コロナはわたしたち人間にたくさんのきっかけを作ったような気がします。
これまでの「ルーティン」、自分の思う「当たり前」が破綻し、自分の意思としてないことも加速していく状況。これまで以上に「考える」力、「柔軟」、「対応力」がわたしたち一人一人に課題のように求められているようで、著者も含めて、食べ物に関わる人たちはどのような新しい動きを起こし始めたのでしょうか。
いつもそこに行けば、ある。
が、考えようとも思いつかなかった、レストランに行けないこと。行きつけのレストランの味を惜しむ人々、お家で過ごす時間を豊かにと、レストランが提案をはじめたデリバリーとテイクアウト。それにどれだけ助けられた人がいるのでしょう。わたしもその一人。
例えば、普段テイクアウトをしていないお店のちらし寿司や太巻きをお家で贅沢に味わえることができたこと。それはとても幸せな気持ちになったのです。そして、人との接触が限りなく無い中だからでしょうか、有難みが普段以上にしみる。だれもが大変な状況の中で、食材を提供してくれる方、それを作ってくれる方がいることを。
でも、リアルに言うと今「レストランは存在していない」現実。
レストランに行き、その内装、音、香り、サービス、空間で、美味しい料理を人と一緒に味わうこと。これぞ贅の極だ・・。なんて究極の至福の時間なんだろうと、今、よりそう思うのです。ある種、「エンターテインメント」という表現が適切かはわかりませんが、みんなそれぞれ、映画鑑賞、フェス、テーマパークに行く、という趣味があるように、私の趣味は「好きなレストランに行く」なのです。
「危機のとき、人は天才になり、重大な発明をしている。問題はそれを認識していないことなのだ。」という私の大好きなゴールドラット博士の言葉があります。
食に関わる人々が何かできることはないかと、誰もがクリエイティブな思考になり、まさに発明をしているところです。
その中で、直接コロナの感染リスクがありながらも、働き続けなくてはならない人たちに向けて、お弁当を提供したいというアイディアを、前シンシアのシェフパティシエ 大山恵介(5月末日本橋兜町にパティスリー「ease」をopen予定)を中心に、賛同するパティシエ仲間(Sugar)とともに「チョコバー」を製作し、お弁当を届けるボランティアサービス、「Thanks Obento Project」が立ち上げられました。
このプロジェクトに参加されているメンバーは
・大山恵介(日本橋兜町 ease 2020年5月末open予定)
・森枝幹(渋谷パルコchompoo)
・井口和哉(REVIVE KITCHEN AOYAMA)
・薬師神陸(2020年秋 食のインキュベーション施設開設準備中)
・西恭平(日本橋兜町ビストロ Neki 2020年5月末open予定)
・松岡JACK誠也(イートクリエーター )
・田村勇馬(CHUMS キッチン)
・若手パティシエグループ「Sugar」より眞砂翔平・上妻 正治 etc…
皆さんもご存じのシェフがいらっしゃるのではないでしょうか。
ボランティアで提供するというプロジェクトの力。 お弁当を作るための食材は、全てが日本各地の地方から協賛をして頂いた食材、そして行き場がなくなってしまたった余剰食材、都内の企業より寄付をしていただいたものから賄っているとのこと。
メニュー作成は、メンバーシェフが持ち回りで、なんと2種類ものお弁当を作成。そのお弁当の梱包材及び運搬費は、「Thanks Obento Project」が負担。
プロジェクトに参加しているメンバーシェフ一人一人実業もある中で、最大限の注意で、無理ない量、無理のないオペレーションで行うようにしているとのこと。
それを聞き、真のプロフェッショナル集団が集まった素晴らしいチームワークだと感じました。
届け先は、1日あたり最大で100個を配達。「Thanks Obento Project」の公式SNSからのエントリーも募集しているとのこと。また、「直接コロナの感染リスクがありながらも、働き続けなくてはならない人たち」に限らず、これまでにシングルマザーシェアハウスや、こども食堂など、集うことができないために配給に切り替えた団体へも届けていらっしゃいます。
料理人の仕事は、作ることが楽しい、そして食べてもらえることが嬉しい。
以前より問題とされているフードロス事態も回避し、ボランティアのメンバーシェフが歯車となり、関わるみんなが笑顔になるプロジェクト「Thanks Obento Project」。仮に、もしわたしが働き続けなくてはならない現場にいたとして「Thanks Obento Project」のお弁当を受け取ったら、一生心に残ると思う。
幼いころから作る事、食べることが大好きな私が感じていることは、どんな嫌なことがあった時でも「美味しい」はどんな状況の時でも、その一瞬、わずかな瞬間でも「幸せ」をもってきてくれる魔法のような力があると。出来上がった料理には、たくさんの人、人の想いがたくさん詰まっていることを、直接感じられることできる。それがなんともいえない幸せな気持ちにさせてくれる。「食」は、人を良くすると書き、そのエネルギーは想像よりもはるかに上回る気がしています。
「Thanks Obento Project」 https://www.facebook.com/thanksobentoproject/
文・=中村まりこ
SHOKUart代表 料理家
東京出身。
ELLE grumet 公認料理家、企業、レストラン向けコンサル・企業様向けレシピ提供、ケイタリングプロデュース、講習会講師、料理教室運営、
料理王国WEBライター、ラジオパーソナリティー、枠にとらわれない食のフィールドで活動中。
食に造詣の深い祖父父とウクライナ人の母から2つの食文化の環境で育ち、高校3年間、テニスの世界大会に出場する中、世界各地で生活したことを原点に、料理の道へ。
「現地の食べ物や土地、そして「人」と文化に関わり、本物を見て体験してから自分なりに理解して伝える」を軸にし、独創的な組み合わせで「empirical&unleash」を表現する「SHOKUart」設立。
和食材も自由に取り入れた料理ジャンルからでなく、環境と自然界に寄り添ったサスティナブルな食材を使い、素材からボーダレスな料理を確立。
外国の方にむけて「私達の日常、本当の和食を伝えたい。」という思いから、日本家庭料理の料理教室 ”Authentic Japanese Cooking Class” も主宰。
外国人向けのWedマガジンサイトへのレシピ提供も手掛ける。