【受け継ぐということfile4】茶人 松村宗亮


千利休の精神性を自分なりに解釈し、 価値を見出している


茶人は世襲制と思っている方もいらっしゃいますが、私は初代です。もともとお茶がどのように受け継がれてきたか遡ると、武家の時代に利休さんの弟子たちがいたわけですね。当時は現在のように教室でお点前を教えるようなやり方はなく、弟子を連れてお茶会へ行き、道具の見方や道具の取り合わせ、お茶に対する心構えを教えていたようです。結果的に、利休さんそっくりのお茶をした細川三斎たちは世襲ではなく、型を受け継ぎました。利休さんの血を受け継ぐ千家は、型だけでなく利休さんが使っていたお道具も受け継ぎます。一方で、利休さんの「人と違うことをせよ」という教えや精神性に気付きを得た古田織部のような人もいました。つまりお茶は多様性を受け入れながら、現在まで受け継がれてきました。

ヒューマンビー トポクサ ーとコラポしたときの1枚。他にも、画家や舞踏家など異ジャンルのアー ティスト、 さらにはピーチ野点など「人と違う」画期的な茶会に参加している。

私のような新参者は、御宗匠の皆様たちのような道具組みをすることはできませんし、道具によって核心を垣間見せるという手法もできません。だから、違う手法や解釈を考えました。もちろん裏千家の茶人として裏千家の型は守っています。加えて、私が共鳴したのは利休さんが示した精神性。それこそ織部が受け継いだ「人と違うことをせよ」という教えであり、利休さんの精神性を自分なりに解釈することに価値を見出しました。武家の時代に、それぞれの茶人がそれぞれの茶の在り方を模索していたという創造性を、自分も受け継いでいきたいと思っています。

型を守り、使うお道具も基本的には同じ、 それでもにじみ出てしまうものが個性ではないでしょうか。現代作家が造る茶道具を使えば、こんなことができるかもしれない。 様々なアーティストとコラボすることで、こんな演出ができるかもしれない。そんなことを常々考え、茶の世界の過剰な左翼でありたいと思っています。 

松村宗亮
SHUHALLY庵主。 裏千家の茶室をモチーフに現代的な素材で再構成したご自身の茶室I文彩庵」(2010年度グッドデザイン賞受賞)を横浜・関内に構える。
https://shuhally.jp/

text 馬渕信彦 photo SHUHALLY

本記事は雑誌料理王国2019年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする