【ラ・ブランシュ】日本人として愛すべき食材をよりおいしく


日本人として悩んだのち 日本人として見つけたスタイルと技術 ラ・ブランシュ 田代和久さん

自分が素直においしいと思った食材をよりおいしくするために、料理をするという田代さん。理想の「おいしい」に近づくために従来の調理法にとらわれず工夫を重ねることで、新たな技術、新たなおいしさを生み出している。

日本人としての自分を見直し見出した道


「最初にフランスでの修業を終えて日本に帰国した時、すごく戸惑ったんですよ。自分って何なんだろう、このままフランス料理を続けていいんだろうか、って。私は日本人で、味噌汁とお新香で育ってきた。この道に入った時にそれを捨てたつもりだったのに、やっぱり私の体には味噌汁とお新香が染み付いている。これではもうフランス料理はできないんじゃないかというくらいに悩みましたね。しかし、改めてもう一度フランスに行き料理を食べてみて、ただ『おいしい!』と思ったんです。国が変わっても『おいしい』という感覚は変わらないんだと実感した。だったら自分のおいしいと思うものを素直に作ればいいんじゃないかと気づいたんです。それが私の転機でしたね」

そう語ってくれたのは、1986年の開店から32年、多くの人に愛され続けているフランス料理の名店「ラ・ブランシュ」のオーナーシェフ田代和久さん。日本人として自身が素直においしいと思う食材を使い、それをさらにおいしく食べてもらいたいという自然体のスタイルで料理を発想し、食べる者を虜にする味わいを生み出している。そんな田代さんが今回「技術の伝承」をテーマに作ってくれたのも、日本の食材を使った料理。一見シンプルながら細やかな技術が随所に散りばめられた二皿だ。

次ページ:田代さんが、試行錯誤を重ねた「平目のポワレキャベツソース」


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