狩猟免許も持つジビエの匠のホンショウジカのパイ包み焼き「レストランKAIRADA」皆良田光輝さん


「命をいただく」。レストランKAIRADAのオーナーシェフ、皆良田光輝さんの料理の原点だ。
 
13年修業した「アピシウス」を退職した後、オーナーに誘われ、師である高橋徳男さんの後押しもあって狩猟を始めた。「フランス料理の原点はジビエにあるとずっと思っていました。しかし卸された肉を捌くだけではわからない。その原点を自分の目で見たかった」。免許を取り、銃を持つようになってから、皆良田さんの食材に対する姿勢は変わった。

「料理は言わば殺生。だからこそ魚でも野菜でも、食材はすべて無駄なく使うことを、改めて意識するようになりました。おいしく食べてもらうことが供養になると思っています」皆良田さんのその〝原点〞は、今回のひと皿にも表れている。

皿に広がる茶色の「ソースポワヴラード」。これは鹿の骨とスジがベースになっている。ジビエのシーズンには、ここに血を加えてコクを出す。その上にパイ包み焼きがのせられる。ほんのりロゼ色をした鹿肉はほどよい柔らかさで、フォワグラのコクは鹿肉の風味をじゃましない。食材それぞれの良さと個性が生きている。皆良田さんの食材への愛情が詰まった、旨いひと皿である。

「パイ包み焼き」のここがポイント

ジュが出てサクッと焼けず、味が落ちるのを防ぐため、クレピネットで包む。一度表面に焼き色をつけ、火から外し冷蔵庫で締める。焼き過ぎも防ぐクレピネットだが、後味が変わるので、必ず取る。

最大のポイントはやはり最後の火入れだ。ジュが出ないようにいったん締めてからパイ生地で包み、220℃のオーブンで火を入れていく。切った時にうっすらとロゼ色が中央に残るくらいがベスト。

命をいただくのだから料理は無駄なく、
おいしく作らなきゃ

フォワグラ入り鹿肉のパイ包み焼き
パイに包まれじんわりと火入れされた、うっすらとロゼ色の仔ジカのロース肉が食欲をそそる。皿に広がる茶色のソース「ソースポワヴラード」と、付け合わせにかけられた白のソース「シュプレーム・ド・ヴォライユ」のコントラストも美しい。秋冬だけでなく、春夏もまた違ったソースでいただける。パイがなくなり次第終了するので、予約の際には確認するのが望ましい。

材料
シカのロース肉、カモのフォワグラ、パイ皮、クレピネット、バター…各適量/付け合せの野菜…各適量
◦デュクセル
マッシュルーム、マイタケ、シイタケなどのきのこのミックス(みじん切り)、タマネギ、オリーブオイル…各適量
◦フォン・ド・ヴォー(仕込みの量)
仔牛の骨…3㎏/仔牛のスジ…1㎏/タマネギ…4個(1200ℊ)/ニンジン…11/2本(450ℊ)/ニンニク…1株/水…10ℓ/ポワローの葉(緑の部分)…2本分位/セロリの葉…10ℊ/トマトコンサントレ…200ℊ/フレッシュタイム(枝付)…5ℊ/ローリエ…3枚/黒粒コショウ(つぶしたもの)…7ℊ/グロセル…25ℊ
◦ソース ポワヴラード(仕込みの量)
タマネギ…900ℊ/ニンジン…600ℊ/ニンニク…1株/赤ワインビネガー…500㏄/赤ワイン…5250㏄/セロリ…200ℊ/タイム茎…10ℊ/パセリ茎…10ℊ/ローリエ…3枚/黒粒コショウ…30ℊ/シカ(骨、スジ)…4.5㎏/フォン・ド・ヴォー…400㏄/塩、コショウ…各適量
◦シュプレーム・ド・ヴォライユ(仕込みの量)
鶏ガラ…1㎏(ローストしたもの)/マッシュルーム…300ℊ/タマネギ…70ℊ/ニンニク…10ℊ/タイム…1枝/ローリエ…1枚/鶏のフォンブラン…2ℓ/黒粒コショウ…1ℊ/グロセル…8ℊ/クリーム…適量
◦フォンブラン・ド・ヴォライユ(鶏のフォンブラン)(仕込みの量)
鶏ガラ…3㎏/タマネギ…2個/ニンジン…1本/ニンニク…1株/水…10ℓ/タイム…3枝/ローリエ…2枚/グロセル…10ℊ

