人形町は甘酒横丁の裏手、路地に漏れ出す温かい色の光の奥に、「本気でパリに来てしまった」気分を楽しめるビストロ空間がある。オープンは2019年9月、亀山知彦シェフが1人で切り盛りする。
「本気度」の高い店に出くわした時ほど愉快なことはない。
ベーコンなどの加工肉やシャルキュトリはすべて手作り。「自家製じゃないのは生ハムとパンだけ」という本気度にまずは驚く。注文した料理が登場するとそのボリュームの本気度に心が踊る。山と盛られる生ハム、大きなカッティングボードにずらりと敷き詰められたシャルキュトリ…まるでパリのビストロと肩を並べる盛りっぷりだ。シェフ自ら「うちのはエグい(=量が多い)ですよ」というカスレをクローネンブルグで流し込みながら話を聞けば、「(フランスの南西部に位置する)ラングドック地方は、白インゲン豆とフォアグラの名産地。フォアグラの副産物として残った鴨の肉をコンフィにして保存し、冬場に豆と煮込んでカスレとして食べるんです」という具合に、郷土の食文化的な知識も分けてくれる。
27歳で渡仏、本気のビストロ料理を5年間で体得した亀山シェフ。料理だけでなく「ビストロの文化」を根っこから伝えたいという本気度が、身体から発散しているかのようだ。毎日手書きで黒板に記されるメニューはざっと30。…あと10回は来ないとなぁ。日本橋に愉しみがもう一つ増えた。
EN FACE(アンファス)
東京都中央区日本橋人形町2-11-9
18:00 ~ 24:00
水休
予約は以下のメールにて受付。返信に時間を要する場合もあるため余裕を持ってご連絡を。
enface.ningyocho@gmail.com
text 小林淳一 photo 鈴木泰介
本記事は雑誌料理王国2020年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年2月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。