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小林幸司シェフが直伝!ソースとパスタ乾麺5つの方程式


近頃、手打ちパスタがもてはやされがちなイタリアン。そんななか、「乾麺には乾麺の良さがある!」との一家言を持つ小林幸司さんに、パスタ料理の基本となる5つのソースに合わせるべき、5つの乾麺について、熱く持論を語っていただいた。

ソースには、相思相愛となるパスタが存在する

「乾麺は、その多くが硬質小麦、つまりグラーノ・ドゥーロに水を加えて練って、乾燥を施した既製の麺です。この既製の麺には、おのずと相性のいいソースが決まっています。しかも、そこにはすべて理由がある。この基本の方程式を頭に入れておくと、ほかのパスタにも応用できるはず」と小林さんは話す。

つまり、ソースの性質を分析すれば、ロングかショートか、細いか太いか、穴あきかどうかで、相性のいいパスタは決まるということ。そこで、定番の5つのソースと相性のいい、5つのパスタをここで紹介する。

なぜ「アマトリチャーナ」は、細い穴あきの「ブカティーニ」でなければならないのか?なぜ「アッラッビアータ」には、穴あきの尖ったペンネを合わせる必要があるのか?むろん、パスタ論には絶対的な答えはないが、その科学的ともいえる小林さんの理論に耳を傾ければ、今まで気づかなかったソースとパスタの相思相愛関係が、明らかになってくる。

ソース×パスタ
基本の5つの方程式を解く。

1. アッラッビアータ × ペンネ
Penne all’Arrabbiata × Penne

Penne ペンネ
形がペン先に似ていることから、この名前がつけられた。斜めにカットした断面がソースをとらえる。写真のように表面に筋が入った「リガーテ」と、筋のない「リッシェ」タイプがある。

調理ポイント
常温の鍋に、香りにキレのあるトスカーナ産のオリーブオイルとニンニクを入れてから火を付け、ニンニクの水分を飛ばすように炒め、トウガラシを加えて辛味を立たせるように炒める。ホールトマトを加えて、トマトの酸味が残る程度に軽く火を入れる。

ペンネを合わせる理由
●ショートパスタの場合、1個で適度な辛味を味わうことができ、なおかつ穴があいているため、1度に2枚の麺が咀嚼できるため、味がマイルドになる。●ソースが、ニンニク、トウガラシなどで構成されている「香り重視のソース」。そのため、穴あきのペンネにすることで、噛んだときに口の中で空気をはらんで香りが混ざり合い、まとまった味と香りを感じることができる。●マッケローニとは異なる尖った形状によって、味わいがシャープになる。また、口の中に麺の先が当たることで辛味を和らげ、麻痺した口の中にもとの感覚を呼び戻す効果がある。

2. ラグー × マッケローニ
Maccheroni al Ragù × Maccheroni

Maccheroni マッケローニ
筒状で、穴の中にソースの具材を取り込む機能がある。もともとは、現在の「パスタ」と同様の総称として使われていたが、17世紀のナポリで、マッケローニの名前で空洞のパスタが大量に生産され、現在の呼び名が定着。

調理ポイント
常温の鍋に、オリーブオイル、細かく切ったグアンチャーレ(豚ホホ肉の塩漬け)を入れて火を付け、脂を溶かしてから、まず香味野菜を炒めて余計な水分を飛ばす。次に挽肉(豚、仔牛、鶏、仔羊)を焼くようにしっかりと炒めて香りを立てる。そこにホールトマトを入れ、粗塩をふって、味にアクセントを付ける。

マッケローニを合わせる理由
●ロングパスタと異なる穴あきのマッケローニを使うことで、歯応えのある2枚の麺を一度に噛むことになり、肉のソースに対して、通常のパスタよりも力強く小麦を味わうことができる。つまり、グアンチャーレを使った力強い肉のラグーに対して麺の強さのバランスがとれる。●ペンネと異なり断面が平たくカットされているため、1回の咀嚼でパスタの小麦とソースの香り、まろやかな旨味を的確にとらえることができ、全体的にバランスよく味わうことができる。

