。しかも村さんの魚は、調理したあとで切っても、カドが立つ。つまり美しく仕上げられるんです」
 村さんの魚と出会って、「パルマの郷土料理」や「肉料理」に固執しすぎていた自分の意識が変わった。メニューから消していた魚料理を、村さんの魚を使って復活させようと決心したのだ。

「旨みの増した魚をシンプルに調理して、イタリア野菜などとともにイタリアンのひと皿に仕上げています」

 直送されてきた魚は、種類によって多少は異なるものの、ほとんどの場合、約週間、熟成させる。今回のコイチ(スズキ目ニベ科の魚)も同様に熟成させ、切り身に金串を刺して、ときおり塩をふりながら、炭火でじっくり焼いていく。

「焼き目のつかない魚の皮は生臭くなるので、表面はしっかり焼きつつ、内側はミディアムレアにして仕上げるのがポイントです」

 焼き上がったコイチには、冬が旬の野菜プンタレッラやフルーツトマトを添えて、彩り豊かなひと皿へ。「最近では、魚料理がいちばんおいしかったと言われることも少なくありません。魚に対する村さんの真摯な思いも、お客様に届くようにしたいです」と高橋さん。その言葉の奥に、魚への愛情が潜む。

“村さんの魚は切ったときにカドが立つ。
だから、美しいひと皿に仕上がる。料理人にとっては、それも魅力です。”

徳島県鳴門市里浦の村公一より直送のコイチの紀州備長炭焼き
しっかり焼かれた皮の香ばしさと白身のしっかりとした味が絶妙。ミディアムレアに焼いたコイチは、火が通った部分と生の部分のバランスがよく、2つの食感と味が楽しめる。最後に粒子の粗いクリスタルソルトをふり、歯ごたえを出すとともに塩味にもコントラストをつけている。野菜とともにサルサヴェルデを添えて、イタリアンなひと皿に。


山内章子=取材、文 依田佳子=撮影

本記事は雑誌料理王国2014年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2014年4月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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