【新型コロナウイルス特別企画】新型コロナウイルス感染症。その時、日本の飲食店はどう動いた? 「Umebachee」梅澤豪さんの場合


本記事は、5月7日(木)発売の料理王国6・7月合併号緊急特集「コロナ時代の食の世界で新しい「ものさし」を探しに。」に掲載中の記事から、現在の状況を鑑みて特別に公開するものです。

□マーケットをつくる

人と人の心をつなぐ新たな飲食店のカタチを模索

「飲食店の源泉を辿っていくと、酒販店などの仲卸、そして生産者の存在がある」と言う梅澤豪さん。素材を提供する側と朗らかに信頼関係を結び、自然な作りを大切にした日本のお酒や食材を渋谷「Umebachee」で提供している。連日満席の店にもコロナの大波が押し寄せ、それまでの日常は非日常になった。運営の危機を感じ、対策を模索していくなかで、反射的に動いたのが酒蔵との連携だった。「酒蔵も支払いがありますし、売上が立たないのは死活問題という蔵も少なくないはず。そこで4月から姉妹店の「旬蕾」でスタートさせたのが、Zoomによるオンライン酒の会です。蔵元も参加し、みんなで同じ蔵の酒を飲みながら語り合い、その蔵のファンになってもらいたいと考え企画しました」。少しでもお金がまわればと、購入できる酒販店の案内や、「旬蕾」と「Umebachee」でのテイクアウトも呼び掛けている。

 次に立ち上げたのが、オンライン蔵見学サービス「KURAKEN」だ。酒造りを終え、例年なら消費者とのコミュニケーションを図る酒蔵だが、コロナ禍で外出できなくなった。その解決策として、週末や祝日に「KURAKEN」を開催していく。「ひと蔵1回ではなく、田植え、稲刈り、造りといった季節ごとに出演してもらいます。僕が取り引きしている酒蔵は米作りから酒造りをしているところが多いので、そのプロセスと思いをオンラインで見て感じてもらいたくて。お酒への愛情がさらに深くなると思います」。

三重「酒屋八兵衛」の元坂酒造を迎えたオンライン酒の会の様子。情報は日本橋「旬蕾」のnote( https://note.com/syunraisyunrai )で更新。

 梅澤さんの指針は、飲食店に関わる人の動きや生産を止めないこと。「今後、飲食店はなくなるかもしれない」と語る一方で、未来の飲食店の在り方も具体的に想像し始めている。

「もしコロナが終息しなければ、ひとつの店舗を改装して工場化することも視野に入れています。例えば石川県のあんがとう農園の野菜をはじめ、お世話になってきた生産者の食材や調味用をパッケージして、レシピ動画とセットで販売できるシステムを構築する。そんなことをイメージしてみると、リアル店舗じゃなくてもオンラインで今までと同じことができるんじゃないかと思うんです」

 現在は2店舗ともに営業時間を変更し、テイクアウトと客席の間引き営業を行っている。「新しいチャレンジが出来ているので楽しいですよ。料理長とは今まで出来なかったことをやろうと話しています。これまで僕は、1%でも2%でも進化していくことを常に考えてきました。だから今もその延長線上にいる。ここで進化しないと、楽しくないですから」。

 苦しい今だからこそ、手を取り合って朗らかに楽しく前に進む。「Cause every little thing gonna be all right!」。梅澤さんが着ているシャツにプリントされたドレッドロックスのレジェンドも、そう歌っているに違いない。

テイクアウトメニューは「ふき味噌(500円)」や「原木椎茸味噌(500円)」といった瓶詰のほか、Umebacheeの人気メニューが多数。営業時間を12時~20時に変更したタイミングで「唐揚げ弁当(800円)」もメニューインし、好評だ。

うめざわ・ごう
Umebachee代表。1975年生まれ。渋谷「Umebachee」、日本橋「旬蕾」、三軒茶屋「32016」のオーナー。立ち上げたオンライン蔵見学サービス「KURAKEN」は、オンラインチケットサービス「peatix」で入場料1000円を支払えば誰でも参加可能。情報はFacebook(https://www.facebook.com/Kuraken-106794634327393/)にて更新。

Umebachee
東京都渋谷区渋谷3-22-11サンクスプライムビル3A
umebachee@gmail.com
12:00 ~20:00
土日休


text 馬渕信彦

本記事は料理王国2020年6・7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年6・7月号当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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