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トップシェフから受け継がれるDNA「ルモマン」浅岡達矢さん


クラシックをベースに
手間を惜しまず正統派の料理を

本場パリで、フランス人の舌をうならせる。ジビエ料理では、フランス人シェフを差し置いて最優秀賞に輝いてしまう。押しも押されぬガストロノミー。もちろん、料理は旨くて美しい。
「𠮷野シェフは、僕のなかではシェフとして飛び抜けた存在でした」

だからこそ、日本でレストランを開くと知って、迷わず「レストランタテル ヨシノ 芝」に入社した。2003年のことだ。以来12年間、浅岡達矢さんは、ずっと𠮷野建シェフの背中を見てきた。

𠮷野シェフが入って来ると、いつも厨房に緊張が走った。
「オーラがすごいんです。恐いというよりも、空気がピーンと張り詰める感じでした」

スタッフには厳しい。気の抜けた料理を作ろうものなら、「今すぐ俺の前から消えろ」と怒鳴られた。「そう言われたら、帰るしかありま
せん。でも、次の日にはいつも通り厨房に行きます。シェフも、何ごともなかったように『おはよう』と挨拶してくれるんです」

しかし、気に入らないことがあれば、また雷が落ちる。何度も浴びせられた「消えろ」という言葉。でも、浅岡さんは逃げなかった。
「ここでダメなら次はないと思っていましたから……。そんなある日、その日も何食わぬ顔で僕が厨房で仕事をしていたら、とうとうシェフが僕を見て笑い出して『お前、まだいたのか』と」
「レストラン タテル ヨシノ 芝」のシェフになってからは、とくに厳しく指導された、と浅岡さんは当時を振り返る。

フランス料理の基本を忠実に守りつつ自分らしさを

そんな浅岡さんが作ってくれたのは、サワラを使った料理。師匠譲りの手間暇掛けた丁寧な料理は、クラシックをベースにした見目麗しいひと皿だ。
「派手さは求めていませんが、おいしいこと、美しいことは大事にしていきたいと思っています」

自分なりの料理は追求していきたい。でも、「フランス料理の伝統はきちんと残す。食材の組み合わせも、フランス料理としての決まり事から逸脱しない」と心に決めている。

古典を基本に据えつつも、独自の感性でオリジナリティあふれるひと皿に仕上げてしまう𠮷野シェフに、少しでも近づきたいと思う。

開店から約10カ月。昨年、ミシュラン一ツ星も獲得した。そんな中で、「ベースに古典がないと薄っぺらいフランス料理になってしまう」という師の言葉は、今も座右の銘だ。

どんなに流行っていようと、自分の琴線に触れなければ、𠮷野シェフは「ウチには関係ない」と、取り合おうともしない。人に何と言われようと、自分の信念は曲げない。それでいて、いいと思えば変わることに躊躇しない。
「自分の店を持ってみて、改めて𠮷野シェフが言っていた言葉の意味を強く感じるようになりました」

師の教えを胸に、「ル モマン」という新たなステージで、浅岡さんは日々、「フランス料理」と向き合っている。

【レシピ】軽く燻製をしたサワラのミ・キュイエストラゴンの香るブロッコリーのクーリレモンコンフィのエミュリュションを添えて


𠮷野シェフのスペシャリテの「軽くスモークしたサーモンミ・キュイ ステラマリス風」のサーモンをサワラに変えて、浅岡さんのひと皿に。焦がした皮の香ばしさも回りをカリッとさせた火加減も絶妙。野菜も美味。トマトの酸味も効いている。

材料(4人分)

◦サワラのミ・キュイサワラ(90ℊ)…4切れ/岩塩、グラニュー糖、コリアンダー、白コショウ…各適量

◦エストラゴン風味のブロッコリーソースブロッコリー…1/5個/エストラゴン…1本/ブリッコリーのゆで汁…適量

◦温野菜
ブロッコリーニ…4本/紫カリフラワー…1/5個/ミニトマト…2個(半割りにする)/カブ…1/4個/カリフラワー(白)… 1/5個/芽キャベツ…2個/黄色ニンジン、 赤ニンジン、緑ダイコン、紅芯ダイコン、ブイヨン、バター、塩…各適量

◦レモンコンフィのソース
レモン…1/8個/ブイヨン、生クリーム、牛乳、塩、コショウ…各適量

作り方

  1. サワラのミ・キュイを作る。サワラを三枚におろす。皮目と身の両方を、岩塩、グラニュー糖、コリアンダー、白コショウを合わせたもので2時間くらいマリネして、余分な水分を出し、塩味をつける。その後、桜のチップで10 ~ 15 分間、燻製をかける。1人分を90ℊくらいにカットし、120℃くらいのオーブンで10分間火を入れる。少し休ませてから皮目をバーナーで炙り、サラマンダーで最後にもう一度温める。
  2. エストラゴン風味のブロッコリーソースを作る。ブロッコリーを小さくカットして、塩を入れたお湯でしっかりゆでて、そのまま冷ます。ブロッコリーが入ったままのゆで汁をエストラゴン1~2本と一緒にミキサーで回して、裏漉しする。
  3. レモンコンフィのソースを作る。レモンの皮を3度ゆでこぼして苦味を抜き、塩を入れた水で数時間ゆでる。それをブイヨンに入れて、香りを十分に移す。牛乳、生クリーム、塩、コショウで味をととのえる。
  4. 温野菜を作る。下ゆでしたブロッコリーニ、紫カリフラワー、カブ、カリフラワー(白)、芽キャベツ、黄色ニンジン、 赤ニンジン、緑ダイコン、紅芯ダイコンに軽く火を入れ、ブイヨン、バター、塩で絡める。仕上げにミニトマトを入れる。
  5. 4の温野菜を皿に盛り付け、ハーブやスプラウト(分量外)を飾りつける。2のブロッコリーソースを敷き、サワラをソースの上にのせる。3のレモンソースをバーミックスで泡を立て、サワラの手前に盛り付けると同時に野菜にも少しかける。


クラシックの基本に忠実に、美しいひと皿を完成させる
最近は、ソースを使わないフランス料理も多いが、浅岡さんは、師の教え通り、ソースは欠かさない。鮮やかなグリーンが、まるで皿に春を運んでくるかのようだ。


低温調理したサワラは、皮だけバーナーで焦げ目を付けて香ばしさを出し、さらにサラマンダーで温めて、しっかりと温まった状態でゲストに提供。火入れひとつにも手をかける。
Tatsuya Asaoka

1975年、神奈川県生まれ。専門学校卒業後、2003年、28歳で「レストランタテルヨシノ芝」に入社。2010年、シェフ在任中にミシュラン二ツ星を獲得。
2015年4月、「ル・モマン」をオープン。同年、ミシュラン一ツ星を獲得。

ルモマン
Le Moment
東京都目黒区柿の木坂1-34-14 1F
☎03-6421-3839
● 11:30~13:30LO 18:00~21:00LO
●月休(祝日の場合は翌日)
●コース 昼2800円~ 夜6500円~
●18席
www.le-moment.jp

山内章子=取材、文 中西一朗=撮影

本記事は雑誌料理王国259号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は259号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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