「イメージするのは〝居酒屋食堂〞です」と屈託の無い笑顔で語るのは「オステリアダカッパ」の礒貝勝成シェフだ。「鮨よしたけ」の吉武正博さんがオーナーを勤め、銀座の中央通りの路地裏に8月にオープンした。礒貝シェフは、1年間「鮨よしたけ」を手伝っていた異色の経歴を持つイタリアンシェフ。「イタリア料理とは異なる日本の素材を活かしきる和の技法が勉強になると思いました」。たとえば酢の使い方の幅が広がったという。吉武さんの酢と砂糖の合わせ方に学び、ワインビネガーと柑橘系を合わせることで、サラダ仕立てにコクが出るようになった。
毎朝、築地に足を運び、新鮮さへのこだわりもひとしおだ。食材によっては、「鮨よしたけ」と同じ仕入れ先のものもある。また、「鮨よしたけ」から店に届くこともあり、鮮度と品質は格別だ。アワビやウニはラグーに、マグロやメカジキならサルシッチャに、シチリアでの修行経験を持つ礒貝シェフの手によって生まれ変わるのだ。「あくまでも、イタリア料理の枠組みは外れたくはありません」という礒貝シェフのイタリアンは、素材の旨味を込めた〝マンマの味〞がしっかり感じられる。毎日更新される黒板メニューには、魚だけでなく肉や野菜、果物など旬の食材を活かしたメニューが並ぶ。一人でゆっくり味わうもよし、大勢でシェアしたり、楽しみながら食べるのもいい。
礒貝シェフの料理は一見シンプルに見える料理だが、吉武さんゆずりで仕込みの手間暇を惜しまないのが旨さの理由。メカジキはソーセージに、肉の部位ごとにハンバーグやパテにする。ディナーに力を込めたいからランチ営業は考えない。そんな骨太なシェフのひと皿は、「魚介のラザニア」だ。白身魚やアワビ、ホタテなど8種類以上の新鮮な魚介類の旨味を凝縮させたもので、コクのあるだしが冬の温かみを感じさせる。旨いものを楽しく。礒貝シェフの皿からは、イタリアの大らかな風が吹き込んでくる。
この日の「魚介のラザニア」は、吉武さんから届いた白身魚のほか、エビ、タコ、イカ、アワビ、ホタテを使用。ラザニアの組み合わせには珍しく魚介を組み合わせたシェフらしいひと皿。ソムリエの山本一毅さんの選ぶワインと味わうのも楽しみ方のひとつ。
材料(作りやすい分量。18㎝×24㎝の耐熱皿)
タマネギ(みじん切り)…1個/ニンジン(みじん切り)…1/2本/セロリ(みじん切り)…小1本/白身魚(その時々にある切れ端なども使用)…150ℊ/エビ(むき身)…90ℊ/その他魚介類(タコ、貝類のヒモ、イカ、アワビの切れ端、ホタテなど)…120ℊ/アサリ(またはムール貝)…15粒/アンチョビ…8ℊ/ニンニク(みじん切り)…1/2片/白ワイン…30㏄/トマト水煮(つぶす)…500ℊ/オリーブオイル…40㏄/ホウレン草…1束/牛乳…300㏄/バター…30ℊ/強力粉…30ℊ/パルメザンチーズ、塩…各適量/ラザニア用パスタ…6~8枚
作り方
オステリア ダ カッパ
Osteria da K. [káppa]
東京都中央区銀座8-7-2 銀座藤井ビル2 5F
03-6274-6620
● 18:00~翌2:00(翌1:00LO)(土~22:00〈21:00LO〉)
● 日、祝休
料理王国=取材、文 星野泰孝=撮影
本記事は雑誌料理王国第244号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第244号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。