もともとは越冬用食品として作られてきたヨ ーロッパの豚肉加工品。約2000年もの歴史をもち、歴史の長さに比例するかのように、地域、製法、材料などで細かくカテゴライズされ、その種類は実に豊富である。
しかしながら、規格、衛生条件などで、日本で輸入できるアイテムはごく限られている。しかも昨今の食品を取り巻く環境は必ずしも安全とはいえないことも多く、非常に厳しい状況にあるといえよう。
そんななか、もっと日本でヨーロッパの豚肉加工品を知ってほしいと意欲的に取り組んでいる輸入業者に取材し、おなじみをアレンジしたものから稀少なアイテムまで、現在日本で入手できる商品をこのページで紹介する。
ヴェネト地方のドライソーセージの一種。ソップレッサとは、古来プロヴァンス語で「塩漬け・プレスされた」という意味のソプレッサードという言葉を起源とする。粗挽きの豚肉を腸に詰め、ニンニクや白ワインで風味づけする。そのままで、またはポンレタと一緒に食される。
ドイツ南部から、スイス、オーストリアにかけて食される。ミートローフを思わせるソフトな食感が特徴。Leberとは肝臓を意味するが、肝臓が必ずしも使われているわけではない。食べ方は非常にシンプル。薄くスライスしてオードブルとして提供したり、サンドイッチの具にして食べる。
ブルゴス地方の、豚の血入りソーセージ。フランスのブ ーダン・ノワールに非常によく似ているが、このソーセージには米が入っている。衛生面の管理が難しく、ほとんど日本には入ってきていない。通常オーブンで焼いてから食べるが、スープの具材に使ってもよい。
ドイツを代表する豚肉の加工品。豚のスネ肉を塩と香辛料で漬け込み、ボイルした後、燻製にする。食べるときは表面をパリパリに焼き、ザワークラウトやマスタードを添えて食べるのが一般的。通常は骨付きだが、日本には骨なしのみが輸入されている。
イタリア料理によく使われる生ソーセージ。肉本来のうま味、塩分の強さと独特の香辛料使いが持ち味だが、塩分と香辛料を抑え、日本人用にアレンジしたのがこの商品。パルマハムと同じ原料肉で、しかも冷凍せずに新鮮なまま作られるので、ドリップが出にくい
ヴァイスとはドイツ語で白の意味。文字通り白いソーセージで、軽い食感をもつミュンヘンの名物でもある。もともとは仔牛肉で作られていたが、現在では豚肉も使われ、ケーシングにも豚の腸が使用される。ゆでてからズース(甘い)マスタードをつけて食べるのが本場流。
マヨルカ島およびカタルーニャ地方名産のドライソーセージを、イベリコベジョータで製造。ソブラサーダの持ち味であるパプリカの風味は効かせつつ、イベリコ・デ・ベジョータを使用することで、コクがありクセの少ない仕上がり。輪切りにしてパンにのせ、生のままで食べる。
スペインを代表するドライソーセージのひとつを、イベリコ豚で製造。より細かく挽いた肉を使い、ニンニク、オレガノ、塩、コショウを加えて作られる。よく似た製品にチョリソがあり、こちらはパプリカやトウガラシを入れ、乾燥時間はサルチチョンよりやや短い。
ドイツ
蒸して仕上げるタイプのソーセージ。ドイツの街角でよく見られるカレー風味のソーセージで、とくに夏場は人気が高い。食べるときは焼いてから、カリーケチャップ(カレー粉を混ぜたドイツのケチャップ)をつけるのが定番。
ドイツ
粗挽きの豚肉を燻製にしたソーセージ。名前に冠してあるように、ポ ーランド・ クラカワ地方が発祥とされる。シンケンとはハムの意味。食べやすい皮なしタイプなので、シンプルに焼いてマスタードをつけて、またはホットドッグにして食べるとよい。
イタリアの伝統的な生ソーセージで、豚の腸や人工の腸に詰めたもの、トウガラシ入りのドライタイプなど、地方によりさまざまな種類がある。このロンバルディア地方のものは、強い弾力と歯ごたえのある豚の腸に新鮮な豚肉を詰めており、肉のうま味がよりストレートに味わえる。
スペイン
ハモンセラーノをスモーク風味に仕立てた一品。この商品を製造しているカサルバ社はスペイン北部にあるので、その気候風土を利用して薄塩の生ハムが仕込める。仕上がりの1年前にスモークをかけて余計なアロマを飛ばし、上品な味わいにしている。
通称「ハムの王様」。余分な脂肪と皮を取り除き、モモのなかでもお尻に近いシンタマと呼ばれる赤身の部位だけを使用、豚の腸、胃、膀胱などのケーシングで包み、18カ月以上かけて丹念に作られる。芳醇な味わいで、アンティパストとしてそのままで、周囲のかたい肉はパスタソースとしてクリームで和えて食べるのがおすすめ。
イタリア北部の名産で、オーストリア、ドイツ、スイスでも作られる。製造過程で豚モモ肉を冷燻するのが特徴。表面に香草をまぶして、冷燻することで、肉の臭みを消したものと思われる。かつて、日本では高級食材として輸入された。
イタリアは各地でサラミ製造が行われ、それぞれ特色をもつが、その中でもひときわ印象深いのがこれ。ポー川流域の地方に伝わるサラミで、挽き肉を赤ワインで練るのが特徴。食感そのものはほかのサラミと大差ないが、ワインの効果か、食べた後のキレがよい。
上品で繊細な味わいの、ピレネー地方のビゴール豚を生ハムにしたもの。ビゴ ール豚はフランス最古の豚ともいわれ、自然放牧に近い形で飼育される。一時は絶滅の危機にさらされ、現在も種の安定頭数には及んでいないが、少量ながら食肉として流通している。
フランス南西部、スペインとの国境近くの都市、バイヨンヌが産地。IGP(保護指定地域表示)を有しており、材料、原産地や製造工程などが厳しく規制されている。バランスのとれた塩味と繊細な香り、弾力あるソフトな食感をもつドライハム。
安斎喜美子 文、長瀬ゆかり 写真
本記事は雑誌料理王国第163号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第163号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。