2024年8月1日
「親父さんのビーフシチューは格別だった。けれど、あなたのこのまろやかな味わいも何ともいえない」
20年ほど前、私が50代の頃でした。父の代からのお客様が、こうおっしゃって、「黒毛和牛の三枚肉のビーフシチュー」をいかにもおいしそうに召し上がってくださいました。ありがたくてうれしくて……。私は思わず涙ぐんでしまいました。
その方は、当時90歳に手の届くほどの高齢でしたが、父から私へと受け継がれた「レストラン吾妻」のスペシャリテを、こよなく愛してくださった。そして私のビーフシチューが父の味を超えた、と褒めていただいた。やっと父に報いることができたと思いました。
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