ここのジビエが旨い理由#2 南青山「レストラン・タニ」


ベキャスは半レアにロースト 
高い技術が生み出す繊細な味わい

多彩なジビエ料理で名高いフレンチの名店で、長年腕を磨いた谷利通シェフ。2年前にオープンした自店でも、ジビエは冬の看板メニューだ。例えば、希少価値も高く、「ジビエの王様」と呼ばれるベキャスは、お客様からのリクエストも多い人気のジビエ。谷シェフは半レアにローストし、濃厚なサルミソースで仕上げる。こうしたクラシックな調理法には、目新しさや派手さはないが、実は高度な技術を必要とする。「ジビエで重要なのは火の入れ加減。ベキャスは小型で皮が薄く、脂が少ない。だから加熱しすぎると肉が固くなってパサパサに。オーブンから出す絶妙のタイミングが勝負」

【ベキャス】スコットランド産
ヨーロッパ全域に生息するキジ科の渡り鳥。近年フランスでは乱獲により数が激減し禁猟に。内臓と脳みそも珍重される。


ソースはベキャスの旨味を凝縮したもの。フォンと赤ワインを合わせたベースを、内臓(レバーを除く)とガラを潰してとった血でのばす。「ベースの温度が血の凝固温度より高いと、分離してしまいます。逆に低すぎると火入れが不十分になる」また、「肉の旨味を消してしまうほどの強い臭みは好きではない」という谷シェフ。熟成の臭みが強くなる前に使用し、「繊細な肉の味わいをストレートに楽しめるジビエ料理」を信条としている。

ベキャスのロースト、サルミソース じゃがいものグラタン添え
アロゼして香ばしさを出しながら、中火で表面に焼き色をつけて180℃のオーブンへ。火が完全に通る前に取り出し、余熱でじんわり火を入れる。身と骨、内臓にわけて捌く。レバー以外の内臓はガラと一緒に潰して血をとり、ソースに加える。漉してなめらかに仕上げる。レバーはフォワグラと合わせて一口サイズのパンに塗り、カリっと焼いて添える。また、濃厚なコクを持つ脳みそは、すすって味わえるよう、頭蓋骨をくちばしとともに二つに割って焼き、皿に盛り付ける。

text 瀬戸由美子  photo 星野泰孝

本記事は雑誌料理王国第235号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第235号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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