作り方
1.フォン・ド・ヴォーを作る。仔牛の骨とスジを中火のオーブンでローストする。
2.野菜をオリーブオイル(分量外)で炒め、ミルポワを作る。
3.鍋に1とトマトコンサントレを入れ、水を加えて沸かす。
4.あくを取り除いた後、2のミルポワを加えて沸かし、あくを取り除く。
5.4に香辛料を加え、こまめにあくと脂を取り除き、2日間煮込んだ後に漉す。煮つまりすぎないよう時々水を加え、焦げないようにかきまぜる。
6.ソース ポワヴラードを作る。野菜をオリーブオイル(分量外)でシュエする。(油がなじむ程度に)
7.赤ワインビネガーを加え、沸かした後、赤ワインを加えてさらに沸かす。
8.7を他の容器に移し、熱いうちに香辛料を加える。
9.8が冷めた後、シカの骨とスジを加え、2~3日ほどマリネする。
10.ジュと野菜と骨、スジをそれぞれ分ける。
11.骨、スジはオーブンでロースト、野菜はオリーブオイルでソテーする。
12.11のローストした骨、スジに、10のジュを加え、材料がつかるくらいまで赤ワイン(分量外)を加えて沸かす。あくと脂を取り除いた後、11の野菜を加えて沸かす。
13.あくや脂を取り除きながら、5~6時間弱火で煮た後、煮つまった量と同量のフォン・ド・ヴォーを加え、1時間ほど煮る。
14.骨を取り除いた後、細かい目のシノワで漉す。これがソースのベースとなる。
15.ソースを仕上げる。つぶした黒粒コショウに赤ワインビネガー(分量外)を少々加えて煮た後、さらに赤ワイン(分量外)を加えて煮つめる。
16.15に14のソースベースを加え、沸かした後に漉す。
17.16をバターモンテし、塩、コショウで味をととのえる。ソースの完成。
18.デュクセルを作る。マッシュルームをみじん切りにし、タマネギのみじん切りとともにオリーブオイルで炒める。
19.シカのロース肉を観音開きにして塩、コショウをし、デュクセルをのせる。その上にフォワグラをおき、さらにデュクセルをのせ、フォワグラを包むように巻く。
20.クレピネットで包み、タコ糸で縛る。表面をオリーブオイルで焼いていく。表面に焼き色がつき、全体が固まってきたら火からあげ、冷蔵庫で冷やして締める。
21.クレピネットを取り外し、パイ生地で包んでいく。
22.オーブン220℃で9 ~10分間焼き上げる。状態を見ながらその後、4~5分休ませる。
23.盛り付ける。付け合せの野菜を皿に並べ、ソースを皿に広げる。22のパイ包み焼きを切ってのせ、シュプレーム・ド・ヴォライユを野菜にかけて、完成。

Kouki Kairada

1964年生まれ。有楽町「アピシウス」で、13年修業し、その後1999年から神田、六本木「パ・マル」で料理長を兼務して、厨房に立つ。師と仰ぐ高橋徳男さんのもとで計22年を過ごす。2008年レストランKAIRADAオープン。現在は蒲田の猟友会に所属し、自身も15年前に狩猟免許を取得。長野と神奈川のハンターとも交流がある。

レストランKAIRADA
Restaurant KAIRADA
東京都中央区銀座2-14-6
第2松岡ビル1F
☎03-3248-3355
● 11:30~15:00(14:00LO)
18:00~22:30(21:30LO)
●日休
●コ ース 昼1500円~ 夜5500円~(アラカルトあり)
●22席
http://mm-homepage.com/
kairada/
※税込価格

CUISINE KINGDOM=取材、文 星野泰孝=撮影

本記事は雑誌料理王国244号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は244号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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