3. カルボナーラ × スパゲッティ
Spaghetti alla Carbonara × Spaghetti

Spaghetti スパゲッティ
直径約1.5~1.8mm、長さ約26~29cmの細長いパスタ。名前はイタリア語で「ひも」を意味する「spago(スパーゴ)」に由来。現在は世界中に普及し、デュラム小麦粉を使った乾燥パスタの代名詞に。

調理ポイント
パスタをゆでている鍋の近くの温かい場所に、溶き卵、ペコリーノ・ロマーノ、グアンチャーレとその脂で炒めたニンニク、パセリを入れたボウルを用意。ゆで上がったパスタをボウルに入れ、温度を下げることなくソースを温めながら和える。最後に黒粒コショウを挽いてふる。

スパゲッティを合わせる理由
●いくつもの束になっているため、ゆで上がった麺を卵の入ったボウルで混ぜ合わせるとき、麺がソースの蓋のような役目を果たし、余熱でソースを蒸し上げる効果がある。もしもペンネなどの穴開きショートパスタを使うと、ソースに沈みやすく蓋の役目を果たさない。●カルボナーラは卵を使った粘度のあるソースなので、スパゲッティだと、食べるときにフォークで下から持ち上げてソースを絡めやすい。もしも、楕円形で平たいリングイーネを使うと、麺がソースをはねのけてうまく絡み合わない。

4. ジェノヴェーゼ × リングイーネ
Linguine al Pesto Genovese × Linguine

Linguine リングイーネ
長径3mm、短径1mm程度の平打ちのパスタ。楕円形の切り口が「舌(リングア)」に似ていることから、その名がついた。スパゲッティよりも歯応えがあり、モチモチとした食感がある。リグーリア州生まれのパスタ。

調理ポイント
香りが優しい、リグーリア州のタジャスカ種のオリーブオイルをベースに、ニンニク、バジリコ、松の実、アンチョビ、ペコリーノ・ロマーノとペコリーノ・サルド・マトゥーロをミキサーにかけ、ボウルの中でゆで上がったパスタと和える。

リングイーネを合わせる理由
●滑りやすいオイルベースのソースを合わせるため、平打ちのパスタのほうが松の実やバジルなどの細かな具材ものりやすく、噛みやすい。そのため口の中で味や香りも立つ。●スパゲッティなどに比べると表面積が平たく広いので、ゆであがった麺は皿の上で蒸気が発生しやすく、繊細なバジルの香りもより感じ取れる。● もしも穴あきのショートパスタを使うと、2枚の麺を咀嚼することになり、繊細なバジルの香りを重視したソ ースに対し、小麦の香りが際立ち過ぎてしまう。

5. アマトリチャーナ × ブカティーニ
Bucatini all’Amatriciana × Bucatini

Bucatini ブカティーニ
名前は、イタリア語で「穴」を意味する「ブーコ」に由来。スパゲッティよりも少し太めで、中心に針を通したぐらいの細い穴があいている。内部に空気を含んで歯応えがあるため、やや重たいソースのほうがよく合う。

調理ポイント
まずグアンチャーレを弱火でゆっくり炒めてコクのある脂を溶かす。溶けた脂でタマネギをじっくり炒めて、ホールトマト、トウガラシを加えて火を通す。トウガラシは辛味を立てるのではなく、ソースの切れ味をよくするために使うので、最後に炒める。

ブカティーニを合わせる理由
●グアンチャーレの塩気や旨味が溶け込んだ力強いソースを味わうためには、歯応えのある穴開きパスタを合わせることで咀嚼のバランスがとれる。●麺に穴があいていることで、口の中に空気が生まれ、スパゲッテ ィを使うよりも、グアンチャーレの塩気や旨味を感じやすくなる。●パスタに空洞があることで、ゆでたときに弾力性が生まれ、バネとなってソースをとり込み過ぎない。スパゲッティの場合はソースをとり込み過ぎて、ソースの強さが勝ってしまう。

小林幸司さん Koji Kobayashi

沖村かなみ=文・構成 天方晴子=写真

本記事は雑誌料理王国第183号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第183号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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