食の未来が見えるウェブマガジン

食の可能性を広げる。「青山ファーマーズマーケット」企画・運営担当 田中佑資さん


ガストロノミーのおいしさをカジュアルにさり気なく伝える
西 恭平さん
ビストロ ロジウラ

「西シェフのていねいな仕事ぶりを見ていると勉強になります」とスタッフは口を揃える。右から、川島 真さん、西シェフ、諸藤悠里さん、野田雅子さん。

西シェフが注目している生産者のひとりに、埼玉で農園を営むフランス人男性がいる。彼の作る野菜の力強さが気に入っている。トマトの酸味にはパンチとコクがあり、ハーブの香りもフレッシュ。ズッキーニやカボチャの花はフライすると美味。

面白いと思った食材にはまずチャレンジ

料理の可能性が広がるから食材との出会いは大切にしたい

フランスから帰国後、東京・新宿にある名店「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」で腕を磨いた実力派の西恭平シェフのもとには、食材の売り込みや生産者からの持ち込みも多い。これらを五感で確かめ、興味のあるものは躊躇なく使ってみる。「◯◯産のものしか使わない」というこだわりを持たないのが、むしろこだわり。食材との出会いが、新しいおいしさを生む可能性は高く、それができるのも一流店で培った技術、ホテルの総料理長だった父親の指導の賜物といえる。
「父は、僕にまずお菓子を学ばせた。パティシエがホテルの調理場で働くのは大変だったが、おかげで料理からデザートまでできるようになりました」

そんな西さんが、今、関心を持っているのは、京都亀岡の七谷鴨と信州サーモン。ゲストの喜ぶ顔を想像しながら、調理法に迷うのも楽しい。

ビストロの気軽さで一流仕込みの味を提供する

5300円のコースに込められた高度な技術とフランス料理への想い

技術を高めるためにガストロノミーでも経験を積んだが、昔から西さんがやりたいと思っていたのは、カジュアルな雰囲気のビストロだったという。「人々が通いやすい価格帯のビストロのメニューに、本格的なフランス料理も並べたい」。そうした思いを5300円のコースに反映。ひとりでも多くの人にフランス料理のよさを知ってもらうのが西さんの狙いだ。

だからソースはすべて手作り。今回の料理に添えたインゲンとミントのソースも、甘エビのアメリケーヌソースも自家製だ。また、じっくりと時間をかけて出汁も取るから、仕込みには時間がかかる。

そんなシェフの姿にスタッフは、
「ビストロだから当然、業務用のソースを使うと思っていました」と驚きつつ、「でも、いろいろな技術を間近で見ることができて、とても勉強になります」と感謝している。

ただ「本格的なフランス料理」といっても、重くクラシカルな料理ではなく、「軽さ」と「繊細さ」で自分らしさを表現している。

イサキのポワレ、インゲンとミント、甘エビのアメリケーヌソース
甘エビのアメリケーヌソースが、香ばしく焼き上げたイサキにコクと深みを与える。ミントで香りづけしたモロッコインゲンのソースのさわやかさ、焦がした万願寺トウガラシの苦みがほどよいアクセントに。

ゲストの邪魔をしない雰囲気づくり

「ロジウラ」のサービスは、ほどよく、さり気なくがモットー

「積極的に仕掛けてゲストを楽しませるエンターテイメント系の店も楽しいのですが、うちの店はそれとは真逆。ゲストの邪魔をしないような雰囲気作りを心掛けています」。どんな人にも気軽に料理や飲み物を楽しんでほしいという配慮からだ。

西さんが「トロワグロ」で働いていた時のシェフが、現在、「エスキス」でシェフを務めるリオネル・ベカさんだった。「リオネルシェフは憧れの人。だから『料理に一番大切なのは情熱』という言葉を今も大切にしています」と言う西さん。しかし、カジュアルな雰囲気を壊さないように、そのパッションは秘めたまま、ガストロノミー級の料理をさらりと出す。過剰な説明はしない。「お客さまからの質問があれば、もちろんお答えしますが、お客さまの望まない説明は、押しつけになりますから」。西シェフのこうした奥ゆかしさは、渋谷とはいえ喧騒から離れた場所にある「ロジウラ」という店名にもふさわしい。

ただし、多くのゲストが頼もしく感じているチャレンジ精神はそのままに、これからも「新しい食材に挑戦し、ビストロという形式にこだわらない提案をしていきたい」と語る。旺盛な好奇心は、ビストロのイメージを大きく変えていくことだろう。

Kyohei Nishi

1983年、京都生まれ。京都のホテル、レストラン、ビストロで約6年間修業後に渡仏。アルザス地方のオーベルジュで研修をする。帰国後、「キュイジーヌ[s]ミッシェル・トロワグロ」を経て、2014年、「ビストロロジウラ」へ。16年、シェフに就任。

Bistro Rojiura
ビストロ ロジウラ

東京都渋谷区宇田川町11-2
宇田川柳光ビル1F
1F, 11-2, Udagawacho, Shibuya-ku, Tokyo
03-6416-3083
●8:00~14:00(13:00LO)
18:00~24:00(23:00LO)
●月休、月1回日休
●コース 5300円~
●18席
https://bistrorojiura.jimdo.com/

上村久留美=取材、文 星野泰孝=撮影
text by Kurumi Kamimura photos by Yasutaka Hoshin

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