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日本人の問題は今も昔もカリウムにあり?


カリウムを失いにくい調理法とは

日本人の問題は昔も今もカリウム不足

昔の日本人の最大の死因は、脳出血でした。血圧が高い人が多かったからです。その後、減塩が進むにつれて日本人の血圧は大きく下がり、今では世界の平均より低くなりました。塩分の摂取については、以前ほど神経質になる必要はないでしょう。

 それより問題なのが、「カリウム」が足りないこと。カリウムは西洋カボチャ、水菜、ナス、白菜、セロリ、キャベツ、カブなどの野菜、イモ類すべて、バナナ、夏ミカン、メロンなどの果物にとくに多く、余分なナトリウムを体から出すことで血圧を下げてくれます。それどころか、カリウムを十分摂取すると、減塩するより血圧を下げる効果が大きいのです。ところが、現代の日本人はカリウムを目標の半分しか摂れていません。

野菜はなるべく切らず、丸ごと蒸す・焼く

下の表の通り、食品に含まれるカリウムの量は、同じ野菜でも季節によって大きく変わり、季節はずれの野菜では半分以下になることもあります。また、カリウムは水に溶けるので、食品を茹でると茹で汁に逃げ出します。このとき、小さく切るほど食材全体で水に触れる面積が大きくなるためカリウムが多く減り、また長い時間茹でるほどカリウムが減少します。しかし、茹でる代わりに電子レンジを使うと、カリウムの大部分を守ることができます。

野菜、果物は旬のものを選び、茹でる場合は丸ごと茹でて、あとで切り分けるようにしてください。電子レンジを活用するほかに、丸ごと蒸す、包んで焼くなどの調理法も有効です。

小林寛司さんが提案するひと皿

素材本来のあるがままの姿をそのまま味わうのが一番のご馳走

焼くだけで素材の旨味を引き出す究極の調理法

この日、小林さんが用意したメニューは「丸ごと焼いた緑長ナスと熊野牛」。収穫したばかりの緑長ナスを網の上でじっくり丸焼きにし、炙った熊野牛のイチボを添えた、この季節ならではの料理だ。

「調理のポイントは、ナスの皮に焦げがつくまでじっくり焼くこと。この焦げは口に入れると旨味に変わり、味のアクセントになります。そして、中から湯気が立つまでじっくり待つこと。それが、ナスの旨味が凝縮された印でもあります」

このシンプルな丸焼きという調理法は、旨味が凝縮され、しかもナスに含まれるカリウムを効率よく摂取できるという利点もある。特に夏の暑い時期には、汗によってミネラルが失われ、筋力低下や慢性的な疲労感など、いわゆる夏バテの症状を引き起こす原因になる。小林さんが日ごろ感じている「その季節になると体に必要な食材を自然に欲するようになる」という感覚は、季節ごとに起こりやすい体の不調を旬の食材から摂れる栄養素によって補うという役目も果たしている。これは、四季を通じて人間が健康的に暮らしていくために必要な能力であり、自然との整合性がきちんと取れている証拠ともいえる。

和歌山の自然を味わい尽くすさらなる接点を求めて

そんな小林さんに今後の展望を聞いてみると「できればこれからは山菜や木の実など、違った自然の恵みを探しに、山の中にも入っていきたいですね」とのこと。都会で暮らす人々が何時間もかけて足繁く通う「ヴィラアイーダ」。ほんのひととき、“自然のサイクルの中で暮らすこと”を味わえるこの場所で、畑以外にもフィールドを広げた小林さんの世界観にますます期待したい。

丸ごと焼いた緑長ナスと熊野牛
皮の部分が薄く、一般的なナスと比べて果肉がジューシーな緑長ナスを丸ごと焼いたメニュー。付け合せに熊野牛のイチボを添え、自家製ネギオイルやハーブで味わう、夏の恵みがたっぷり詰まったひと皿。

POINT

皮ごと丸焼きにすることで食材の旨みも栄養も逃さず閉じ込める

採れたての緑長ナスをそのまま網で直火焼き。皮に焦げをつけながら、中から湯気が立つまでしっかり焼くのがポイント。

緑長ナスを焼いている間に、熊野牛のイチボをさっと炙る。程よいイチボの脂身と赤身のバランスが長ナスと好相性。

焼きあがった緑長ナスとイチボを皿に盛り、黒オリーブのパウダーとネギオイル、ミョウガ、エゴマ、フェンネルなどを添える。

本記事は雑誌料理王国278号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は278号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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