Vena(ヴェーナ)/ 早川大樹
師匠「イル ギオットーネ」 笹島保弘
なんとも芳しい。
炭火で焼き上げた鮎の香りに圧倒される「天然鮎と朝風きゅうりのスパゲッティ 花穂紫蘇風味」。「イル ギオットーネ」の笹島保弘シェフが2002年の独立以前、既にレシピを完成させていたという夏の逸品である。
麺の一本一本にしっとり絡むソースには鮎の骨から引いたうま味たっぷりのだしが使われ、京の夏を代表する香魚を丸ごと味わい尽くすという贅沢な試み。みずみずしいきゅうりと食べ進むほど口の中に弾ける花穂紫蘇の清涼感も良きアクセント。スッと爽やかな風が吹き抜けるようだ。
地中海料理のレストランで働きながら開業を目指していた早川大樹シェフがイタリア料理に興味を持ったきっかけは「ラ・ベットラ」の落合務シェフとそのレシピ本。現地で作られている古典的なイタリア料理に憧れを抱いた。後に縁あってオープンしたばかりの「イルギオットーネ」に入社したが、「イタリアにもし京都があったなら…」と京野菜や鱧、松茸など和の素材を取り入れ、独自の世界を紡ぐ笹島シェフの考えになじめず、「これがイタリア料理といえるのか?」と違和感を覚えていたという。
「ある日、常連客のリクエストで笹島シェフがアマトリチャーナやイカスミのスパゲッティ、鰯のパスタなどを作り、僕たちも食べさせてもらいました。そのパスタが今まで食べ歩いてきたどの店のものより旨くて衝撃的でした。しっかりとしたイタリア料理の礎があってこそ、今の笹島シェフの自由な料理があるのだと目からウロコが落ちたのです」
材料(2人前)
スパゲッティ70g
天然鮎2尾
塩適量
ニンニクオイル25ml
あさりだし(あさり、日本酒、昆布)60ml
鶏のブロード(鶏もも肉、昆布、干し椎茸、日本酒)60ml
きゅうり1/2本
E.V.オリーブ油10ml
花穂紫蘇2本
作り方
1.塩をした鮎は180℃のオーブンで表を5分、裏を8分焼き、熱いうちに捌いて骨を外す。骨をひたひたの水に入れて10~15分煮てだしを引く。鮎のだし、あさりのだし、鶏のブロード、ニンニクオイルを合わせて煮詰める。
2.きゅうりはおろし金ですり下ろす。
3.鮎の身の表面を香ばしく炭火で炙り、ほどよい大きさに切る。
4.茹で上がったスパゲッティに 1のソースを絡め、仕上げる寸前にきゅうりを入れて煮詰める。火を止めて鮎を加え、E.V.オリーブ油を絡める。皿に盛りつけて花穂紫蘇をあしらう。
text 山田佐和子 photo 東谷幸一
本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。