フランス料理と日本料理の巨匠が「SAKE HUNDRED」×珠玉の一皿に込めた、日本酒のあるべき姿とこれから(後編)


日本が世界に誇るラグジュアリーな日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」。そのシリーズのフラッグシップ「百光(びゃっこう)」、そして「百光 別誂(びゃっこうべつあつらえ)」を、同じく日本が世界に誇る2人の料理人、渡辺雄一郎氏と山本征治氏が味わい、自由な発想、解釈でそれぞれ珠玉の一皿を提案した。そこには風味のペアリングというだけではなく、日本酒と料理の関係のこれからを示唆するアイデアや、根底に流れる精神性を改めて考える深み、そしてプレステージュなレストランでの楽しみ方までがあった。まずはその一皿に込めた思いを語り合っていただこう。

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https://cuisine-kingdom.com/sake-hundred001/

ガストロノミーの傍らに。これからの日本酒とレストラン

山本:人間から見たマリアージュもあるけれど、人間業ではなくて、お酒と料理の素材同士が、それぞれお互いを尊重しあえることがとても重要。そういう感覚が大きい。私は白子焼と「百光 別誂」をあわせたのですが、白子は自分では作れないんですよね。人為的ではない。お酒も基本的には、細菌の「オリゼさん」が一生懸命がんばって糖ができて酒になる。これ自体は人間業ではない。日本最古のバイオテクノロジーじゃないですか。

渡辺:そうか。古くから続く自然のテクノロジーですね。

山本:人間業では出来ないこと。これを若いころは見守ることができない。自分でなんとかしようと思ってしまう。それが最近、自分が歳を重ねて気づいたのは、お料理というのは、もともとの素材達が、自然界で磨かれたものを絶対壊してはいけない。魚が料理に変わる瞬間を、自分たちの技術で手伝う。食事は、その人間技では辿り着かないやりとりを体に収めること。空腹を満たす為に何かを食べるのではなく、美味しいという満足を感じながら、日本国の豊かさを思い知る。結局はその精神を満たす。私はこれをガストロノミーと言うのではないかと自らの解釈で定義しています。

渡辺:私はガストロノミーの定義はアピシウスが記したように古代ローマ時代に意識され始めたのではないかと考えております。 征治さんのその定義も実に興味深いです。こういう話が聞けるのは本当に嬉しいです!だから征治さんにも参加していただきたかった。

山本:ありがとうございます。お酒と料理の関係で言うと、日本料理をいただく際に日本酒の力というのはとても大きい。考えてみれば日本料理は、最後に食事でしめはあっても、ずーっと酒のつまみが続く。お酒とともに料理が引き立つ。それも料理屋ならではの楽しみ。

渡辺:日本酒は、日本の風土で生まれて、日本に根っこがあって、僕らには寄り添う。考えることじゃなくて、自然にあって。

山本:わかります。日本人が主食として食べ続け、親しんでいるコメが原料。それを味わうというのは精神に寄り添いますよね。もうひとつ日本酒には「はかなさ」が込められているのではないか。ワインだとブドウの木は刈り取らない。根っこはあり続けて実だけをいただく。コメは根っこごと稲を刈り取る。するとまた田植えから始めなければならない。それがはかないじゃないですか。そのはかなさも感じてもらいたいし、その個性を世界にも発信していきたい。

渡辺:私が今回あわせた料理は日本人が作ったフランス料理。この料理はフランス料理でありながらも和の世界観がふんだんに盛り込まれた一皿です。最初に百光を口にした時にはあまりにも透明で清んだ味わいだったので料理の具体的なイメージが湧いてきませんでしたが、それがまた面白かった。そして自然体でこの料理と合っていった。

山本:我々の業態では食事をいかに豊かなものにするかが大切で、お酒、特に食中酒というのは永遠のテーマです。日本酒も、もう一歩、レストランでの楽しみ方を提案できるようなものにしたいですね。フランス料理とフランスワインのソムリエさんの一連のお仕事を、日本料理とお酒の関係でも発信していきたい。「SAKE HUNDRED」のような日本酒が出てきて、みなさんもより楽しもうとされている。今はそのチャンスだと感じています。

二人の巨匠の感性を刺激した
「SAKE HUNDRED」とは?

