シャンカール式スパイスブレンドに登場したスパイスをはじめ、インド料理によく使われる21のスパイスを解説。科目や原産国を知ることで、スパイスをさらに深く理解できるはずだ。特性や香りに加え、アーユルヴェーダの考え方を参考にスパイスが持つ効能にも言及する。
(パウダー/ホール)
〈科目〉フトモモ科
〈部位〉蕾
〈原産地〉モルッカ諸島(インドネシア)、フィリピン南部
ガラムマサラの原料のひとつ
肉の臭みを消す
開花前の青い蕾を、がくといっしょに摘み取って乾燥させたスパイス。バニラに似た甘い香りを放ち、肉の臭みを消す。入れ過ぎると薬のような強い香りが出てしまうので注意。胃腸系や泌尿器系を温める生薬として、しゃっくりや嘔吐、下痢や腹部の冷え、疝痛に処方されることも。インドでは歯が痛いときに口に含み、鎮痛に用いられる。
(パウダー/ホール)
〈科目〉ショウガ科
〈部位〉種
〈原産地〉インド
スパイスの女王と呼ばれる
爽やかな柑橘系の芳香
完熟前の実をさやごと摘んで乾燥させたスパイス。さやの中には黒褐色の種子が入っている。ほんのり甘く、鼻を衝く爽やかな柑橘系の香り。緑のふさにも精油が多く含まれ、ユーカリに似た味がする。アーユルヴェーダでは、安全な消化促進剤として何世紀も前から治療に使われてきた。脾臓の働きを活性化する作用も期待できる。
(パウダー/ホール)
〈科目〉コショウ科
〈部位〉果実
〈原産地〉インド南部
インドでは風邪予防に使用
調理直前にミルで挽くのがベスト
完熟前の実を乾燥させて外皮ごと使うブラックペッパーは、ホワイトペッパーよりも風味と辛味が強い。香りと風味は揮発しやすく、調理の直前にミルで挽くか、砕いて使うのがベスト。辛味成分のピペリンは抗菌や防腐作用があり、インドでは消化不良、腹痛、下痢などの症状の改善に用いられてきた。抗酸化作用も期待できる。
〈科目〉ナス科
〈部位〉果実
〈原産地〉南米
辛さはなく、独特の甘みとピーマン香
レッドチリパウダーと相性よし
インド料理では、パプリカパウダーの赤色は食欲をそそる色として認識される。辛さはなく、独特の甘みとピーマン香が特徴。入れ過ぎるとピーマン香が苦みに変わってしまうので注意したい。レッドチリパウダーといっしょに調合すると、相互作用によって華やかな香りに。ビタミンB群とカリウムを多く含み、血行不良改善が期待できる。
〈科目〉アブラナ科
〈部位〉種
〈原産地〉インド、南ヨーロッパ
香ばしい風味とナッツ香
料理に辛味を与える
ココナッツオイルとの相性がよく、南・東・西インドの定番スパイス。油で炒めるとナッツ香を放ち、料理に辛味を与える。辛味成分には血液循環を高める作用があり、インドでは粉末状のマスタードシードを湯で練って湿布し、神経痛やリウマチの治療に用いられていた。アーユルヴェーダでは抗菌、興奮刺激、去痰、駆風作用が知られている。
text 馬渕信彦 photo 依田佳子
本記事は雑誌料理王国2020年6月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年6月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。