テクノロジーの進化が止まらない!次世代レストランの形


2020年、飲食店の景色が変わった!
人とロボットが築く新しい協働の形。

もはやロボットは集客のためのマスコットではない。非接触/非対面が推奨されるコロナ禍の接客において、ロボットはようやく「一スタッフ」として最初の一歩を踏み出したようだ。ここではレストランとロボットの様々な関係性を眺めてみる。

■Wolt

企業評価額10億ユーロ以上のフィンランド発デリバリーが東京でサービス開始

ここ数年間で私たちの暮らしに浸透したフードデリバリーサービス。米国発「ウーバーイーツ」や日本発「出前館」、「チョンピー」など様々なサービスが登場する中で、フィンランド発のフードデリバリーサービス「Wolt(ウォルト)」が、10月22日から東京の一部地域でのサービスを開始した。 Woltは2014年の創業からたった6年で、世界23カ国100都市にサービスを広げた。企業評価額は現在10億ユーロ以上と評されている。人気の理由は「おもてなし」の心にある。創業地のフィンランド・ヘルシンキは人口密度が低く、悪天候で知られる。そのため業界最高水準のアルゴリズムを持つ自社システムで配達員の道順を決めるため、平均配達時間は約30分。しかも1度の配達で、3、4軒を回る。また一般ユーザーや加盟レストラン、配達パートナーに対して1分以内に返答を行なうチャットサービスなど、質の高い対応力も魅力だ。

日本では今年3月に広島でローンチされて、その後、札幌と仙台、東京へとエリアを広げていった。それにしても一体なぜ、スタートの地を広島に決めたのだろうか。Wolt日本社員第1号の新宅暁氏は「約2年かけて日本をリサーチしました。人口規模や競合他社の有無もありますが、何より、広島の持つ豊かな食文化が決め手でした」と話す。加盟飲食店の開拓では、例えば広島だと「お好み焼きみっちゃん」や「薬研堀 八昌」など、地元で愛されるお店を中心に声をかけた。またフードデリバリーサービスで唯一、地元の警察とともに交通安全の講習会を実施したり、交通安全に関する情報を共有したりなど、地域密着型を強く意識している。

「ポアステディ」の抽出スポットは5つあるが、お湯を注ぐドリップ口は1つしかなく、瞬間的に横移動する。「この動きがかわいいんですよ」と中川氏。

料理人たちからの評判も上々。
しっかりしたアクシデントサポート体勢が魅力

9月末、東京・渋谷PARCO内のタイ料理店「チョンプー」がWoltに加盟するために料理撮影を行なうと聞いて、現場に立ち会った。同店のデリバリーサービス加盟は、日本発のチョンピーに次いで、Woltで2社目。同店のプロデュースを手がける森枝幹氏は加盟のきっかけについて、「料理人仲間からWoltを教えてもらい、評判が良かった」と話す。「チョンプーはまだ大手サービスに加盟しておらず、まず信頼度の高いサービスから始めたかったんです。店とサービス側、お客とサービス側の連絡が取りやすく、アクシデントサポートがしっかりしていると聞いています」。東京エリアでは現在、約150店舗のメニューを頼むことができ、順次エリアを拡大して、取り扱い店舗も増やしていく。今後は、2年で国内100都市のサービス展開を目指すという。

AIが暮らしにもたらす恩恵の今とこれから。

AI(Artificial Intelligence:人工知能)は、様々なシーンで活用されている。 ここでは身近な実例から、いつかガストロノミーに応用される可能性までを紹介する。

AIカフェロボットroot C

「無人化」の枠組みでカフェを捉え直す

待ち時間ゼロで、豆から挽いたスペシャルティコーヒーを受け取りたい。そんなニーズに応えるべく、 現在、ローンチに向けて最終段階なのがAIカフェロボット「root C(ルートシー)」だ。手がけているのは、高校在学中の2018年に株式会社New Innovations(https://newinov.com/)を設立した、中尾渓人氏。子供のころからロボット作りに没頭し、14歳で『RoboCup Junior』世界大会にて入賞、15歳から開始したシステム開発事業で取引先が300を超え、会社のビジョンは「あらゆる業界を無人化する」という、まさにロボティクスの申し子。しかし、この「無人化」は、「人から仕事を奪うことではない」と中尾氏はいう。「『ヒューマン トゥ ヒューマン』 のコミュニケーションが発生するところに人間のリソースを解放したい。ロボットと人間の協調の半歩先いくことが狙いです」。AIの診断により自分好みのコーヒーが飲める「root C」はあくまでもその一歩。今後は固形食品も扱いたいと夢を拡げている。

現在、コワーキングスペース「有楽町 SAAI」(東京都千代田区有楽町1-12-1 新有楽町ビル10F)にて利用者を対象に提供中。

AmiVoice CSE for HACCP

HACCPのチェックにもAI導入が役立つ

食店にとって、AIのありがたみを直接的に感じられるのは、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point=危害分析重要管理点)に基づいた衛生管理の記録をこなしてくれるAI音声対話形式の「AmiVoice CSE(Conversational Smart Entry) for HACCP」(株式会社アドバンスト・メディア)のようなアプリケーションだろう。2020年6月の改正食品衛生法施行により食品関連事業者に対して求められるHACCPにおいては、食品加工や調理上の重要な温度や消毒などの記録が重要。煩雑な作業だが、専用のハンズフリーマイクデバイス「AmiVoice Front WT01」を使用し、AIを利用した対話形式なら、音声ガイダンスに声で返答すれば非接触で記録が可能だ。飲食店の身近なシーンにもAIは役立っている。

株式会社アドバンスト・メディアが販売する専用のハンズフリーデバイス「AmiVoice Front WT01」。スマートフォンのアプリケーションと組み合わせて使う。

text 松浦達也、浅井直子、笹木菜々子 取材協力/写真提供 シグマクシス 田中宏隆

本記事は雑誌料理王国2020年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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