「厳格な製造管理のもと、最高品質の日本酒のみを提供する」「味覚の満足だけでなく、心の豊かさに貢献する」「日本酒産業の発展に貢献し、時代を前進させる」。

この3つを約束する最高峰の日本酒で、世界中の人々の「心を満たし、人生を彩る」ことを存在意義として掲げる「SAKE HUNDRED」。今回お二人にペアリングいただいた「百光」「百光 別誂」のほか、長期熟成、樽貯蔵、デザート酒など、さまざまな魅力の最高峰を表現したアイテムをリリースしている。
▽詳細はこちら
https://sake100.com/item/byakko/latest

珠玉の調和。しかし、自然体のペアリング

SAKE HUNDRED 百光×ナベノ‐イズム
「甘鯛の鱗焼き 高知100年枯木柚子のナージュ仕立て」

渡辺シェフのスペシャリテであるこの料理は、全ての食材が繊細なバランス感で成り立っている。甘鯛の鱗を立てて焼き上げることによる食感のアクセントと香ばしさ、甘鯛の身の柔らかさと甘み、削った柚子の皮の清涼感、玉ねぎの甘みと旨味、そして100年枯木柚子の香り高く、キレの良い酸味、百合根のホクホクの食感…、全てのパーツが完璧に調和した味わいに、そのバランスを崩すことなく、百光が寄り添う。

ナベノ‐イズムの神田岳志支配人‐ソムリエは「水彩絵具を水面に落とし、それが波紋のように広がり美しい模様のように変わっていくように、百光を媒介にしてこの一皿の持つフレーバーがより美しく広がり調和していきます」とその様子を描く。オリーブオイルではなく太白胡麻油、フグのひれ酒をイメージさせる、甘鯛の中骨を焼き上げる和のエッセンスある調理工程など、シェフの「日本人としての自然体」もまた惹かれあう。

神田ソムリエの提案は「ブルゴーニュ型のワイングラス」。「8℃〜10℃ぐらいの温度帯から始めて温度を少し上げていくとより甘みをしっかりと感じると共に、温度上昇にあわせ、より料理との一体感も生まれてくるのではないかと思います」。

「百光は球体。なんにでもあってしまう。最初はそう感じました。口にした時にあまりにも透明で清んだ味わいに、料理の具体的なイメージが湧いてこなかった。一方でその中にしっかりとした旨味と甘み、また華やかさを感じさせる。この唯一無二キャラクターは料理とのペアリングを広げてくれる、そんな可能性を感じました」

温度、テクスチャー。野趣と艶のペアリング

SAKE HUNDRED百光 別誂×龍吟
「ふぐの白子焼き」

百光 別誂は重心がしっかりとして腰の座った味わい。百光が上に縦に伸びるような味わいに対して別誂は横にじんわりと甘味と旨味が広がるような味わいで、その余韻は長く、甘味をしっかりと感じられる。そこにあわせたのは「今が一番いい時期」という山口・南風泊、7㎏~8㎏級のふぐの白子。迫力満点のその白子を「素材のまんまボンと置いて、焼いただけ(笑)」と山本氏は冗談のように言うが、対談でもあった「もともとの表情が磨かれたものを壊してはいけない。魚であれば変わろうとする瞬間に、自分たちの技術で手伝う」という思いをさりげなく高度な技で忍ばせる。

270℃に熱した南部鉄の器に乗せられた炭火で丁寧に焼かれた白子が、ソースを注ぐと弾けるように音を上げ、その刹那から甘く、どこか懐かしい香りが広がる。そのソースの決め手は煎り米を砕いて醤油で焚いて濾したもの。「醤油せんべいの表面を液体化しているようなイメージ。コメのうまみとコメの旨味をあわせた。日本人が好きなテイスト」(山本氏)。

白子は大きければ大きいほど中身を守る表面の膜が厚くなる。「これが肥えているものがうまい。スパッと切って食べるとつまらないんです。角がない状態で食べるのが好き。切れそうで切れない。もどかしさが旨さになります」(山本氏)。白子を一瞬躊躇しながらも贅沢にスプーンでぐちゃぐちゃにして食べる。ねっとり感もまた絶妙に酒にからんでいく。風味だけではなくテクスチャーのペアリングが見事だ。

「百光 別誂はふくよかで奥行きがある。ボリュームもしっかりした感じで、包み込んでくれるお酒。キンキンに冷やした状態だけでなく、常温でも美味しいと思う。このお料理は、最後まで熱々で食べていただきたいのですが、それとあわせて、江戸切子のような小さめのグラスでちびちび楽しんでいただきたい」

「百光」の詳細はこちら https://sake100.com/item/byakko/latest


取材・文=岩瀬大二  写真=よねくらりょう


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