今でもまたフランスに戻りさらに腕を磨きたいという吉野さん。時代とともに忘れられつつあるフランスの伝統料理を今回改めて紹介することで、伝統を重んじることの大切さ、謙虚な姿勢で学び技術を磨くことの大切さを伝える。
「技術の伝承」をテーマに吉野建さんが作るのは、キジを使った伝統的なフランス料理二品。「私はもともとクラシックなスタイルのフランス料理を作ってきました。ですから今改めて、伝統を重んじる姿勢の大切さを皆さんに伝えたいのです」。45年目を迎えるという料理人人生のなかでも、特に吉野さんにとって思い出深いという今回の料理は、いずれもキジと相性の良い食材を合わせ、繊細に仕上げてキジそのものの香りや味わいを存分に引き立てたもの。パリ「ステラ・マリス」でフランス人をも魅了し、そののちに日本では「レストランタテルヨシノ」などを展開しながら多くのスターシェフも育ててきた吉野さんの、丁寧かつ的確な技術が光る。
「タテル ヨシノ」でも人気のパイ包み焼き。フランス中世期からルセットがあるという伝統的な料理。今回はキジとフォワグラ、キャベツを使い、味わい豊かな一品に仕上げた。
一品目はキジのあらゆる部位を使ったパイ包み焼き「トゥルトドゥフザン」。キジのもも肉を鶏レバーや豚の喉肉とともに1日マリネしてからミンチに。そしてブリゼ生地の土台にミンチを塗り、キジの胸肉でフォワグラをサンドしキャベツで包んだ芯を乗せ、さらにミンチで覆ってフィユタージュ生地で包み、焼き色をつけるために溶き卵を塗ってからオーブンで焼く。
サクサクとした生地の中にキジとそれを引き立てる食材がふんだんに詰め込まれ、ひと口食べればそのおいしさが豊かに広がるパイ包み焼きだ。合わせるのはキジのガラを鶏のブイヨンや野菜などとともに丁寧に煮詰めたソース。さらにセロリラブのピュレが爽やかな風味を添える。